ダリル「ミーは活字が苦手だな。気持ちを伝えるなら言葉の方がいい」
AXLと言えば、キャラ同士の掛け合いが非常に面白いイメージが私の中で根付いているのだが、本作品はそれが一級品。
その立役者となる人物は、「浦安 六右衛門」と「ダリル・マッケンジー」の両名だ。
最後にプレイしたのが4年前にも関わらず、彼の者たちの名前を忘れていなかったのは、それだけ印象深かったからであろう。
◆共通ルート名場面
☆ダリル&セーラと邂逅。
学園の地下牢にスター・サファイア(馬)と幽閉されていたダリル。
ダリル「ふぅむ、カジキか……グッドネームだ。あたかも巨大な魚のような……これからは、マグロ君と呼んでいいかな?」
セーラ「ああ、そうそうっ、鳴海かじゅき!」
主従揃って主人公の名前を間違えるとは、良い関係をしておられるようで。
ダリルに至っては終始カズキとは呼ばず、「カジキ」or「心の友その1」という呼び名で通すのだから恐ろしい。(褒め言葉)
☆瑞穂と六右衛門のやりとり。
「若、キモイです」
「瑞穂ぉぉぉぉっ!!」
このコンビは、毎度似たような掛け合いを行うわけだが、最後まで飽きが来ないのが凄い。
同じネタでもついつい笑いが込み上げてしまう、そんな中毒性じみたやりとりは、本作品を語る上で外せない一つ。
また、武士とオタクを具現化したような人物である、六右衛門だからこそのネタとでも言うべきか、
瑞穂に死ねと言われて切腹するパターンは名(迷)場面の一つであった。
『我が青春 特典テレカに 捧げたり 浦安六右衛門、辞世の句』
「切腹!」
☆さすらいのチュートリアルメイド長こと笠置霧子のお悩み相談室。
3年M・Aの場合。
「うちの主人が、アニメ好きで困っているんです」
立ち絵(目)にモザイクかけて、変声してあるけれども、会話の内容で誰なのかバレバレなのが笑える。
また、お悩み相談としてはほとんど機能しておらず、霧子先生の情報聴取室へと様変わりしているのはもう…。
☆庶民チームvsセレブチームの戦い。(更紗のパーティーを壊したのが原因)
第一の刺客として登場したセーラ&ダリル。
勝負方法は主人公が提示した、「1週間五千円以下の生活を行い、残金の多かったほうが勝ち」というもの。
セレブにとっては厳しくなるであろう戦いを何故か安請け合いしたセーラ。
「5千円も使えるなら楽勝、楽勝♪」
「本当ですかッ、セーラ様!?」
「ところでさ、五千円ってどのくらい価値があるの?いまだと約50ドルくらいだよね?世間では何が買えちゃうの?」
あっ(察し)
この後の展開は、もはや想像に難くないのだが、それでも予想を超える酷い有様で笑ってしまう。
一週間ではなく僅か一日でミイラのように干からびたセーラとダリル。
主人公の足を肉と勘違いして齧り付くその姿は、さながら人肉を貪るゾンビのようであった。
なお、五千円の使い道が通販で注文した漫画だというのだから、考え無しにもほどがありすぎる。
とまぁ、笑える場面は必ずと言っていいほど、ダリルと六右衛門が絡んでくるのだが、サラサ&由宇コンビが悪いというわけでもない。
双子ならではの入れ替わりは、鉄板ネタであるからこそ外れることもなく。
お嬢様の代表格として、その存在は必要不可欠であった。
主人公と奏は、幼馴染の関係性を活かした阿吽の呼吸が光っていたし、
こちらは庶民代表として、読み手と同じ視点で物事を汲み取ってくれるのだから、作品にすんなりと入り込める。
個別ルートは、それぞれ3つのENDが用意されているのだが、
和気藹々とした楽しい雰囲気をブチ壊す、誰得シリアス展開とBADENDの必要性には疑問を感じた。
またAXLヒロイン’sは、基本的に全員が共通ルートで主人公のことが好きになる。
恋愛要素は薄い為、私としては共通ルートで堪能したキャラ同士の掛け合いとヒロインとの良い結末さえ見れれば満足である。
・弓野 奏√
幼馴染同士にしか通じない暗号。
この学園生活を始めるきっかけにもなる『一生のお願い』。
過程はともかく告白シーンだけをみれば、なかなか好きな場面ではある。
体育祭中に奏が誘拐され、身代金3000万円が要求。
「みんなの力で、カナデさんを助けよう!」
「由宇、いますぐ三千万円持ってきて」
「はい、更紗様」
「瑞穂、拙者たちも後れを取るな!」
「もちろんです」
「ダリル、わかってるよね?」
「モチロン!」
「……ねえ、これって9000万円集まるんじゃない?」
金銭感覚の違いにも笑えるのだが、この一連の流れが好き。
皆の好意に対して選んだ主人公の考え方も、自身の落ち度が招いた結果、貰うのではなく借りるっていう姿勢が良い。
「好きな女を助けるのに背負う借金なら重さなんて感じる暇はない」
なるほど迂闊さが原因とはいえ、カッコイイじゃないか。
誘拐犯が厳重な警備を掻い潜ったり、他のお嬢様の警護人に見つからなかったり、
展開に無理あるだろってツッコミを入れたいのが問題点。
あとは、夏休みの課題で庶民とセレブの溝について再度問題が露見し描かれるのだが、
結局解決の話が書かれていない為、再発させた意図は謎である。
・御星 更紗√
由宇と更紗が何故、執事とお嬢様の関係を築いているかが明かされる。
厳しい女系家族で、双子の片割れである男子は不吉とされ、本来なら養子に出されるのを更紗が執事として傍におくことに。
物語の山場としてはイマイチなのだが、
御星家に主人公と更紗が付き合っているのがバレて、幽閉された彼女を友の力を借りて助け出す展開は好き。
奏に膝枕して貰ってるのが見つかり、嫉妬からの退学ENDは酷い終わり方。
嫉妬するヒロインの姿って、本来は可愛いものなのに憎しみしか込み上げてこなかった。
・セーラ・アップルトン√
魅力溢れる元気巨乳っ娘なのに、本作のBADENDの中で一番酷い。
無人島で夏休みを過ごしていたら、武装集団に攫われ爆死するという凄惨極まりないENDが用意されている。
ダリルの死亡フラグクラッシャーとしての見せ場が、何ともパッとしなかったのが残念である。
・秋津原 瑞穂√
個別√の中では一番良い出来だったように思える。
ぬいぐるみのトト(後のAXL作品にちょいちょい登場する)の冒険が恋愛発展のきっかけ。
主人公は瑞穂と付き合い続けたいが、将来のことについてはまだ決断出来ない。
本当に瑞穂を好きならば、愛する者と共に過ごせる道(執事として仕えるの)に迷いはない。
(若が強引過ぎるきらいはあるが…)それぞれの主張と考えに一理あり、平行線の展開が良い。
また、主人公vs六右衛門という仲の良い二人が争う構図も個別ならではの展開。
主人公が瑞穂への熱い恋心を示せたことで一時解決したかに思われたが、若の卒業後の話になり、今度は奏vs六右衛門の構図となる。
安易に浦安家に仕える未来ではなく、秋津原家の再興へ終着点を持っていった点が良かった。
主人公との決別でトトが焼死するBADは、数あるBADENDの中で一番マシであった。
・笠置 霧子√
門限に間に合わず、主人公の実家で一夜を共に。
結婚してハッピーエンドかと思いきや、霧子が攫われる(夢オチ)展開の必要性は皆無であった。
◆絵・エロ
回想枠13
瀬之本久史さんの絵は、残念なことに全く抜けない為、特に書き記すことは無し。
滅茶苦茶可愛いSD絵を見るのが、AXL作品をやる上で楽しみの一つ。
◆システム
2周目をする際、場面を要約したシーンジャンプ機能が優秀。
回想枠にOPが欲しかった。