終盤で駆け足気味に展開を詰め込んでくるので、その部分を許容できるかどうかが分かれ目。コンパイルハートにしてはそこそこよくできてる部類。
壮大なものを作ろうとしたけど実力全然足りなくてショボい出来になってる感じ。
コンパちゃんはあれもこれもとキャッチーな要素を盛り込んだ挙句にどれも中途半端に終わるという老舗にあるまじきリソース管理の下手さが欠点なのだが、今回は肝であるシナリオ面が割を食っているのが一番の問題だった。シナリオ推しの作品なんだからそこだけは死守しろや!
・システム
テキスト表示速度を最大にしてもクッソ遅い以外は特に問題ない。
ただ、同じような名称のスキルが多すぎて見分けがつかなかった。メティ系とかそんなに要らんやろ。
・戦闘
面白い。レベルでゴリ押しもできるし工夫して低レベルクリアも可能ないい塩梅でした。
戦闘フィールドを走り回ったり敵をピンボールみたいに吹き飛ばしながらバグを潰し、ミニゲーム形式のハッキングスキルで一網打尽にする。この流れが爽快です。
何度も戦闘してるとさすがに飽きるんですが、難易度ノーマルでもレベルがバンバン上がる(雑魚戦1~2回でレベルアップ)ので気になりませんでした。
駄目なところといえばスキルの習得方法ですかね。特定の組み合わせでスキルを使用すると確率で新スキルを習得するんですが、ただただめんどくさいだけで何の面白みもありませんでした。
・シナリオ
ざっくり言うといわくつきのオンラインゲームから脱出するため、ゲーム世界にいるヒロインと現実世界の主人公が協力して事態の解決に奔走する話です。
暗躍する謎の結社や浸食されていく現実といったお約束のピースを散りばめていき、現実とは何かを考えさせた末にメタネタを開帳して悲劇をひっくり返す……とまあ、これだけ書けば「お、これ割といけるんちゃう?」って思いますよね。
俺もそう思いました。実際、名作になれる余地は十分にありました。でもそうはならなかったんだ……
一言の方にも書いた後半の超展開、これに尽きます。
組織の全容が雑に説明されて雑に滅びるのは別にいいんですが、教祖の正体とか目的がファンタジーすぎて面食らいます。大げさな設定があるならもっと初期から出てきてくれないと。
重要キャラであるはずのルーデンス4人組(正確には5人だけど)も掘り下げが薄すぎる。アリス以外いなくても話は回るしリプカとか結局何がしたかったのか分からん。
それでも、この程度なら挽回は可能でした。シナリオの中枢とも言えるメタの部分を成功させれば名作にはなれました。
まあ盛大にこけちゃったんですが……。
ネタバレしてしまうとガンパレ、EVER17、シェルノサージュと同じく、プレイヤー自身が現実からゲーム世界に干渉するというオタクどもが大好きなアレです。俺も大好き。
数々のバッドエンドにもめげずに「何度もやり直してきた」プレイヤーが主人公に協力することで真のエンディングに到達できる。この筋書き自体にケチはつけません。
筋書きがダメなのではなく、描写の仕方が超適当なんです。だってプレイヤー何もしてないもん。
不思議な力でラスボスを倒せて「お前のおかげだ、ありがとう」って言われても俺ボタンすら押してないよ!?
たとえば、プレイヤーでしか知り得ない情報から正しい選択肢を選び続けてデッドエンドを回避するとか、ゲームそのものをハッキングする体で隠しコマンドを入力したりデバッグモードに飛んで登場人物のパラメータを改変するとか、表現方法はいろいろあるじゃないですか。ガンパレのように「プレイすること自体が干渉」って路線もあるじゃないですか。
そういうの一切ない。ラスボスと連戦してたらパァーって画面が光って力があふれる!ってなるだけ。ここでプレイヤーが介入している実感を出せていればなんぼかマシだったんですが。
しかもこのメタ部分も設定に齟齬がありまして、なぜかプレイヤーが「死の王と呼ばれている」とか「グレートオールドワンである」なんていう設定が付与されているんです。
ここらへんマジで意味が分からなかった。EVER17のように上位存在を介してゲームに干渉するなら、その上位存在を実際にゲーム内に登場させないといけないんじゃないですかね? っていうかなぜ唐突にクトゥルフ用語が……?
サブキャラの1人を上位次元の存在にしてしまったのも悪手でしたね。ガンパレの芝村ポジかと思いきや何も知らない無能キャラだったし存在意義が分からない。
ここまで何でもありなら真エンドは問答無用の大団円になるのかなと思いきや主人公だけ過去に戻って悲劇を未然に防ぐために頑張っていこうぜエンドっていうのがなんというかこう……踏み切れてないなと。
とにもかくにも身の丈に合わない大作を狙いすぎましたね。テキスト量は多いんですが出番と描写の配分ができてないというか。
各部分をいくらか手直しすれば良作になれる気配はするので、惜しいなぁ……と。