ErogameScape -エロゲー批評空間-

irtelishさんのClover Pointの長文感想

ユーザー
irtelish
ゲーム
Clover Point
ブランド
Meteor
得点
88
参照数
2373

一言コメント

夜々ルートを楽しめるかどうかで評価が変わってきそう。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

また、ヒロイン中四名に関わってくる「近親」との関係性を受け入れられるかどうかでも各ヒロインに対する印象は様々に変わると思う。

私の攻略順は夜々→美緒里→真星→月音→シロツメ。
シロツメは他四人をクリアしないと攻略できないので注意。
誰を最初にしてもさほど問題はないと思う。
ただ、夜々のインパクトが良くも悪くもあまりに強いので初回夜々だと他キャラが霞んでしまう恐れはあり。
とは言え、どのルートもバカップル振りは徹頭徹尾けしからんのが素晴らしいと思う。
桜井先輩や恋路橋等、サブの男どもも中々良いキャラなのでストレスを感じることはないと思うがこの辺は好みもあるかもしれない。

どのルートでも起承転結でいうと承の部分が極めて長くじっくりと描かれている。
この辺の本番に至るまでのくすぐりの美味さ、盛り上げ方のねちっこさは恐らくJ.さいろー氏の主導によるものと思われる。
あくまでヒロインの仕草とか会話の中での微エロとかに萌えつつ、エロに至る妄想を主人公と一体となってプレイヤーも膨らませていくタイプの作品故、直接的なエロの回数やシチュのみに拘ると過去のブランド作品と比較して物足りないかもしれない。
しかし「承」の部分で主人公とシンクロして悶々とできるなら、その後のバカップル振りで思う存分溜め込んだ思いを解放できることだろう。
一枚絵はアクロバティックな部分は少なめだがどれも妙に生々しくてエロい。
原画であるYuyi氏の力量は一作ごとにどんどん素晴らしくなっていると思うし、テキストとの相乗効果は脳を確実に浸食してくれることだろう。

以下はヒロイン別の感想。

>夜々
主人公を兄と慕う姿は規格外の破壊力を持つ。
おにいチェアの下りと弁当の辺りのバカップル振りはこっ恥ずかしさで悶絶必死。
最初外出しばかりだったのが後半中出しばっかりになるのが背徳感を上手く演出していると思った。
テーマがテーマ故、結末には賛否両論あるだろうが私としてはは納得のいくものだった。最後にもう一回いちゃいちゃが欲しかったのは紛れもない真実だが、これはとりもなおさずよるよるの魅力がそれだけ誘因力を備えていたということなのだろう。

>美緒里
最初とクリア後で大分印象が変わった子。
守銭奴ぶりがどっかの神様以上に嫌われているようだが実の所とってもいじらしい良い後輩だと思う。中盤の主人公との独特の距離を許容出来る人なら楽しめるだろう。
賽銭箱を持たせて巫女服を着せればほら印象が……変わらないね。
えちぃの時、最初強気なのにすぐ折れてしまうあたりが非常に可愛いと思う。

>真星
ドジっ子幼馴染。
本来メインヒロインでもいい設定ながら、この作品については完璧に夜々に食われてしまった印象が否めない。
個別に入ったあとのわたわたした感じが素敵なヒロイン。立ち絵で癒される。
このルートでは主人公が「夏めろ」の徹ちゃん並みの性欲魔人と化しているので、それが駄目な人もいるかもしれない。

>月音
個別に入ってからは完璧な駄目人間。そこが可愛く思えれば勝ち組。
こういうだめあねはさいろー氏の書く小説に付きものなのであまり違和感は無かったが、どうせなら爛れた数日間のえちぃも一枚絵が欲しかったな、とは思った。
桜井先輩の頑張りが一番心に残るルート。

>シロツメ
グランドフィナーレととるかおまけととるか微妙なルート。
とは言えシロツメさんのほんわかさに癒されればそれで良しかなと。
ラストでの夜々が少々反則気味に可愛いので、よるよるスキーはそれだけでもやる価値あり。

>総評
私の評価は点数の通り。
派手さは少ないかもしれないが、絵とテキスト双方でヒットアンドアウェイを繰り返しつつ、加速するロードローラーの如く段々エスカレートしていく萌えとエロスは波長の合う人なら確実に満足できると思う。


以下は蛇足。

>主として夜々ルートに対して。

萌えとエロスが主体と言えるこのゲームでは、あまり深刻に考察する必要はないとも思うのだが全体のテーマについて少々。
敢えて書いてみるとすればそれは「奇跡」に対する個々人の対峙の仕方、距離の取り方と「願い」との関係ではなかったかな、と思う。
奇跡をもたらすクローバーを持つ者は、結局それを自分のためには使わない。
あくまで他者のために願い、それが結果としての幸福へと繋がっていく。
唯一奇跡を必要とするルートでも、それはあくまで以前の奇跡によって生じた結果から相手を救うための願いである――結果、その願いがああいったエンドをもたらした、というのは一見すっきりしないものを後味に残すかもしれない。
しかし、すっきりしないと思った時点で自分たちもまた一般的なモラリティの枠内にいることを知らざるを得ない。
それ故にこそ「そういう選択」の重さが胸に響くのではないだろうか。
それ故にこそ、その状況下でなお「幸せ」と言い切れる二人を祝福したいと思えるのではないだろうか。

――とか、そんな戯言。