「ダメ人間……クスクス……」
明日歩→衣鈴→千波→こもも→こさめ→夢→メア→EH夢→EHメア→EH残りの順でクリア。
以下、ネタバレ込みの感想を少々。
面白かったのだがところどころ引っかかるところもあり、というこの感覚は「俺つば」とかにも似ている。
最も、作品の方向性はだいぶ異なるのだけど。
夢のループはバッドエンドの名残なのかどうかはちょっと気になった。
洋くんのダメなところとか親父のダメ人間なところとかはレンや志穂さんが相対化してくれてはいるのだけど、それにしても幽霊と星神がちと働きすぎじゃねとか過保護じゃねとかそういうところはちらほら。
全体的に、シナリオライターが正しいとか美しいとか思って書いていると思われる話が、こちらにしてみるとそうでもないような気がしてならなかった。
これは単に僕が年をとったせいかもしれないが、それだけでもないような気がしている。インモラルな部分はエロゲーということを考えればまあ仕方ないところはあると思うのだけど、それ以外のところでもギャグに奉仕するためだけに日記帳とかカメラとかをその都度破壊してスルーしてしまえる、というのはなまじ他のところが真面目なお話として書かれているだけに歪に映る。リアリティレベル、というかメタレベルでの破綻をどこまでギャグとして吸収できるか、みたいなお話。
困ったときの星神と妖精さん、みたいなお話の投げ方も含めて、真面目にお話を作れば作るだけゲームであること、繰り返される話であることを前提に各ルートを組み立てているか、省けるところをいかに上手く省いたか、が露わになってしまっている感じがした。省いた上でこのボリュームなのだから、本来文句を言うところではないのだろうが。
端的に言えば、複数ルート前提で全ての話が組み立てられている結果、単体で成り立つルートというのが存在しない――というか弱くなってしまっていると感じられるということ。そしてそれは前座である5人だけの話ではない。
夢ルートが一度バッド(とも言い難い部分はあるけれど)を見たあとループして先に進む、という構造になっていること――これ自体が、単体では夢ルートが成り立たないことを作中で認めてしまっている証であり、裏ルートであるメアルートでの夢の処理も含めて結果として非常に「誠実でありながら不誠実」な印象を与えるものとなっている。
他のルートで見たからそれについては語らなくていいよね、というのは省力化や冗長さの排除という観点からは全くもって正しい。しかし、語らないですませること自体が不誠実に映る、という場合があるのもまた事実。
このコンプリート版全体をひとつの物語として捉えるなら、そして最後に待っている夢との物語を柱としてあくまで尊重できるなら――全くもって不満はない「ノベルゲーム」であるとは言える。
しかし、例えば他5名の誰かを1番とするような――あるいはメアは1番とするような誰かにとっては、果たしてどうだろうか。
結論としては幸せであるはずのメアアフターがどこか空虚に映るのもまた作者の意図だとすれば、なるほどそれはそれで一貫した態度だなあ、とは思うのだけど。
ともあれ、上記のようにあれこれと細かいところが気になるくらい、よく出来たノベルゲームではあったと思い。