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infinite206さんの創作彼女の恋愛公式の長文感想

ユーザー
infinite206
ゲーム
創作彼女の恋愛公式
ブランド
Aino+Links
得点
85
参照数
882

一言コメント

真実を知った状態で始めるのもありかもしれない

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

2021年度の覇権を取るであろうということで購入。
一話完結型で共通√の後、桐葉、エレナ、ゆめみの三人をクリア後、逢桜√が解放。

ここからネタバレではあるが、逢桜が末期の病気であるということが判明。
実はプレイ前にネタバレを見かけてしまったのだが、逆にこれがいい塩梅になってくれた。

共通√でたびたび見られる逢桜の言動。病院に行ってくる等が実は伏線になっていた。

それを含めると他三人の個別ルートを見てみると、フランスなのにいつ電話かけても必ず出ることや、
特に桐葉√の最後に授賞式で話したことが、今はいない親友、という言葉にすべてが集約していたのではないだろうか。

かくいう逢桜√だが、途中で手術の話があってそれを受けないでシナリオを書きたい、というものがあった。
これは恐らく、生きることを捨ててでも目の前のものを書き上げたいということを表したかったのだろうが、
逆にこれが逆効果になったのかもしれない。あえてそこで分岐させるのも面白かっただろうが、
恐らくそこまで予算が組めなかったのか、途中で力尽きたのか。そこは制作陣にしかわからない。

とは言え、ラストシーンでの逢桜と主人公二人が桜の下で歩いているシーン。
結局逢桜が生きているのか、生きていないのか、その辺をぼんやりとして終わらせたことにより、
ある意味、読者の解釈に任せて終わらせるという終わり方を取っている。
これはゲーム内で主人公らが作るゲーム「AS」の愛姫√のメタみたいなものになっているのではないか。

ハッピーエンドかバッドエンドかは受け取り方次第。
公式がない、という部分もそこに直結するのではないか。そんなことを思いながらプレイしました。

個人的には手術の話が出たのならバッドエンドに話を振って、
最後に逢桜の墓の前で主人公が、
「最近こういうことがあってさ。ははは、面白いよな」
みたいな感じで話を初めて、最後に
「でもさ、俺は逢桜と未来を歩きたかったよ。クリエイターとしてじゃなくて逢桜の幼馴染の俺として」
というような後悔を入れたらいい感じに集約したと思う。賛否両論の嵐になるかもしれないが。

できない私が、くり返す。を思い出す。あれは他三人の√が比重が後から見るとやけにこじんまりしたものに思えたが、
あれくらいやってくれたら完結したと思う。

幼馴染としては書かせるべきではなかった。一緒に歩ける将来の可能性を少しでも広げたかった。
でもクリエイターだから。今目の前の作品を完成させることに命を懸ける。これは止められない。

後悔を胸に主人公はクリエイターとして強く生きることを決心して、墓を去っていく……。こういうのはどうだろうか?


とりあえず総括として、よく作りこまれた作品だなと思いました。
奇跡なんていらない。この言葉の意味が最後の最後になって身にしみて感じました。

ちょっとエロシーンについては文句を言いたい。
というのは全ルート同じようなつくりだからだ。
初体験→ふぇらとかしてみました→めちゃくちゃやりました
みたいな。ちょっとだれたかも。
逢桜は病気なんだから丁寧に描く一回でよかったと思う。あの旅館での話だけど。

歌詞の意味も後で聞くと心に響く。
ちょうど終わったタイミングで、これを書いているわけだが、
初回限定版の中からCDを取ってインストールして再度聞いてみたいと思う。