車輪は未プレイです
ほぼ文句なしでした
ハル√を一気に読破し伏線探しや先読みなどもせずにやってたおかげで、言われているような矛盾や整合性の無さについてはまったく気になりませんでした。
兄の正体についても「まぁどこかで話に絡んでくるのかなぁ」とか考えてた程度で、よもや親玉そのものだとは……。撒いたミステリー要素を一気に消化してスピーディーに展開していった5章後半はひたすら釘付けにされました。
演出についても一級品でした。音楽が良いのはもちろんですが、セリフひとつで急速に空気を冷やしたり(主に魔王)、逆にスリリングな展開に持っていったりと、要所要所でキレのある演出が効いてて、「やり方を知ってるなぁ」といった感じでした。
ストーリーもハル√は満足です。京介と恭平が対面する外郭放水路の辺りで相当盛り上がったので「ヤマ持ってくるの早すぎたんじゃ……」とか思ったんですが心配無用でしたね。取調べと面会3連打(+栄一)でボロボロに泣かされました。
またラストに持って来た京介の「自己犠牲」も、一歩間違えばまどろっこしくキャラクターとストーリーにとってのマイナス要素になりかねない物だと思いますが、一貫した主人公の強い態度と築き上げてきたハルとの信頼関係のおかげで清々しいものになってました。
他のキャラの中では水羽が登場回数少なかった割には意外と良かったです。
個別ルートは若干薄っぺらかったのですが、倉庫で権三に泣き叫びながら訴えるシーンと、学校からの立てこもり逃走後にユキを救おうと説得するシーンは何気に自分の中では名場面でした。
特に後者は、個別√を通して彼女の弱さを知っていたので、弱音を吐いたり駄々をこねたりしてもおかしくないような場面だなぁと思っていたのですが、感情をぐっと押し込めて、等身大の姿で自分の目の前にあるユキという問題の事実を確認し「言葉」で解決しようとする姿は立派でした。特殊な事情を抱えた人間や異常な冷血漢達の形作るストーリーの中で、単純でまっすぐな京介への恋心と姉への愛に突き動かされて動く彼女は光った存在でした。冗長気味だった倉庫の話が完全な中だるみになるのを防いだのは彼女ではないでしょうか。
と、ほぼ100点をあげたい出来だったこの作品ですが、ケチをつけたい部分が二つ
・権三をもっと出して欲しかった
権三の死が、京介の行動理念が「悪」から「愛」に変わるための重要なターニングポイントとなったり、権三から与えられた地獄が、血に染まったセントラル街において、魔王の坊や達と京介とを差別化する無くてはならない経験となったりと、権三の存在は後の京介に大きく影響する要素でした。にも関わらず恭介への思いは描写不足だし、何より射殺シーンがあっけなさすぎた。京介の家族をどう思っていたのか、わかりにくかった。もっと権三の生き様・死に様を描いて欲しかった。
・ラスト
最後の最後、終わり方がミスっている気がしてならない。魔王の仕掛けた復讐の輪廻を京介が止めた、という終わり方でよかったのではないか。ハルの娘を出すのは構わないが、せめて今後この氷河の道にハルと立ち向かうという、「前向きな」所信表明が欲しかった。
若干細かい文句もタレましたが、作品にはとても満足しています。間違いなく傑作でしょう。
FD期待