ErogameScape -エロゲー批評空間-

imotaさんのひなたのつきの長文感想

ユーザー
imota
ゲーム
ひなたのつき
ブランド
ko-eda
得点
80
参照数
4746

一言コメント

ニンゲンさん、ニンゲンさん、ちょっとだけいつもとちがうせかいを、のぞいてみようよっ! 人間の世界で生きることに疲れた貴方が、無垢で可愛く騒がしいエルフたちとの日々を過ごすことで、再び生きる喜びを見出せたのならば、おちんちんがついている事なんて大した問題じゃないと思わないかい?

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

『私は、大人のエロフ。その身にモザイクの紋章を持つ者です。
今、貴方の頭の中に直接語りかけています。モザイクのエロフにとっては言語など不要、肉体言語が全てなのです。

既プレイ者しか分からないネタを、当然のように突然振られても困る?
人生とは常に理不尽なもの。全てをあるがままに受け入れる広い心こそが大事なのです、人の子よ。

我らエロフは、異次元の存在。
その身を内輪の結界内に隠し、普通の人間には理解できぬ性癖を語り合う、完璧エロ超人。
しかし、この度、ko-edaと名乗るエルフスキーが、商業フルプライスデビューという無謀な門を開いてしまったのです。

我らは危惧しました。いくら可愛くてもショタエルフオンリーエロゲなど、まだ人の子には早すぎると。
そして、若さ故の環境整備の未熟さが、人々を惑わすのではないかと。

その一方で、我らは期待しました。ショタという劇薬を、エルフという劇薬が中和するかもしれないと。
そして、真面目なエルフ研究の成果と、彼らとの交流の日々が、人の心にあたたかいものを残すのではないかと。

人の子よ、その短き生ゆえに前へ進むことを恐れぬ貴方たちが、ここで我らと出会うことを楽しみにしていますよ』



こんな電波を受信した私は、気がつくとソフマップで通販予約のボタンを押していた。
いや、誰かに言われずとも、このような貴重な機会を逃すはずがない。だってショタエルフたちとキャッキャウフフですよ!

無邪気で明るいハーフエルフ、のんびり屋で奔放なエルフ、気位が高くツンデレなエルフ、臆病で向学心の強いダークエルフ。
人間の世界を初めて見る彼らにとって、全てが新鮮な驚きに満ちていて、その反応がいちいち面白くてかわいい。
お菓子の取り合いをする姿を見ていたら、自分の取り分がなくなっている事など仔細な問題だ。うぅ・・・

他にも、果物や花や魚を取りに出かけたり、小屋の前住人の日記の検証に出かけたり、人間の道具や名前をあげたり、
細工物や文字を教えたり、お返しに風邪の時看病してもらったり、お礼と称してエッチしたり、何となくエッチしたり・・・

ヒナタは、いつも元気よく頷くけど、言葉の意味をよく分かってないし、そもそも鳥頭だし、
イバラは、いつも知ったりぶりするけど、あんまりよく分かってなくて、後で顔真っ赤に逆ギレするし、
ツキヨは、理解が早いけど内気で、はわわわっしてるうちに周りの騒ぎに巻き込まれちゃうし、
コノミは、とにかくマイペースで、何が起こっても楽しそうにニコニコしてるし、何気に一番エロいし・・・


しかし、ただ楽しい日々ばかりではなく、人間とは文化の違うエルフの生き方が、彼らの間に影を落とし、
誰かが特別な存在になった時、寿命も住む世界も異なるエルフと連れ添う事への覚悟が、本当にあるのか問われもしよう。

しかも、ご丁寧にエルフとの交流は、森の結界のおかげで期間限定だ。
学を求めたが故に故郷の村で疎んじられ、独りになろうと人里離れた森に来たはずが、可愛い闖入者たちに振り回される日々。
それを騒がしいと思いつつも、他者と交わる喜びを知り、その温もりを失う寂しさをも知ってしまう。

小さきエルフたちも、それぞれの事情で孤独を抱えていたり、やさしいニンゲンさんが大事な存在になったりして、
エルフの世界へ戻るのか、人間の世界に残るのか、幼いなりに悩み、その真っ直ぐな気持ちをぶつけてくる。
だが、人間以上の年齢でも彼らは未だ子どもであり、責任ある答えを出せるのは大人であるニンゲンさんだけなのだ。


エッチシーンについては、正直実用性は高くなかった。

予想はしていたが、エルフの子たちは性に対して知識がなく、そもそも性交の必要がなく、
単純に「気持ちいいこと」という意識なので、羞恥心や背徳感をスパイスに、エロスを鑑賞することが難しかった。
逆に、その抵抗感のなさが、時々ある明るい乱交に花を添えたとも言えるが。

主人公も、最初はとんだ下半身野郎かと思いきや、根は優しく、同性相手である事も素直に受け入れる漢だった。
ニンゲンさんが、もう少し変態紳士であれば、実用性も上がっただろうが、この世界観を壊す結果に繋がったかもしれず、
下手に抜きゲーを目指して失敗する危険を考えると、本作のイチャラブ路線は間違ってなかったと思う。

ただし、CG差分が少なく、テキストとの齟齬が度々見られた事は、デビュー作とはいえ残念であった。
エロ以外でも、修正パッチを入れたはずが、贈り物による大事な立ち絵の変化がほとんど見られなかったり、
狙った演出かもしれないが、せっかく情緒あふれる音楽が多いのに、無音ばかりが目立つのは、やはり残念だった。
あと一度見たエンドロールや回想シーンでスキップできなかったりとかね。


その代わりというか、エルフという存在へのこだわりは、並々ならぬものを感じた。

エルフの本当の名前は人間には聞こえないとか、親のないエルフは身体に持つ紋章から名を取るとか、
完全なるエルフは食事もせず肉や魚はニオイすら嫌がるとか、その完全さ故に不完全な存在を見下してしまうとか、
所有物への考え方とか、見えない「道」の存在とか、癒しの術の効果とか、貨幣への無理解とか、
エルフと人間の世界の位相の違いとか、大人のエルフのテレパシー能力や達観した考え方とか・・・

ざっと記したこと以外でも、会話の端々に彼らの生き方が垣間見えて、その度に耳長コスプレとは違うのだと実感する。
だからこそ、そんなエルフたちと心を通ずることが、新鮮な喜びを与えてくれるのだ。



ここまでの全体的な事を書いてきたが、今のところまあ良作程度かなぁという印象かもしれない。

しかし、しかしです、あれなのです、ヒナタきゅんがアホかわいすぎて、しかも個別ルートで泣かせにきてKOなのです。
そのクリティカルヒット具合は、もうエルフニンジャに首を刎ねられるレベルで、俺はキュン死した。

会話でも一人だけ漢字なしで、いつも「ニンゲンさん、ニンゲンさんっ」と子犬みたいにニコニコと懐いてきて、
やる事なす事失敗ばかりで、ケガばかりなのにいつも笑っていて、はしゃいで集めた木の実も放り投げて「ありゃ?」
とまた探しに行って、いつも素直に「うわぁ!やっぱりニンゲンさんはすごいや!」と目を輝かせる子どもで、
名前の通りにお日様のようなヒナタ。

しかし、汚い人間とのハーフ故に名前をもらえず「ナナシ」のままで、エルフの里では大事にされなかったヒナタ。
無視よりも、いじめられる方が寂しくないと、でも「かなしくておはながツーンとしたときはわらうんだ」と
寂しそうな笑顔で過去を語るヒナタ。そしてニンゲンさんからもらった名前と肩下げ袋を、大事に、大事にするヒナタ。
記憶すらない人間の父の足跡を、その愛情の証を知った矢先に、汚い人間の手でそれを失ってしまうヒナタ。

そりゃ泣きゲーの世界では珍しくもない話なのかしれないが、ショタエルフ故に許される天然のアホかわいさと、
庇護欲を煽ってくる個別ルートと、しかし結界と人間の寿命のタイムリミットに板挟みで、最後の別れの瞬間とかもう・・・!

エンディングまでネタバレするほど無粋ではないが、安易に選択した結果を見てしまうと胸が痛くなり、
幸せそうな終わり方でも、決してご都合主義とはいえない切なさがあって、物語の余韻が心に残る。
個人的に、本編で省略された物語を想像したくなる作品は、名作たりえると思っているが、本作もその資格があると思う。


と褒めたばかりで言うのも何だが、個別ルートによって出来不出来の差はある。

忌むべきダークエルフ故にヒナタ同様ナナシだった、そして主人公に名をもらったツキヨ。
「身の回りから手放したら所有権はなくなる」というエルフの風習から、イバラと争いになり、里に戻る資格を失い、
しかし「もう名無しには戻りたくない」と、人間の世界に残る決心をするツキヨ。

二人きりの生活になった経緯によるぎくしゃく感、主人公は様子見のまま仲直りという傍観者感、
ダークエルフの集落を探す旅に出るツキヨの決心と、学者など夢物語と諦め、モラトリアムな小屋生活をしてた自分。
闇の力を肯定的に捉えるニンゲンさんの優しさは大きかったが、全体的には何となくこじんまりと感じてしまった。

でも最後に短髪で気後れしなくなったツキヨきゅんにキュンキュンして元は取ったよ!
でもせっかくなら長髪の頃のポニーテール立ち絵をちゃんとしてほしかったかな!


その奔放さがエルフらしいコノミは、セックスや身体の触れ合う「気持ちいいこと」が一番だと、エロフ化する。
「結界が閉じるまで、たくさんエッチしようね~」と日夜問わず誘惑されまくり、爛れた性活を送ってしまう。
しかし、純粋なエルフには、何も手立てなく人間の世界で生き続けることはできないのだった。

終盤、好奇心は猫をも殺すと、村の血気盛んな人間に捕まってしまうコノミ。
口八丁手八丁で何とか取り戻すも、やはり力のない自分にはコノミを守りきれないと、森へと返そうと決意する。
正直コノミはよく分からんままだったが、あっさり別れた後、時を経て優しき観察者と再会する場面はじんわりしたよ・・・


エルフである事に最も強く誇りを持つイバラは、意地っ張りな性格ゆえに他ルートでもよく諍いの種となるが、
「ハーフエルフでもダークエルフでも、それぞれの良さがあるんだ」というニンゲンさんのエロ教育的指導により、
イズミのエルフ登場時にも、「ヒタナもツキヨも僕の友達だ!」と言えるほど成長して感激。最後に回して良かった・・・

イバラは、何気にコノミ以上の多彩なエロシチュを持ち、縛ってオシオキ、足コキ、触手に襲われるなどの活躍。
分かりやすいツンとデレが、良い感じにイチャラブエロスを生み出しております。

そして、外見の美しさ以外の、ヒナタの明るさやツキヨの思慮深さ、老いつつも変化していくニンゲンの美しさを認め、
しかし、同時に強欲な村人たちを見て、人間の愚かさを再確認し、大事なニンゲンをエルフの里へと誘うイバラ。
他では人間社会で学者を目指したニンゲンが、唯一エルフの里へ行くENDは、逃避かもしれないが、皆で幸せそうだった。


エルフっ子たちを一通り攻略して、何のかんの皆それぞれ可愛いなぁという平凡な感想を抱いた俺の目の前に、
「ぬばたま」という謎の項目が・・・おお!

みんなでエッチするのはたのしいね、ニンゲンさん!(ハッピー腹上死エンド