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imotaさんのmemento 少女のカラダに刻まれた、催眠と快楽の記憶の長文感想

ユーザー
imota
ゲーム
memento 少女のカラダに刻まれた、催眠と快楽の記憶
ブランド
アトリエさくら こんまいすたじお
得点
70
参照数
4072

一言コメント

エロスの神様は気まぐれで残酷だ。しかし盲目的に信仰することでしか得られぬものも確かに存在するのだ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

貴方はただ、私を信じて、記憶の謎を読み解く旅路に参加なさい。
そうすれば、私が何故あのように回りくどい一言感想を書いたのか、貴方は理解するでしょう。

そんな言い方では信用できるものもできなくなるって?
ならばディレクター兼ライターのおんぼろ月氏を信用なさい。
エロゲという媒体での見せ方に拘り、それを低価格という制限の中で努力する者に対して。

別に私は信者ではない。
氏の欠点、キャラクター描写やヒロインへの感情移入の弱さ、あるいはシチュエーションの犠牲にする姿勢、
濡れ場で喘ぎモードになった途端の単調さ、それを知った上で氏を評価しているつもりだ。

しかしマンネリ化の著しいエロゲにおいて、単純な抜きゲからの脱却を志向する氏の姿勢を、私は応援したいのだ。
だから、個人的な絵柄の好みをさて置いて、その先の「陽だまり」を信じて、本作を手に取ったのだ。



本作は、昨今では非常に珍しい画面クリック形式のADVとなっている。
それは催眠状態な彼女の心象風景であり、抑揚の少ない彼女の反応が作品のほとんどを占める、特殊な構成になっている。
正直アトリエさくら系列といえば一本道や学園ものが普通なのに、随分と思い切ったものだと感心した。

基本は画面内のオブジェを順番に見ていくのだが、それだけではすぐに謎に詰まってしまう。
だから、「彼女」の別時間の過去へと飛び、少しずつ閉ざされた記憶の扉を開いていく。
多少総当りな部分もあったが、それは許容範囲だ。

この「謎」自体は、大掛かりなものではないが、きちんと伏線回収がなされており、エロに意味をも与える。
これを話すとネタバレになって興醒めさせてしまうが、しかしそれを語らないと同士には届かないジレンマがある。

ひとつだけ言えるならば、少女と催眠というキーワードは呼び水だった。
我々は二重三重に騙されていた。



ここまで書いたなら、もういいだろう。
この先は真実を知った者の日記だ。先にそれを覗いて後悔するのも、貴方の責任だ。

本作は偽りの記憶に彩られた物語だった。
幸せだったエカテリーナ、姉から疎まれた双子の妹ナタリア、親切な神父様に領主様、謎に挑む敏腕私立探偵。

勘の鋭い人ならば全部の伏線に気づいたかもしれないが、私が最後の謎に気づいたのは直前だった。
だが、その間抜けさが、私自身に強烈な不意打ち寝取られを提供してくれたのだ。

目の前の少女の悲惨な境遇を、同情しつつも傍観者として眺めていた「私」を、血縁者として強引に引っ張り込んだ。
人生の絶頂で愛した妻を亡くし、愛する娘たちは失踪し、しかし諦めきれずに何年も探し、彷徨い続けた男。

しかし念願の再会は、神父の催眠術による寝取られショーと化し、私は調教で変わり果てた娘を見て絶望するしかなかった。
それまでのエロは正直物足りないものばかりだったが、おそらく全てはメインディッシュの前座だったのだ。

この怒涛の連続シーンを最後に見せるがために、注意深く設定された舞台は素晴らしく残酷だった。
多分、「有名ロリエロ漫画家さんで寝取られ解禁!」というリアル情報すら、騙しの一環だったと思う。
たしかにそうだ、娘を「寝取られ」てはいない。だが、この苦い味わいは同じに違いない。まるで第三のビールだ。



正直なところ催眠エロ要素は大したことはなかったが、それに釣られた私の浅はかさに感謝したい。
しかし、周りの寝取られ紳士を見る限り、この隠蔽された娘NTR地雷を踏んでしまう勇者は、きっと少ないだろう。

本作は、宣伝自体も少ないようで、せっかくの試みがこのままエロゲの雪の中へ埋もれていくのは惜しい。
私もささやかな抵抗はするつもりだ。それがこの不甲斐ない父にできる罪滅ぼしだ。

そう決意して、ふと鏡を見た。
ハゲ神父様にそっくりなおっさんが何かぶつぶつ言ってた。