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imotaさんの恋踏 ~コイブミ~の長文感想

ユーザー
imota
ゲーム
恋踏 ~コイブミ~
ブランド
エムサイズ
得点
90
参照数
3941

一言コメント

抒情性すら伴ったマゾヒズム、そしてフェティシズム。等身大の青春を描きつつ、不自然で自然な主従関係へと着地する物語。プレイの激しさでなく行為の本質を追究する事で初心者からドMまでを満足させる、早智子様と野枝様には感謝するばかりでございます。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

サークル名から明白だろうが、徹底した女性上位がエムサイズの作風である。
だがりうむ氏は、女の子様学園という舞台を作る為に意匠を凝らし、その後の幼馴染と命懸けの脱出行を書く、物語の人でもあった。
Mゲーで描く内容ではないという批判もあるだろうが、単純な特化シチュを作る人ではないのだと、強く印象に残っていた。

以前『侵触3』で言った事だが、入門用というのは敷居を下げるのではなく、その属性の本質を抽出する事で理解が進むと私は思っている。
クラシック音楽において、作曲家が大衆よりも己に忠実になる事を優先し、虚飾を排した晩年の作品の方が、鈍感な私には分かりやすいのだ。


今作では、まず久しぶりに再会した明るい従姉妹の早智子、親友の章平、そして自分の仲良し三人組が「ある出来事」により三角関係へと変質する。
三人で初めての旅行、川の字での就眠、月明かりの下で中空に浮かび上がる早智子の脚、その美しさに気づき陶然とする中で、玩ばれる二人の男性器。
その一晩の出来事で、明るい従姉妹は謎めいた少女となり、曜日ごと交代のお試し交際の中で、底知れぬ支配者の顔を少しずつ見せ始める。

しかし、その真意を知らぬ主人公と親友は、女性への「普通」の欲求に従い彼女へとアプローチを続ける。
男らしく女性をリードする状況でなくなっているにも関わらず、男のプライドを抱えたまま、躱され、玩ばれ、射精まで管理され、深みへと嵌っていく。

夢の中で、妄想の中で、早智子の脚がシルエットとして浮かび上がり、男性器を踏みつける。
気がつくと現実の彼女の脚を見るだけで自然と勃起するようになってしまい、ストッキングを着用し始めた脚に目を奪われ、それを笑顔の彼女に指摘される。

いや、この倒錯した欲求は子供時代、二人の思い出として既に根深く埋め込まれていた。
プロレスごっこで勢い余って倒れ、彼女の脚は僕の股間を踏みしめ、時間は止まり、ただ蝉の音だけが鳴り響く。
見つけてはいけない性の抜け道を見つけた二人は、次の日も親元を離れ、「全部脱ぎなさい」という彼女の命令で、儀式の続きを行う。

嗚呼、これほどまでに美しい電気アンマの場面があっただろうか。
男として早智子様に隷属する、そんな不自然極まりないものを自然なものとして思わせるほどの出来事。
早智子自身も、恋に興味が持てず、支配者としての欲求しか湧いてこない自覚をするようになるのだけれども。

迷いを断ち切り、マゾ奴隷としてお仕えする事になると、ノーパン黒ストの早智子様からのご褒美が頂ける。
ご褒美と言いつつ、それは我慢プレイであり、言葉責めであり、行為としては大したものではないが、精神的な快楽は果てしなく、触る必要すらない。
「元」のカタチに戻った二人が、思い出の実家へと帰省し、当時の行為を再現する様には感動すら覚え、俺は射精した。

早智子の、自分の歪んだ欲望を認められないと、逃げるように転校し、やがて喪失感に身もだえする。
しかし間違いを悟って奴隷宣言をするも、時すでに遅し。欲望を解放した彼女は、既に学園の影の支配者となっていた。
主人公は、PCの向こうで彼女に玩ばれる男と同様に、オモチャの一つとして生きるしかなかった。


早智子様が脚ならば、野枝様は金玉だ。

部活の後輩で身体が弱く大人しい野枝と、ふとしたきっかけで親しく話すようになり、やがて両想いになる二人。
不可抗力とはいえホテルで二人っきり、いい雰囲気のまま初エッチしようとするも実は生理中、欲望を持て余す主人公を楽にしようと彼女の申し出。
しかし性に奥手な彼女は、竿を触るのすら怖がり、柔らかくかわいらしいキンタマに興味を示し、徐々に興奮をも示す。

行為最中の彼女の変貌に驚くも、気弱さ故に割を食う彼女の性格を変えてあげようと、主人公は野枝主導のエッチな特訓を画策する。
それが、彼女の隠れていたサディズムをも目覚めさせてしまうとは、露とも思わず。
最初は恐る恐るだった彼女も、途中から積極的に攻め始め、手段と目的は逆転し、まだ上位にいると勘違いする主人公の認識を改めさせる。

彼女の見せる優しさを求めると、最終的には赤ちゃん言葉でママに甘えるほどまで退行する。
「甘えん坊な先輩にはオムツがお似合いでちゅね~♪」としーしーまでしてしまい、「これはバツでちゅよ!」とお尻叩き。
さっきまで社会人をしていたはずの自分が、恥も外聞もなく野枝ママに甘え、無様に許しを請う。最高だ。

彼女の見せる厳しさを求めると、最終的には章平共々、早智子様と野枝様の奴隷として夜の校内を裸で連れまわされるまでになる。
月夜に浮かび上がる四人のシルエット、行きは恥ずかしそうに俯く男二人、帰りは犬として嬉しそうに引っ張られるオス二匹。
彼女達の命令で部費の横領までしたご褒美に、顔面騎乗でオナラ連発。ここまで来た貴方ならご褒美だと思えるだろう。



短くも濃密すぎる作品ゆえに、実際にプレイするまでに、プレイしてからも相当の時間がかかってしまった。
BGMのように気軽に聞けるものではなく、鑑賞するために聴くことを求められる。抜きゲーでありながら、芸術の領域にすら入り込んでいる。

興味本位で買ったけど抜けねぇぞゴラァ!となったらごめんなさい。でもいつか貴方もこの世界の美学が分かるはず。
その時には、ひたすら射精管理された後びゅーびゅー出す未曾有の快楽を、主人公同様に味わうはずでございます。