発展途上な絵や演出、つぎはぎなヒロイン選択性、とディール君の如き本作。この世界のメインとなる舞台設定にキャラクター、とファイブスター物語のミラージュ騎士団の如き本作。評判通りに魅力的なキャラ達が大暴れ、バトル展開の熱さはシリーズ随一にグレードたけぇぞおらぁ!!!
世界観に繋がりのる作品をどういう順番でプレイするか、というのは意外と評価に関わってくる問題だ。
私は雨傘日傘事務所ファンとしては後発で、ナレット→ヴァージンロードの新作から、ヴィザル→黒曜鏡へと遡ってきた。
絵や演出についてはヴィザル以降でバリバリ強化されたらしく、黒曜鏡に物足りなさを覚えたのは事実だ。
しかしバトル展開、物語の大きさとしては本作が最大規模だったらしく、結果としてはこの順番で正解だったかもしれない。
人類と亜人で種族の生き残りをかけた戦争から500年、戦乱は徐々に落ち着いた現在、覇道を突き進み大国となった皇国ニフルヘイム。
その力の源である騎士団の頂点、皇直属の十騎士、文字通り一騎当千な者たち。そして108の魔獣を従える召喚師。
その首都の闘技場で召喚された法の魔獣、物語の主人公エルセディオ・ロウ。
彼を世話する可憐なエルフメイド、闘技場の奴隷として戦う少年に少女に双子に亜人に魔獣。
血生臭い世界でありながら、彼らの日常は穏やかであり、コミカルですらある。
しかし、水面下では着々と謀が進行し、満月の夜へと向けて複数の旋律が絡み合い、上昇し、そのままクライマックスへと雪崩込む。
貴方がもう少年漫画、バトル漫画など卒業したと言うのならば、細かいツッコミどころが気になり楽しめないかもしれない。
しかし大人になっても、いや大人になったからこそ、熱いバトル展開を求めるというのならば、本作は十二分に期待に応えるだろう。
何せ舞台は闘技場、最初から戦いの連続だ。
敗北したとある国の女騎士、しかしその小さな身体から放つ拳は恐るべき威力となる。
敗北したとある国の王族の息子、拘束衣までされて、しかし生き残る為に相手の技を盗み続け、戦い続ける。
電気と電磁を操って殺戮を楽しむ双子、彼女達は理解の範疇外だが、彼女達なりのルールで生きている。
十騎士がひとり、やけに腰の低いその男の剣舞はまるで旋律のようで、彼の側にいる気配の希薄すぎる彼女と共に戦場を駆け巡る。
十騎士がひとり、マントの下から触手を伸ばす邪悪な男、人体改造に定評のあるデュエル家の子孫。
十騎士がふたり、左右対称に様々な攻撃を仕掛ける双子、冷静沈着な武器クラッシャーたち。
十騎士がひとり、鉄球と鎖をまるでムチのように操る人間大砲、ヤンキーの如き口調だが騎士精神に溢れたグレードの高い漢。
十騎士がひとり、恐ろしい巨体とパワーを持ちながら、義足の十騎士との子供を持ち、そちらを想像する方が恐ろしい貴婦人。
十騎士がひとり、堅物で偏屈で孤高の眼鏡騎士、彼の活躍は本編以外が本番だろう。
その十騎士が長、魔力を失った代わりに人外の肉体を得た、エルフの変種ダークエルフの翁。
108という規格外の魔獣を従える、自らもゴキブリ並の生命力を持つ召喚師。
彼に従う魔獣、白狼、青龍、剣鬼、霊鳥、ゲイボルグ、メデューサ、クラーケン、巨人、ケルベロス、ゴリラetc…109番目の魔獣。
そしてエルを世話する戦場に咲いた一輪の花、可憐な貴方のメイドエルフ!
可憐?誰がですk ざくめり(チョキが両目に深々と刺さった音
ああ、あかいよう……あかいよう……
大丈夫です、ディール。それはすべてゆうひのあかさです
……本当に?
……ほ、ほんとうです
あかいよう……あかいよう……
全く、ギャグ補正というのは無敵だから怖いのう怖いのう。
もう一人こわいメイドさんもいて、そっちのパンチは呼吸困難を引き起こします。
あと小柄な奴隷さんのオデコを触ると、顔面がお好み焼きみたいにぐちゃぐちゃになります。
というか実は戦場よりも日常の方が肉体的にひどい目にあってるような…?
朝こちらから起こしに行かないとご飯の出ないメイドって何よ!しかも寝起き最悪でチョキで目が、目が!(ざくめり
まあ主人公も主人公で、魔獣故に空気が読めずに自爆スイッチ踏みまくってるから何ともはや。
でも基本は優しく冷静沈着で、熱情すら冷静に観察できる男ってのは新鮮だし格好良いのは事実で、そりゃ両手に花でモテるよなぁ。
ただ問題は、ダブルヒロインにしてもエロ以外の本筋はほぼ同じなので、終盤のキャラ心情にあれ?っと感じたりもする。
多分作者も分かっていたから、後の作品では一本道にして、エロや小話を幕間に分離したりしたのだろうな。
本作もリメイクを予定してるから、いつになるか分からんけど気長に待つんだなろうな。
何となく自然に話題が変わっているが、その辺はサークルさんの特徴でもあり、ごった煮具合こそが魅力でもある。
本気の命のやり取りをしてたと思いきや、意地の張り合いみたいな殴り合いしたり、そうしてまた本気で命を張ったりと揺れ動く。
本作のキャラクターの行動原理は、ヴィザルと違って全員理解できたので、荒唐無稽なバトルでも素直に楽しめた。
細かいことはこの後ネタバレ全開で書こうと思うが、この世界はファンタジーとSFが混ざった世界だと本作で理解できた。
これでようやく私も雨傘日傘ファンを名乗れるかもしれない。随分と視界が赤くなったけれども。
※以下、ネタバレ全開な手記
アーベルかわいい!
僕っ子でかわいい!淫乱でかわいい!不器用でかわいい!料理下手でかわいい!デコっ子でかわいい!用心棒かわいい!
安直かつ重大な選択肢でヒロインが決まる訳だが、個人的にはアーベル一択ですな。
エルセディオの魂は、おそらくアーベルの日だまりだった彼、彼女が側近として共に戦場を駆け巡った教皇の影武者に違いなく、
死して残った強い未練とは、彼女への想いだったに違いない。
カラスから鍵を渡された最初の晩、自分の貧弱な身体を卑下しながら笑顔で語る彼女を見て、何も思わずにいられようか。
その後、紳士なエルに気兼ねして、そして淫乱な自分を知られるのが、嫌われるのが怖くて、ひたすら我慢した彼女を見てしまったならば。
調教によって淫乱となった自分をも受け入れられ、歓喜の涙と共にひどい行為を望む彼女を見てしまったならば。
ロードとの戦いでエルが削られ、最後の日だまりを失ってしまった彼女が、無謀にもダークエルフに一騎打ちを臨むのを見てしまったならば。
もう一人のヒロイン、リィ・ルゥも、反則ギャグキャラで世話焼きさんで、しかしつらい過去のあるお姉さんであった。
記憶と片目を失い、心が擦り切れそうな五百年を過ごした彼女に、本当の笑顔を取り戻させたエル、彼女の召喚獣の存在は大きかったのだろう。
ただ、彼女は嘘つきで、彼女の視点はわずかで、自分がヒロインとしての思い入れを持つには足りず、マスコットとして愛でてしまった。
彼女の目的は、500年前に召喚された「無」の魔獣を、今度こそ滅ぼす事であり、それは彼女の弟も同様であった。
己の非力さに絶望してダークエルフと化した男、怨霊の騎士ロード、リィ・ルゥの記憶から消え去った弟ギィ・ルゥ。
普段は温厚で「ふぉふぉふぉ」笑いする爺さんだが、本性出すとやっぱりこわい。最期の一撃は笑みと共に私の記憶に残った。
皇国にとっての敵となった召喚師カラス・メルヴェール。
「無」の魔獣の手で「死」を無くした男の500年の妄執は、ただただ一人の父親としての足掻きでしかなかった。
その想いは理解できても、同化するには描写が足りなかったが、それは彼の魔獣と共にリメイクで果たされると信じている。
ハッ、それにしてもまったく腰の入ってないヘボパンチだ(ガクガク
生まれた時から枷をはめられ、悲しみと共に解放された青年ディール。
黒曜鏡を本筋とすると、こちらは皇国の王家の確執に関わる物語で、表の歴史としてはこちらの方が大筋であろう。
生存戦略しかなかった彼が、主人公や十騎士と出会い、騎士を志すまでの変化は、サブながら印象深かった。
ただし、他の方のレビューを見るに、ディール主役作品をプレイするかどうかは迷うところだ。
そして主人公、虚界の法の魔獣エルセディオ・ロウ。
初っ端の無礼なカラスの態度の態度に、我慢の末ブチ切れて延々と礼儀作法を教える変なやつ。何かと理不尽に巻き込まれる不憫なやつ。
でもその不憫さが似合うのと、精神力と回復力が並じゃないので、物語は前向きであってくれる。
本気を出さればラスボスにすら勝てるのに「この筐体を見せたら今後の人間関係に支障がでるじゃないか」とのたまう辺り、いい性格だ。
ヴィザルの日記では、虚界術の行使にあれほどリスクがあったのに、本作では結構ご都合主義なところもある。
ただ、ようやくの主人公の帰還を見て胸が熱くなった、この気持ちこそが大切なものなのだろう。
END後のおまけでは、何やら理不尽ハーレムが展開されそうでニヤニヤがとまらんのうとまらんのう。
とまあ、ささっと書いてこんな感じじゃな、ふぉふぉふぉ。
ヴィザルをプレイした時もそうだけど、本作をプレイしたのも周りの熱い評価があったからで改めて感謝。
おっと、違うか。
こういう時は「このサイト、グレード高いっすね」だったぜ!