(12/8/17 一部修正・追記)選択肢なし一本道の、幼馴染スキーに贈られた一品。
・本作について
「夏休みは、ずっとふたりでいちゃいちゃ過ごそう」
このような謳い文句に誘われて、ついコミケで買ってしまった本作。
結果的には自分にクリティカルヒットした作品だった。
本作は、H11年編(小○生)、H14年編(中○生)、H16年編(高○生)の3章構成から成っている。
分類するなら萌えゲーか。
自分の知る限りでは、ねこねこソフトのみずいろシステムの選択肢が無くなった形式が近いと感じた。
緊迫感や先が気になる構成とは無縁なシナリオだが、
心情描写が非常に丁寧で優れているテキストに支えられて、読んでいて飽きない。
個人的にはH11年編の微笑ましいやり取りに特ににやにやさせられた。
プレイ時間は各編約1時間の合計約3時間。
CGは16枚で、差分込みで135枚。Hシーンでは一部使い回しあり。
抜きゲーだと思ってプレイすると肩透かしを喰らうと思われる。
絵と声は上手とは言い難いが、同人で値段を考慮すると相応か。
値段は1300円。コスパの判断は難しいが、幼馴染スキーなら満足するかと。
・各章について
『H11年編』
葉人と枝梨は幼馴染で、昔はよく遊んでいた。
しかし、異性より同性の男子と遊びたいという葉人の年相応のリアルな感情により、1年前から二人は微妙な関係になっていた。
だが夏休み前のあることがきっかけで、二人だけで遊ぶようになる。
話を進めると、芽生え、と言う単語が思い浮かぶ。
えっちなことでそれまで意識していなかった枝梨を意識するようになる葉人。
でも、天然(頭が弱いといった方が近いかもしれない)で性に関して無知でもあったため、よく分からず気にしていない様子。
悶々とする葉人と何とも思っていないような枝梨の対比が妙にこそばゆい。
次第に枝梨も意識するようになっていく様も良い。
『H14年編』
H11年編のある出来事により、気まずい状態が3年続いた二人。
久しぶりに言葉を交わしたことが切っ掛けで再び二人の話が始まる。
二人の気持ちが通じ合って恋人になり、初体験までが描かれる。
昔と変わった葉人と、変わろうとした枝梨。
ぶっきらぼうな葉人と、明るくなった枝梨。
対照的な二人。
葉人はトラウマに引きずられて、ヘタレな部分もあるが、その描写に尺はあまり割り当てられてず、
二人のやり取りと、それにより葉人の心が和らいでいく描写が目立つため、あまり不快にさせない。
むしろその後の甘さを引き立てる酸っぱさになっていると感じた。(褒め過ぎかもしれないが)
『H16年編』
いつも葉人の部屋に居る枝梨。だらだらした二人の関係は少し退廃的。
二人の関係について葉人はある程度満足しつつも、どこか不安や焦りを感じていた。
しかし、枝梨のおかげで最後には吹っ切れる。
美術館のデート時における葉人と、H11年のお祭りに行った時の葉人を比較すると少し面白い。
ラブホテルの一連のHシーンは本作で評価したいことの一つ。
それまでのHシーンを見事に繋げて収束させた。
同時に葉人と枝梨の成長を感じさせた。
このシーンでのある枝梨のセリフが非常に威力が大きかった。
そして最後に咲き乱れたアイキャッチの朝顔。
小学生の夏休みの宿題として定番であり、花言葉は「愛情の絆」。
朝顔の生長と二人の関係・成長をリンクしていたのが好印象。
・いち幼馴染スキーとしての戯言
愛称があるのがまず良い。そして呼称の変化があるのも良い。それでニヤニヤできる。
呼び方が複数回変わるのは、疎遠な時もある幼馴染の特権では?(WLOが良い例)
二人の思い出がきちんとあるのも良し。
ただH16年では、過去の嬉し恥ずかしの話をして欲しかった。それで二人に萌えられるのに。
商業で本作みたいな作品出ないかね。
・最後に気になったことを羅列
イベントとイベントの間がぶつ切りだと感じる時がある。もう少し余韻を持たせる描写が欲しかった。
H11年の時、枝梨の両親の仲があまり良くないことを窺わせる描写があるが生かされていない。
H11年編の後の学校生活が気になる。特に葉人はどう振舞っていたのか?
H14年の時、それまで学校で一言も話していなかったのは少し無理がある。それがきっかけで話が始まったのだと認識はしているが。
脇役のキャラがあまり立っていない。葉人や枝梨のキャラ立てに役立たせる扱いでしかない。
しかし葉人と枝梨の関係がメインだから、それはそれで良いかもしれない。
H14年~H16年の間で枝梨が髪を切った理由が分からない。どっちも可愛いけどね!
H11年で一緒にお風呂に入って、H16年でも一緒にお風呂に入る時、昔も一緒に入ったねの様な会話を期待したのに、その場面があっさりスルーされたのが個人的に残念。
タイトルにもなっている10年はあまり意味が無いような。END直前にも10年云々書いてあったが、そこはむしろ一生と書いて欲しかった。
隠しでH11年から10年後のH21年編があるかもと密かに期待していたのだが。