まさにここ一週間の天気のような世界が舞台。晴れない空、降り止まない雨、救われないココロ…登場人物と世界の背景が正に一致しています。物語の主題になるはずのスイの救済の描写がやや強引で鬱展開の方が高い評価を受けることになってしまったのは残念だが、人のココロに程度の違いはあれど衝撃を与える作品。萌えではなくココロに何かを響かせる作品を求める人向け。音楽も非常にハイレベル。サントラが入手できないのが惜しい。
「ヒトのココロは、どんなカタチをしているの?」
物語冒頭のこのスイの言葉に、全ては集約されている。
その言葉通りに主要キャラはみんな、ココロのカタチを変えていく。
展開によって良いほうに、悪いほうに。
「ココロのカタチ」を変えていく描写が人間ドラマの中で丁寧に描かれている。
とくにその過程での鬱描写は秀逸。
ただ惜しいのは描写の丁寧さがルートによってバラついていること。
特にメインヒロインであるスイルートの描写は強引な奇跡に頼ってしまったがためにメインとしての重みを感じさせてもらえなかった。
晴香が主人公に惚れている理由も明示されなかったのでそこも消化不良気味。
しかし要らないと言われているハーレムルートについては、プレイヤーへの救済という意味で存在価値があるのではないか。
「やっぱり(一時でも)みんな幸せになる世界もいいよね」
と、ライターは考えたのだろう…というのは深読みはだろうか。
肝心の主人公はこの世界の天気のようなココロの中も曇り空のような人物。とはいえ、きちんと後先を考えて、周りを見て行動している大人。言葉はあまり綺麗ではないので人によっては不快感を覚えるかもしれない。
音楽は非常にハイレベル。特にタイトル画面でも流れている「昨日から今日へ」は私的には今まで聴いたBGMでベスト3に入る。もしかしたらベストかもしれない。
ピアノのみの単純な旋律だが、心に染み込んでくるような心地よさ。分類で言うなら癒し系にあたる。その他のBGMも良い。
また純愛ADVとしてはエロシーンがかなり多い。もっとも鬱展開の中でのエロなので抜きには使えないことを注意。またこのゲームをプレイ後しばらくは、いわゆる「いやらしい気分」にならない(なれない)人もいると思われるので重ねて言うが相当な注意が必要。
本来とは別の意味でいつもエロシーンを飛ばしている人向けの作品かもしれない。
CGの技術が低いのが残念。
全員が救われるルートがハーレムルートしかなく(そこでも新海一家は救われたとは言えないのだろうが)、その他のルートは誰かを救う代わりに誰かが救われなくて、その中で描写される鬱展開の衝撃が重すぎてそちらに目が行くのは当然だけど。
それでも、みんなココロのカタチを変えて行き、全ルートをクリアするとタイトル画面に「虹」が架かることで何かを感じて欲しい。そう思える作品。