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idunaさんのプリマ☆ステラの長文感想

ユーザー
iduna
ゲーム
プリマ☆ステラ
ブランド
アトリエかぐや
得点
85
参照数
573

一言コメント

いい雰囲気の読んでいて楽しい話。いろんな意味でそのへんのADVよりも完成度は高い。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

正直なところかぐやがここまでのものを作れるとは思わなかった。

シナリオ・エロ・場面の雰囲気などなど非常に高水準でまとまっている。choco chipさんの描くヒロインというと(というかこれまでのBYの作風というと)、基本的にヒロインは全員20歳以上なのでこの人はもしかしたら19歳以下は描けないんじゃないかと思っていたが全然そんなことはなかった。

最初から高感度MAXとか、主人公が完璧超人とか、そういうのが鼻につく人にとっては低評価かもしれないが、観ていてほのぼの、ニヤニヤ出来る話でそこまで拒否反応を起こす人は少ないと思う。


「一番の夢は一つだけ」(←これがPrima Stella=一番星、つまりタイトルのこと)、「二人で幸せを掴むのが真の恋人」が作品のテーマ(だと思う)

OPテーマのタイトル「Prime Star」を伊語に翻訳すれば「Prima Stella」になるわけで、こういうところも芸が細かいなぁと感心。




以下、各ヒロインの感想。

・静歌
特典の冊子にも書いてあるように静歌の成長物語。こういう話は好きだし控えめで弱気な性格、消極的思考、という現実世界にありがちなリアルに感じられる性格と好きな人のためなら積極的で頑固になるというギャップによるキャラの魅力で話に引き込まれる。
久住とのドタバタな対決は作品の見所の一つ。

エンディングでは静歌の成長の行く末が描かれるわけでキャラの変わりように多少違和感を感じた。「一歩後を着いて来る静歌」というのもいいと思っていたが…
けれども、それだと「お互いに支えあう関係」になれない、というライターの主張には納得。
主人公と並び立つ「強さ」を身に付けたという結末が描かれて完結。

「夢」よりも「幸せ」に重点を置いた話。


・久住
「好きな人と共にある幸せ」を描いている。告白に至るまでが若干描写不足にも感じたがキャラの魅力もありそこまで気にする程ではない。ちなみに本作一のエロ担当。

ライターさんの久住の心情描写が巧妙で、最終話での「……おねえちゃんはそれで、しあわせだ」という一文には胸が詰まる思いだった。この文章は結局は否定され、好きな人と共にいないと夢は見られない、という結論至るわけだが、この心情描写の上手さが物語を引き立てている。演出・構成の勝利といってもいい。

静歌同様、「夢」よりも「幸せ」に重きを置いた話。


・雅
「一番の夢は一つだけ」がテーマの話。後述の巴シナリオと対称になっており、こちらのシナリオでは雅の夢が「舞台で人々に感動を与えること」から「一番の夢は好きな人と共に歩むこと」に変化していく。
記者会見のシーンは本作でも屈指の名場面。さらに美雪先生の活躍も光る。

クールビューティーかつツンデレ、と一番お嬢様らしさを感じさせる設定と、声優さんの演技も手伝っていいキャラに仕上がっている。エロ度では美雪先生とNo2を争うほど。


・巴
同じくテーマは「一番の夢は一つだけ」。こちらのシナリオでは主人公の夢が「水泳で世界一になる」から「好きな人が世界一になるのを側で支える」に変化する。コンダクトの二人を対称的なシナリオにしたのはありふれていると言えばその通りだが対称にする意味があるわけだから納得。

終盤のテニ○リ的な試合はともかく、主人公の水泳より巴を優先させる心情描写が少なかったのはともかく、美雪先生の渋い活躍が印象に残る。
最終話のタイトル「あなたの一番星(プリマ)に」で、「プリマ☆ステラ」の意味がようやく解った。もっと早く気づけよ…


・美雪先生
おまけシナリオで攻略(?)可能。年上ということもあってか従来のかぐやっぽいシナリオ。エロ担当No2。


話がエトワール内で完結していたらおそらく普通のADVとしてそこまで印象に残らなかっただろうが、陶山編でヒロインと結ばれた後の話、「夢」や「幸せ」を掴んで本当の恋人になるという構成は見事。素材を巧く使い切っている。


相手がお嬢様ということもあってか全ヒロインのシナリオで結婚が絡んでくるがそんなに簡単に一人娘を嫁に出せるのか?という疑問や、序盤の唐突なエロシーン突入、全員と関係を持ってから個別ルート突入、ということに違和感はあるがフィクションなのだからそれを突っ込むのは野暮というものなのだろう。


エロシーンはかぐやだけあってその辺の萌え系ADVでは太刀打ちできない。CGは業界トップクラスでほとんどの人が満足できるはず。



今回はシナリオに力を入れたということで話題を読んでいるが…
何重にも隠されたテーマを考察の末に見つけ出すのもいい。重いテーマに正面から向き合って色々なことを考えたりするのもいい。
だけど、こういうテーマを隠さず前面に押し出した作品もまたいいと思った。


ただ、あまりにも綺麗なお話過ぎて自分のようなロクに夢も無い人間なんかには眩しすぎて直視できない部分もありプレイしていて少し凹んだりも。


欲を言えばエトワールでのハーレム状態の日常描写をもっと観たかった。あとエロシーンも数はあるがまだまだ観たい。そう思わせてくれる作品。ファンディスクとか出ないかな…




最近はRPGばかりやっていたせいで補正がかかっているのは否定できないが、それでも高得点間違いなしの作品。初心者、中級者、上級者の誰でも楽しめる作品。