月社妃という女の子に出逢えたことに
大好きな人のために自分をかけて愛を証明した孤独で素敵な女の子に最大の敬意を、君に出逢えたことに、この身を焦がす程のかなわない恋慕を教えてくれたことに感謝を
以下垂れ流し
1章 ヒスイの排撃原理
世界観とキャラクターの紹介、特に他ヒロインに比べて交流が少ない日村かなたというヒロインが何者かについての掘り下げを「不幸に合い続ける少女とそれを救おうとする男の子」のラブロマンスヒスイの排撃原理という物語を通して見せてくる。ストーリーも恋愛モノ
と見せかけて見えない加害者を探すというミステリーもので被害者が加害者だったというある意味ミステリーの定番を踏襲して話を締めたが、ここまで不透明な関係だった妹である妃と禁断の関係であることが露呈する二重の面白さがある章
2章 ルビーの合縁奇縁
遊行寺夜子にスポットを当てた章、事件が起きたと見せかけて起きてるように見せる自演だったというこれもミステリーの定番を使ってくる
ヒロインと学園に通うという定番を見れる点、ここまで瑠璃に対してキレ散らかしていた夜子が少しだけ変わるのは良かったが
夜子の章でありながらバックボーンがよく見えなかった、瑠璃も途中からトリックに気づいてたらしくラストで夜子と一緒に置き去りにされた感が強かったのは残念、良くも悪くも「物語の登場人物の心情」なのか「自分の感情」なのか不透明
3章
サファイアの存在証明
月社妃にスポットを当てた章、自分の存在が忘れ去れる「サファイアの存在証明」という物語
妃がいないことでボロボロだった家族が修復されより幸せに回ることで如何に"月社妃"という少女が異端であるかを家族との回想を含めながら進めていく、最初は互いに仲良くしようと努力していたが次第に壊れていく家族の姿は辛いものがあった
親しい人間に拒絶されること、自分がいない方が幸せに回り自分が如何におかしいかを見せつけられる辛さと
誰からも忘れられているからこそ兄弟ではなくカップルとして堂々といれる幸せ、それに対してこのままでいいのかと葛藤する主人公、このままでいいと考える妃、どこまでも正解のない章だと考えさせられた。
そして妃に死によって狂ってしまった世界、思い出したからこそ彼女の死によって狂ってしまった瑠璃たち、もう一つ開かれていたオニキスとは?クリソベリルと言われる少女とは?衝撃的なラストと伏線をばらまいたこの章は共通部分最後にふさわしい展開だったと言えるだろう、ここまでが体験版とか正気か?
4章
アメジストの怪奇伝承
再び戻ってかなたの章、魔法の本同士は干渉しあわないという暗黙のルールを破るある意味お約束の展開、かなたの可愛さは伝わってきたが正直妃の死から抜け出せずウダウダしている主人公が不快
「このような事件をおこさないようにする」と言っておきながら根源はこいつのせいなので何やってんだか...という気持ちが強かった、夜子の変化を見れたのは高得点
5章
アパタイトの怠惰現象
月社妃が残した日記帳を通して主人公、ヒロインたちが少しずつ前を向いていく転機と前を向けなかったキャラクターの心情が垣間見える話、
彼女が願っていた普通でありふれていた等身大の幸せとそれが叶うことのない切なさに胸が苦しかった。
汀、奏といったサブキャラ周りのお話も組み込まれており今までただのクラスメイトだった岬の活躍が見れたところも良かった、それ故に主人公がただの無能に成り下がってしまったのはどうにかならなかったものか
6章
ローズクォーツの永年離絶
永劫の時を生きた吸血鬼の少女と唯一彼女を受け入れた少年の悲恋物語、ローズクォーツの永年離絶を通して伏見理央という少女の姿を描く章
闇子の命令によって恋することすら出来ない理央が物語の主人公になることでしか思いを伝えられないのが切なくその物語の最後が結ばれないものであったとしても伝えられればそれで幸セなのだという
彼女の姿は美しくもあった。ここに来て初めての分岐が起きる、彼女を受け入れることで救うか、受け入れないことで失うかを問われ、手が止まるのは必然だった
ここでも瑠璃の無力さが目に付いたがここまでくると魔法の本の束縛力の強さを実感した。
6章裏
ローズクォーツの終末輪廻
伏見理央ルート、無事理央と結ばれた瑠璃だったが彼女が記憶を失い、告白の翌日に記憶がリセットされることが判明する。それでも彼女を幸せにしようと頑張るがことごとく潰される瑠璃、
自分が記憶を失ってること、それによって瑠璃が傷ついてることに気付き絶望する姿に
最終的には謎の力(後に判明)によって伏見理央という存在は消され、瑠璃の記憶からもなくなる個別ルートという名のBADENDだった。
さらに「物語を曲げて少しの間でも彼とむ結ばれたことはハッピーエンドなんだ」と言う理央の姿にライターの「理央は絶対に幸せにさせない」という鋼の意思を感じ人の子じゃないことを確信した。
7章
ブラックパールの求愛信号
死んだ人間が生き返るブラックパールの求愛信号という本を通して瑠璃と汀が妃の死と初めて向き合う章
生者と死者どうやって相容れないという事実とそれでも少しでも可能性があるならという葛藤、ここまでずっと周りの人間に秘密にしていた兄妹の愛を言葉にすることでやっと妃の死と向き合う姿は主人公の成長という
物語の大切なピースだった。
最後に妃のことが好きだった二人はやっと向き合い始めることができここから時間が進んでいくんだなという切なさと安心感、汀と瑠璃の食えなくも親友と言える関係性にクスッと感じたのも束の間、
妃と理央が生き返えらせるというクリソベリルの粋な計らいに血の涙が止まらなかった。
8章
フローライトの自由落下
何故理央と妃が生き返ったのか、ローズクォーツで語られなかった理央のもう一つの真実と突如事故で死んだ妃と周りの人間との清算の章、妃ルート
魔法の本を作っていたのは遊行寺家であったこと、物語とは別に人物の名を持った本がありそれを開くことでその人物が現実に現れること、そしてその存在こそが理央と妃であることが判明する。
妃が瑠璃に震えながらも優しい声で嫌いだと、一人で幸せになってくれと、引きずるなという姿に涙が止まらなかった。そして誰よりもご都合展開がいやだったから、死者が聖者と相言ってはいけないと
分かっているからこそ自分の感情を殺してでもみんなのために動く姿は美しかった。泣きながらも最後まで瑠璃のことを「大好きだった」と過去の女として消えていく姿を僕は忘れることないだろう。君を好きになれて良かった
9章
ホワイトパールの泡沫恋慕
遊行寺家の過去が見える章、正直語るところは少ないが闇子に対して殺意を覚えた
10章
オブシディアンの因果目録
今まで深くは出てこなかった夜子と汀の出会いや妃が死んでからの一年、妃が死んだ理由が当事者の目線で語られる一番衝撃的な章、理央や妃だけでなく瑠璃までもが紙の上の存在だったこと、一年前に瑠璃は
妃のあとを追って自殺していたことが判明し驚かされた。
汀がお兄ちゃんとして夜子の心を開いていく姿はかっこよかった。
三章で開かれていたものがサファイアの存在証明ではなくオニキスの不在証明という主人公が好きな男への恋心を忘れ別な男を好きになる寝取られものの物語だったことが分かり、それを知った
妃は自らトラックに飛び出したことが判明する。一瞬の間でも他の男に愛を囁くなら死んでやるという彼女の一途さとそれを知って自殺を選んだ瑠璃の妃に対する愛情の深さ、弱さを改めて感じた。
ここで生き返らすという判断を取った闇子にまた殺意を覚えた。どれだけ死者を冒涜したら気が済むんだこのアマ...行き過ぎた怒りは声にでないことにも気づけた。
12章
ラピスラズリの幻想図書館
物語の終章、恋心拗らせた夜子がクリソベリルにそそのかれやらかす
何と言ってもかなたが強い、物語の改ざんによって瑠璃に憎まれ殴られながらも大好きだと言う姿に「お前がナンバーワンだ」と思わず心のベジータ登場、理央は空気に近かったので悲しい、汀の「自分の恋心を自覚しろ」と「殻にこもるな」と兄妹だからこそ言える言葉は兄貴だった。残留思念としてまた登場し「ちゃんと振られろ」とケツを引っ叩く妃がどこまでも彼女たちを案じているのだと泣いた。
瑠璃の無力さにイライラさせられることや他ヒロインに比べ夜子が霞むと思っていたが「主人公が夜子」という言葉で全て納得した。
この物語は今まで殻に閉じこもっていた夜子という少女が兄の言葉で恋心と向き合い、親友に背中を押され告白し、大好きな幼馴染に振られることで前を向き成長する切なくもあたたかい物語だった。