近年稀に見る傑作。作品レベルから見てもプレイ時間1時間という点から見ても無料という点から見ても是非一度プレイしてもらいたい。
事実は単純にして明快。
内容もありきたり。
しかしあの二行に籠められた数々の想いは、言葉にしないからこそズシンと相手に響く。
リアリティの喪失、彩りに欠けた毎日、緩やかな死、そして自殺。
本作はこれらの題材を不治の病を通して語る為、死生観について述べているように感じるが、これらのキーワードは現代社会のそこかしこで見られる。ニート辺りが典型だろう。今の世の中はQOLが低いと感じる人が増えているという事だ。
エンディングでこう思い至った時、私は感動と戦慄に震えたのだ。
最後にボイスの有無だが、私はボイス無し→有りとプレイしてボイス無しの方の優秀さに感動した。声が無いからこそ、BGMが抑えられているからこそこの作品はテキストは想像力を掻き立てる。この作品は「ナルキッソス」のタイトルに相応しくプレイヤーの感性に極限まで依存するからだ。水面に映った自分の姿に恋するナルシスのようにプレイヤーは作品を通して自身の想像力を眺め、感動する。だからこそボイスという「他者の感性」を排した方がより堪能できるのだ。