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ichi991さんの千恋*万花の長文感想

ユーザー
ichi991
ゲーム
千恋*万花
ブランド
ゆずソフト
得点
80
参照数
3876

一言コメント

なんというか優等生的作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

10年ほど前に『ぶらばん!』をやって以来ものすごく久々のゆずソフト作品。
あの時はあっさり飽きが来て、ちびちびと進めていましたが、見ないうちにすっかり人気のブランドに。
特に前作はかなり好評だったようなので、今作はいかにと思って臨みましたが、個人的にはとても好きな作品になりました。

シナリオは王道路線で、呪いに苦しむヒロインを救うために主人公や仲間が頑張るという流れ。
共通√であらかた決着をつけて、残った謎やら伏線やらを各メインヒロイン√で回収し、サブヒロイン√ではそれらはすっぱり忘れて日常にひたる。
残念な点としては、シナリオの核である「呪いとの戦い」が共通√でほぼ完結するため、少々物足りないというか、さっぱりしすぎな感じがありました。せっかくならもう少し広げてみても良かったのではないかと思います。
反面、小さくまとめたからこそ消化不良な部分も少なく、作中で示された謎や疑問についてはきちんと解答が示されており、ご都合主義パワーでねじ伏せたと感じるところはほぼなかったのは好印象でした。(全く無いとは言わないけど)
個別√での掘り下げの塩梅もよく、ヒロインたちの魅力が十分に発揮されていたと思います。
ただ、残った謎の回収もあった都合上、少々薄味だったように思うので、そこだけが残念。もっと長くヒロインとの日常を見てみたかったなあと思います。

キャラクターたちも好印象で、メインどころに不快なキャラは全くおらず、一方で悪役は同情の余地のない存在として描かれ、実際その通りなので、中途半端に情を持たせない悪役として良いキャラだったと思います。
また、個人的に主人公が好感のもてる性格付けだった点が非常に大きいです。昨今流行りのニヒルで斜に構えたような主人公に食傷気味だったところに、自分や他の人のためにまっすぐに頑張れる人物として描かれる本作の主人公は、大変爽やかでありました。やっぱり主人公はある程度熱を持っている方が好きだなと実感。

システム面はとても快適で、特にフローチャートは他の作品でも使われていましたが、本作のようにヒロインごとに分割されていると、見やすさもあってより使いやすいと感じました。

尖った要素こそないものの、全体に出来のいい作品だったと思います。個人的には同月発売の中では一番好きです。
流石に初心者の入門にとりあえず勧められるブランドだけのことはあるなと思わされる作品でした。