極力余計な先入観を持たないようにする為、事前情報をほぼカットしてでのプレイ。楽しめたか楽しめなかったかと問われれば、間違いなく楽しめました。ライターによって構築された1世界観、設定には素直に感嘆。また、もはや多くのユーザーが承知していると思うのでここで書いてしまいますが、ライターお得意のギミックも健在です。しかし、プレイ後に振り返って見ると、矛盾点とはいわないまでも気になる個所が多々見受けられてしまったのが残念としかいいようがありません。・・・これは私の理解力の無さのせいかもしれませんが。
打越氏の最新作ということである程度の期待はしてました。
と、同時に打越氏の前作であるEVEがあまりにもアレな出来だったので
不安も同じくらいありました。
失笑するしかない、都合のいい記憶喪失薬や変装マスク。
物語において何の意味も持たない見え見えな叙述トリック。
etc・・・
今作がダメなようなら打越氏のことは忘れよう
そんな意気込みでプレイし始めましたが、
どうやら不安は杞憂に終わったようでした。
一応ゲームの概略について少々。
基本は一本道で進むオーソドックスなADV。
共通ルートが終わると二つの主人公視点の内のどちらか
にお話が分岐します。
そして、二つの視点での物語を終えることであらたなルートが
開放され、いざ解決編が始まるといった感じです。
念のため補足しておくと
キャラ別攻略といった
ものはありません。
過去作のever17でもそうでしたが、今作も最終ルート
が全てといっていいでしょう。
もちろん、その前の2ルートも決してつまらないわけではありません。
が、物語全体でみれば、やはり最終ルートを引き立たせる為の
いってみれば前菜でしかなく、
ネタを仕込むためのルート、と言っていいかと思われます。
さてその物語について。
詳しい内容については記述しませんが、キーワードは自我と識閾下ですかね。
この2つを使って新しい世界を構築、物語を作り出したことは
素直に凄いと感じました。
そしてその新しい世界を使って生み出されたΨ能力。
言ってみれば超能力にしか見えないそれも、
新しい世界を拠り所とした能力として、
理論立てて説明されていたのが好印象でした。
・・・まぁ作中で説明されていたΨ能力では説明がつかない、
或いは理解できない現象が起きていたことは事実ですが。
そして物語について言及する際にかかすことの出来ない、
ご存知ライターお得意の物語を反転させてしまう叙述トリック。
多くのプレイヤーが期待していた要素だと思いますが、
これもうまく仕掛けられていたと思います。
少なくとも一度は素直に驚くことができるでしょう。
しかし、ここでなにより特筆しておきたいことは、
叙述トリックが使われるということが
事前にプレイヤーの頭に刷り込まれていたにも関わらず、
見事にプレイヤーを騙しきったことです。
過去作ever17が評価された重大な要素として
いうまでもなく、叙述トリックの成功があげられるかと思います。
ゲームという媒体を逆手にとった叙述トリックそのものが
素晴らしかったことや、
叙述トリックが物語そのものを反転させるように
巧みに設計されていたことは、
プレイヤーの多くが感じたことだと思います。
しかし、成功の一因として何より大きかったのは、
叙述トリックが叙述トリックとして
最終ルートまで極力気づかせないように
設計されていたこと
ということだと私には思えます。
恐らく事前情報なしでever17をプレイした人と
ある種の仕掛けが組み込まれているという前情報をもってプレイした
人ではプレイ後における印象に差があるのではないでしょうか。
ぶっちゃけ、私は叙述トリックは叙述トリックだと事前に分かって
しまう時点で半分以上失敗していると、思ってます。
・・・余談ですが、ライターの前作EVEは正にそれを体言している作品で、
どうにもいかんともしがたいものでした。
しかし、今作においては叙述トリックが仕掛けられていることを
念頭においておいたとしても、
やられたっ
とライターの思惑に一度は嵌ってしまうことでしょう。
ここまでは良かったと思われる点について書いたので
以下は悪かったと思われる点や気になった点等について。
まずはいうまでもなくCGです。はっきりいってひどいの一言。
あれではたとえテキストで魅せたとしても台無しにしかなりません。
まぁひぐらしやらなにやらをプレイしていれば、
そんなものか・・・と意識の外におけるので
私は途中から気にしないでプレイできました。
仮にも商業でこれはないだろうとは思いましたが・・・。
続いてテキスト・・・というかキャラ同士における会話シーン。
主に錬丸ルートにおける会話シーンで顕著なのですが、
冗長というか、くどすぎるというか、ぶっちゃけつまらない。
と、いうのもこの会話シーン。
その内容が主に心理学用語の説明のために設けられているに過ぎないからです。
もちろん全ての会話がそうであるわけではないのですが、
その比率が非常に高い。
ちょこちょこと必要最低限の説明ならまだいいのですが・・・。
逆にキャラクターを立たせる為の会話や
キャラ同士の人間関係を深めるため等のコミュニケーション的な会話などが
必然的に少なくなっています。
・・・キャラ先行型のゲームではないのでそのことで文句をいうつもりはありませんが。
ただ、少なくとも私は12rivenというゲームを楽しむために購入したので
あって、打越教授による心理学概論を受講したくて購入したのでは
ないということです。
この辺もう少しなんとかならなかったのか疑問に思います。
例えば、他作品なのであれですが最果てのイマのように単語
をクリックすることで、その用語説明を辞書のように見る事ができる
ようにするとか・・・。
あるキャラなんかは用語説明シーンを無くすことによって
かなりセリフを節約できるんじゃないかと思ってます。
最後に自身の内で消化不良をおこしていることをつらつらと。
以下は完全なネタばれです
やはりまずはΨ能力。
作中で一応その原理については説明されてはいるのですが
それでは説明つかない現象がいくつかあるんですよね・・・。
ただ、Ψ能力だと思われていたマインドフュージョンというものが
厳密にはΨ能力ではないと作中語られる部分もあったので、
説明つかない点はそれこそただの超能力と考えてしまうことは
可能といえば可能なんですが・・・。
思考停止っぽくてどうにも。
オープニングの霧寺と鳴海のやり取りは
瞬間移動とスリ的能力を駆使できれば可能な現象・・・か?
現世界における20日12時以降のミュウと錬丸の行動。
錬丸はエクリプシーになってるはずですし、ミュウは
その状態の錬丸をどうしたのか?とりあえずどこかに匿って
自分だけタワーに向かったのか?
A世界におけるミュウの髪の色がいきなり変わってしまうのは何故?
それまではウィッグ或いは茶色に染めていたってこと?
そしてただの心境の変化で変えてしまったのか・・・?
人はそれぞれによって認識している色が違うかもれないという
ユユの会話となにか関係するのかと思いましたが、
そうではなさそうですし・・・。
ときおり訪れる二人の主人公のデジャブは
錬丸の場合はA世界での幾度のシミュレーションの結果で、
鳴海の場合はマイナによる一時的な鳴海の識閾下との同調でいいのかな・・?
ごく短時間であれば可能だとマイナは言及していましたが・・・。
鳴海視点におけるはじめの記憶喪失オメガ=BW=プレイヤーということで
いいのかな?
そして覚醒オメガ=全てを知ったBW=プレイヤー=新しい自我
ということ?
ただそうなると最後に行われたA世界での錬丸と
現世界で新しく生まれた自我との統合はどうなってしまったんだろう・・・。
マイナと違って24時間しか自我と識閾下の差がないので何も問題なく
A世界の錬丸がすんなり統合されたのかな・・・。
まだまだ色々ありそうですがきりがないのでとりあえずこの辺で。
上記のように色々と気になる点が多々あるのは確かです。
しかし、同時に楽しめたのもまた確かです。
ever17という過去作を意識せず、過大な期待をせずにプレイしたせいもあるでしょう。
不明瞭な部分が多いため評価が人によっては低くなることも理解できます。
ただ私はそれを踏まえた上で、
それ以上にライターが作り出した世界観、設定、そして叙述トリックを
考慮してこの点数をつけさせてもらいました。
だらだらと駄文失礼しました。
・・・エピローグはギャグってことでいいですよね;