いわゆる少し前に流行った?キレて壊れた人間失格テイストな登場人物達が織り成すクローズドでハートフルな学園アドベンチャーゲーム。言うまでも無く心温まるほうではありません。そして、ゲームと言ったは良いものの、ルール違反は多いけど、残念やっぱりそれは仕様です。だってゲームといえどもそれはそれ。現実はいつだって理不尽かつ不公平。相手によって適用されたりされなかったりするのです。世界は悪意で満ちている。ああそれでもやっぱり世界は美しい。嘘だけど。なんてね。
まず初めに言っておかなければならないことは、公式にあるキャッチコピーと
実際のゲーム内容とで、少しばかり食い違いがあるということでしょうか。
公式にあるストーリー概要を見ると、
一見まるでプレイヤー同士による騙し合いからなるゼロサムゲームが
繰り広げられていくかのように錯覚してしまうかもしれません。
が、実際そんなことはないんですよね。
というのも、いわゆる死刑執行書となる呪いのカード。
ルール上それを受け取ってしまった場合、その災厄から逃れるためには
その解除条件を満たすか、別の誰かにそのカードを押し付ける必要があるわけです。
しかし、一度に配られるカードが少数であり、かつ大抵の場合
誰がカードを所持しているかが周りに判明してしまうため
他人に押し付けることが難しく、また例外はあれど、
自らの意思で他人にカードを押し付けることを良しとしないため、
プレイヤー同士の争いの火種になることが無いという事態に
陥ってしまうのです。
なのでテーマとしては、いかに他人を蹴落として生き残るかというよりも、
いかにしてその解除条件を達成して災厄から逃れるか、
ということに主人公達が奮闘する内容になります。
物語の構成としては、章毎にカードが配られたヒロインをフォーカスして
話が進んでいく形になります。その中でヒロインのバックグラウンドや
主人公との関わりなどが綴られていき、それぞれの結末を迎えていくことになります。
といったわけで、俗に言うデスゲームを期待してこのゲームを購入してしまうと、
肩透かしを食らうことになってしまうの間違いないでしょう。
なので、一見して気になっている方は、色々な意味で体験版をプレイすること
をお勧めします。
長くなりましたが、プレイするに当たっての前置きは以上。
以下は私的な感想になります。
一言コメントにも書きましたが、言ってみればこの作品はあれです。
ちょっと前に流行ったあれですね。
古くはライ麦畑から来るものだと勝手に思ってますが、
俗に言う切れて壊れた人間失格ものです。
知ってる人なら佐藤友哉、舞城王太郎、今は見る影もありませんが
昔の西尾維新などの作風と思ってもらえればイメージしやすいかもしれません。
エロゲではCARNIVAL辺りでしょうか。あくまで作風です。
というわけで、それらを以前好物としていた私は、
JOKERというこの作品をどこか懐かしみつつも、中々に楽しめたのでした。
つっこみどころも多かったですけどね。
不満点としてそれは後ほど。
なにはなくとも、この作品を語る上で最も重要な要素はなにかといえば、
そのテキストにつきるかと思います。
というか99%がテキストになるでしょう。
テキストが全てです。これを受け入れるかどうかによって評価が
180度変わってくると思います。
そして、そんなテキストを端的に表現するならば
頭が悪い
ということになるかと思います。
それは、許容できない人にとってみれば、
悪い意味で頭が悪いと取るでしょうし、
許容できる人にとってみれば、
良い意味で頭が悪いと取るでしょう。
私は幸運なのか不幸なのか後者に属するタイプだったようです。
特筆すべきはそのテキストから紡がれるキャラクターが、
そのテキストの頭の悪さと相まって実に狂気に満ち満ちていたということ。
例えば、開始してわずか数分で主人公のナチュラルな壊れっぷりが
わかることでしょう。ああ、コイツはダメだな、と。
そしてそんなキャッチーな主人公を私はとても気に入りました。
余談になりますが、私はヒロインよりも主人公に
その好き嫌いのウエイトを置いていたりします。
また、そんな主人公のナチュラルな壊れっぷりと比類して
見た目からして既にぶっとんでいる敵キャラの比屡間。
黒幕であるジョーカーを差し置いてその存在は際立っていました。
これだけぶっとんだ敵キャラは、私がプレイしているゲーム傾向も
あるかもしれませんが、中々記憶にないです。
古いゲームになりますが、MOONと言うゲームの高槻という
極悪キャラを思い出しました。
一方、男性勢の個性が強いため、どうしてもヒロイン勢の影は
薄くなりがちだったかもしれません。
憩や朱比香などはそこそこいいキャラしていたと思いますが。
まぁ零と憩はベストカップルといわざるをえないところでしょうか。
そんなこんなでその独特のテキストから紡がれる台詞回しとキャラクターには、
凡人には持ち得ないある種のセンスを感じてしまったわけですが、
それでもやはり気になる点がないわけではないので、それを一つ挙げておきます。
それは、どうみても一文ですむはずの文章にも関わらず、
意味もなく文節ごとに分けて記述している箇所が散見されること。
例えを挙げるとすると以下の様なものになります。
私は。
甘い物が。
好きです。
表現方法の一つとして、あえてそうしているのかもしれませんが、
正直、どうでもいいような一文を、わざわざそのように記述する
意味が理解できません。
私は甘い物が好きです。
これですましてしまって、なにか問題があるのでしょうか?
その点は少し気になりました。
もっと突っ込む所あるだろうと言われるかもしれませんが、
テキストについては以上。
以下シナリオ面について。
ここからは主に不満点になります。
お話の構成としては、少しばかり前述したとおり、各章ごとに
ヒロインが設けられており、そのヒロインに配布されたカード条件を
如何にして満たすかに腐心する内容になっています。
が、言ってみればその繰り返しに過ぎないため、
初めの内はまだ良いのですが、章が進むごとに先が読めてしまい、
マンネリ感がどうしても出てきてしまうのは残念。
少しネタバレになってしまいますが、ヒロイン毎に持つ背景は異なりますが
結果的には同じ道を辿ることになるので。
まぁ、お話の構成的にはどうしようもないことなんですけどね。
続いて主に黒幕関連について。
まず、JOKERがどのようにして生徒達を監視していたのか。
監視カメラがあったとして、なぜその現実にいままで気づけなかったのか。
また、そもそもどのようにJOKERはそれを監視していたのか。
納得できる説明がなかったように思います。
そしてなにより最大の謎になるのですが、プレイし終えても結局ジョーカーがどこの誰だったのか、なぜこのようなことを行ったのか、その理由や背景がいまいち不明瞭でした。
私は誰でしょう、とラスト付近でジョーカーに呼びかけられ、
主人公も解答するわけですが、その後の展開を見る限りそれは間違った解答でした。
過去関連の記述を読み直せばわかるんでしょうか。
これは自身の理解力の問題かもしれません。
といったわけで、個人的にはテキスト面よりもむしろシナリオ面で気になる点が多く、
結局エンドロールを迎えてもカタルシスにかける内容に終わったのが残念でした。
なんだかんだで、飽きることなく最後まで読み続けていられたので、
楽しめたか楽しめなかったかでいえば楽しめたのですが。
ただ締めの部分に理解も納得もできず、物語としては
竜頭蛇尾といった印象になってしまったのが残念でした。
まぁその辺については次回作にご期待ということで終わりにしておきます。
以上。
イイナズケとイオ○ズンどちらを選びますか、と聞かれたら。
同じくイイナズケを選びます。