綺麗に彩られた造形と攻略ヒロインの多さ、それに付随するボリュームに富んだ内容から、非常に丁寧に作られた学園物かと一見思わされるかもしれません。しかし、それはぱっと見の印象でしかなく、実態はむしろその逆ではないかと気づかされました。つまり、これは丁寧に作られた大作などでは決してなく、単にシェイプアップすることをよしとせず、ただ肥え太っただけの代物にすぎないのではないかと。
などと独白調のコメントはさておき。
私がこのゲームに対して持ちえた感想を一文で表わすとしたら以下のようになるかと思います。
それはつまり
まったく洗練されていないな
ということ。
というわけで、お話全体について。
とにもかくにもバランスが非常に悪い。
お話を作る上でもっとも基本的なこと。
それは、いわゆる起承転結といわれる骨格に沿うことだと思います。
が、その構成配分からしてこのゲームはまずおかしいのです。
そのことを端的に表わしているのが共通ルートの異常な長さと
それに見合わない個別ルートの異常な短さ。
それまで何時間も長々とヒロイン勢と面白おかしく日常を謳歌していた
共通ルートに対し、晴れて付き合うようになってみたはものの、
その数十分後にはエンドロールを迎えてしまう個別ルート。
そしてその内容といえば、18禁ゲームとしてみれば
むしろ潔いとまで言える、Hシーンに続くHシーンそしてエンド。
いわば個別ルートは、各ヒロインとのHシーンのために
設けられたにすぎないといっても過言ではないのです。
共通ルートで丁寧に図書部員としての各キャラとの関係性を、
日常を通して描いてきたにもかかわらず、
いざ恋愛関係になった後のヒロインと主人公の関係性については、
描くことを全くに放棄してしまったかのような有様。
ここで私が言いたいことは必ずしも
ようやく付き合い始めたのだから、もう少しイチャラブさせてください
ということではありません。
主人公とヒロインが紆余曲折のすえ付き合い始め晴れてハッピーエンド
というようなお話は別段珍しいものではないですし、
付き合って即エンドという点だけを見れば
このゲームも似たりよったりな終り方といえるからです。
が、その結果は同じでもその両者における内容面については
やはり大きく異なっているのです。
それはなぜか。
そんなこと言うまでも無く、その場合付き合うまでの二人の過程に
焦点を当てて物語が描かれるからです。
だからこそお話として成立するわけです。
翻ってこのゲームはどうか。
たしかに付き合うまでの過程として、共通ルートがあるのかもしれません。
しかし、それはあくまで図書部という集団活動を通しての関係性が
描かれているだけであり、個人個人としての関係性が
描かれているというのには些か弱いといわざるをえません。
そのため、いくら主人公とヒロインが個別ルートに入ってからお互いを熱烈に好きだと言い合ったところで、
プレイヤー側としては唐突感が拭えず、すぐにエンドを迎えてしまうこともあり、
消化不良を起こしてしまうわけです。
そしてその結果どうなるかと言うと、この手の学園モノでありがちな
どうして主人公がヒロイン達から好かれているのかわからない
というモノをさらに上回る、
どうして主人公がそのヒロインを好きになったのかわからない
という笑える状況さえも生まれてしまうのです。
それは決してヒロイン自体にその魅力がないから、というわけではなく。
まぁこれは、主人公がある種達観としたキャラ付けに
設定されていることにも、一つの要因としてあるのかもしれませんが。
はっきり言ってしまえば。
物語冒頭から図書部結成までのお話を残し、
それ以降のほとんどの共通ルートを削除、
そのまま個別ルートに入ってエンディングを迎えたとしても、
元のお話とさほど大差ないんじゃないかと思います。
それはつまり、実際のプレイ時間の大部分を占めるはずの文章が
物語の構成上あっても無くても大して変わらないのではないか
ということを意味します。これは明らかに異常です。
で、あればその部分についてどうすべきだったか。
当然のことながら無駄な部位は削り、必要な部分は付け加える
といったような工程を経てシェイプアップすべきだったはずです。
なにせ一度でもプレイしたら、この構成上の歪さに気づかないはずがないレベルなのですから。
実際、二周目以降のプレイについてはその長大な共通ルートを
スキップする羽目になるわけで、その分量割合から
個別ルートをプレイする時間よりも
スキップしている時間のほうが長いなんてことにも
なりかねなくなってきます。
いわゆるサブヒロインに関してはそれが冗談でもなんでもなく
とあるキャラに至っては個別ルートに入った途端2ヶ月経過
気づけば恋人同士でした、なんていうのもありました。
あくまでサブという位置づけなのでそこはご愛嬌
といったところなのでしょうが、むしろ中途半端さを助長させるだけ。
正直キャラクターがもったいないし、ちょっとした水増し程度にしか思えませんでした。
そう水増しです。
結局のところ、この作品はただそれにつきるんじゃないかと私は思っています。
上記にあげたサブヒロインについてもそう。
一人の例外を除いてエンディングがメインヒロイン毎にもうひとつ用意されているのもそう。
所謂トゥルールートが用意されているのは問題ありません。
むしろ大歓迎です。
しかし、それをすべてのメインヒロインにとってつけたように
用意する必要ははたしてあったのか。
もしやるのであれば徹底的にやるか、あるいはやはり各ヒロイン一つのルートにまとめるべきだったはずです。
長すぎる共通ルート。とってつけたようなサブヒロインと
これまたとってつけたようなメインヒロインのトゥルールート。
たしかにそれだけ詰め込めば、容量的に見れば、大作としての体裁は整うのかもしれません。
しかし、それでは単にまとめるべきところをまとめていないというだけで、
ただ冗長なものでしかありません。
その一方で個別ルートだけは異様に簡潔なのです。
これをちぐはぐといわずなんといえばよいのでしょうか。
あえて過去作と比べるのならば、その完成度の低さは群をぬいていると
いえるでしょう。
容量を増やすだけならさほど困難ではありません。
なるだけ無駄な物を増やすだけでいいのですから。
それはさながら文字数の多い課題レポートのように。
そして今、私が書いているこの感想文のように。
ただそれでも確かにこのゲームにも救いはありました。
それはライターのテキストで表現されたヒロイン達との
日常シーンは確かに楽しかったということです。
共通ルートのその長さに耐えられたのもまさにそのことが
大きかったように思えます。
散々言いたいことを言ってきましたが、
これだけは最後に付け加えさせていただきたいと思います。
そして、それが私が今書いている感想文との大きな違いと
いえるのでしょうね。
・・・・・・シーンスキップ機能さえあればもう少し印象がかわったのかも
しれないのになぁ。