「千年前から好きだった」そんなキャッチコピーで私達を魅了した重厚で切ない恋物語はそこにはなく。あったのは姿だけ同じな登場人物達によって作られた別の何か。originとは言いえて妙。その名の通り全く洗練されてない。濃厚な物語はどこか軽い物語になってしまいました。……ああなるほど、これがライトノベルだ。
原作の久遠の絆は、自身初のギャルゲーだったりします。
そういったわけで、どうしても思い出補正が入ってしまうかもしれません。
以下ご容赦ください。
発売前の情報から、原作とはだいぶ様相が変わっているなとは思っていましたし、
ある程度は覚悟の上でした。
しかし、まさか作品の核となるテーマまで変わってしまうとは思ってもみませんでした。
色々と大人の都合で原作の一部が使えなくなってしまったというのは話に聞いていました。だからこそ、その部分をリファインして、新しい「久遠の絆」を作ろうと思ったのだと。
しかし、それはこちらの勘違いだったようです。
はっきり言うなら。
もし作品のタイトルが、その物語のテーマを表すものだとしたら、
今作は間違いなく「久遠の絆」ではありません。
登場人物達の絆が、どうでもよく描かれてる、とまではいいませんが、
明らかにそこは今作の焦点ではありません。
ここだけは声を大にして言っておきたいです。
原作のような切ない恋愛物語を期待しているのであれば、一度購入を再検討したほうがよいと思います。
簡単に両者の違いを言うと、
原作が、千年前の過ちから始まる悲恋とそれに巻き込まれた人々を描いた物語だとすれば、
今作は、神代の天津神と国津神の争いを起源とした神と人との争いを描いた物語といえると思います。
それでも、単純に物語の出来がよかったのであれば文句はないのですが、
残念ながら、別作品として比較したとしても、明らかに質が劣ってるんですよね。
何故そんなことになってしまったかと考えてみると、
それはつまり中途半端に原作を取り入れてしまったこと、だと思います。
以下その弊害をいくつか書いてみようと思います。
・原作のCGを無理に入れようとして明らかに整合性に欠いてしまっている。
・受け皿となる現代編だけが原作とほぼ同じなため、それまで描いていた
平安、元禄、昭和からの繋ぎの部分でこれまた整合性を欠いてしまっている。
・上記の点で特に割りを食ったのが汰一。本来原作であった部分がばっさりカット
されてしまったせいで、現代編での万葉と武に対しての感情や行動が
?になってしまっている。
おかげで主人公との対決場面などが盛り下がること盛り下がること……。
・そもそも現代編の主人公はなぜさっさと殺されなかったのか。
平安編の主人公については説明もされてるのである程度納得できます。
しかし、現代編に限っては主人公の生存はむしろ邪魔にしかならない。
ちなみに原作では太祖光臨のための器として闇の皇子が必要だった。
大魔縁という設定はなく、あくまで器は主人公だった。
(代替品としての汰一はいましたが)
と、書けばキリがないのでこの辺でやめておきます……。
作りこみの甘さとあって、全体的にチープ感が漂います。
原作になかった、魔眼や九尾合体の必殺技、大魔縁やかまきり女のCGなどが
それに一層拍車をかけます。
ただそれでも物語全体でみるのではなく、章ごとに見るのであれば
平安編はその時代のどろどろとした政治の世界を垣間見れて、
新鮮で楽しめたといえるかもしれません。
ただ、以降の章はどんどん尻すぼみしてしまうわけですが……。
昭和編はいくらなんでもやっつけすぎる……。
超絶ネタバレですが、最後にエンディングについて。
TRUEルートがまさかのハーレム?ルートで驚きました。
いや、正確には違うのですが、5Pシーンがあってびっくり。
素直に薙にもHシーンを用意したのは賞賛したい。唯一の収穫といってもいいかも。
ただ、ここでもハブられる汰一は憐れすぎて泣いた。
原作にあった万葉TRUEがないのには賛否両論?ありそうですが
個人的にはなくてもよかったかなと思います。
たとえあったとしても、今作の流れでは感動できなかったと思うので。
とまぁプレイ後の感想はこんな感じです。
しかし、再臨章の時も思いましたが、
やっぱり久遠の絆は、初期作で完成されているんだなと再確認できました。
同じ原作者でもこれとはね……。
高貴で美しく神秘的だった万葉は死んだのだ……