Leafそして丸戸氏における渾身の最高傑作。IC発売から大分待たされた感はありますが、その開発期間の長さにも頷ける結果でした。ライターにより構築された物語、文章、人物描写はどれをとっても文句の付けようのない出来で、またそれらを彩る音楽、声優さんの熱演など、演出面も素晴らしかった。ここまでクオリティの高いモノに仕上げてくるとは、なんだかんだで流石老舗メーカーですね。
以下ゲーム内容についてというよりも担当ライターについて
事前情報が無いほうが最大限にこのゲームを楽しめると思うので、あまり内容に
触れないような個人的感想なものを。
このライターの書くテキストが個人的に好きだったりします。
キャラ同士のちょっとした掛け合いなどで見られるウィットのある会話。
パロネタやコピペネタなどの面白さにはない、自然な会話の中での機転のある切り返し。
普段なら億劫に感じてしまうような日常シーンですが、
このライターに限っては逆で、もっと読んでいたいという気にさせてくれます。
しかし、何よりこのライターが優れていると感じるのは、
そのテキストから描かれる人物だと思っています。
キャラじゃなくて人物。つまり記号におんぶ抱っこでは決して無い。
もっというならきちんとキャラがキャラクターとして立っている。
それは決してビジュアルだけの、どっかから持ってきたコピペキャラなどではなく。
どこかのミステリー作家が後書きで言っていました。
キャラは萌えさせるものじゃない、立たせるものだと。
正直、あまり思い入れのある作家ではありませんでしたが、
その言葉にはちょっと感じるものがありました。
そもそもキャラなんてものは、きちんとキャラが立っていて
話が面白ければ魅力的に描かれるし、自然に萌えるものじゃないかと。
まぁ、そんなことは当たり前のことなのかもしれませんが、
その当たり前のことを普通に行っているのがこのライターであり、
だからこそ、この業界ではある程度名の知られたライターになったのだと思います。
WHITE ALBUM2の登場人物達についても、それぞれがキャラが立ち、
魅力的に描かれていました。
一例として、主人公。
はっきり言って女性関係の点からいえば、どうしようもない奴かもしれません。
ただそれでも、何故女性陣がこの主人公に惹かれるのか、その点については納得
できるかどうかはともかく、理解できる描写はされています。
その惹かれていく過程での説得力を物語として持ち合わせています。
その好き嫌いは別として、主人公としては確かに人間的魅力があったと私は思います。
駄目な奴だけど有能で、矛盾しているけどなぜか一貫性がある。
そして、そういった矛盾を抱えているのは主人公だけじゃなく、登場人物全てに
共通する点でもあります。
結局のところ、この物語の根幹にあるものは、その矛盾した感情であり、
それらを抱える登場人物達による葛藤を描いた作品とも言えると思います。
これまたどこかのミステリーの登場人物が言っていた台詞で、
矛盾が綺麗って言いましたでしょう?
というのがあったのですが、それを思い出しました。
確かに矛盾している。
けれどもだからこそWHITE ALBUM2は、綺麗な物語だったのだなと。
最後に点数について。
心情的には内容的にも(18禁ゲームとしても想像を遥かに超えて充実していた)満点をつけたいところですが、これから先により良い物が出てくることに期待し、94点ということで。
なんといっても、ここまで全ての面でクオリティが高い作品はほんと稀ですからね。
しかし、麻理さんだけヒロインとして場違いというか浮いちゃってると思うのはキノセイか? 作風的になにか・・・・・・。いや好きですけどね。