You might say it was not love. But they would say...it was certainly love.
物語を描くことを放棄し、キャラクターとその作られたキャラクターを
生かすシュチュエーションのみに心血を注ぐ作品が大多数を占める現状において、
今作は残念ながら異色作としか言わざるを得ないのでしょう。
さて、そんな本作。
キャッチコピーは青春群像劇とありますが、まさにその通りの作品でした。
一組の男女を主軸とし、そこから広がる人間関係を、
互いの視点から丁寧に物語を綴っていく。
その、圧倒的なまでの人物描写は、ゲームというよりもむしろ、
小説に近いものがありました。
では、果たしてその出来はどうだったのか。
物語は、主人公達が過去に犯してしまった2つ出来事を背景としたすれ違いと、
そんな主人公達に恋愛感情を抱いてしまったことにより生まれる三角、
あるいは四角関係を主題にしてスタートしていきます。
丁寧な人物描写によって肉付けされた重厚な物語には、
ライターの物語を作るんだという心意気がとても伝わってきましたし、
美麗なCGやBGMにも後押しをされたこともあり、
さほどだれることもなく初回のスタッフロールを迎えることができました。
が、しかし。終わってみて、ふと思いました。
たしかにとても丁寧に作られているし、完成度は高いかも知れない。
けれど、果たして面白かったのかと問われたとき、面白かったといえるのかと。
もし、これが小説だったら、あるいは漫画だったら、あるいはドラマだったら、
果たしてスタッフロールまで読み進めることはあったのか。
・・・おそらく途中で読むのをやめたでしょう。
前述のとおり、登場人物達の恋愛関係の縺れが、主に描かれていくわけです。
しかし、三角関係を含めた恋愛模様を描くには、この作品には致命的なものがありました。
というのも、この主人公達。
お互いにお互いのことにしか、本質的な意味では眼中にないんです。
八坂典史は槙島祐未にしか興味は無く、槙島祐未は八坂典史にしか興味は無い。
なので、どんなに他のキャラに言い寄られたとしても本質的な意味では揺らがない。
これでは、いくら三角関係を描こうとしたところで、成り立つわけが無く、
恋愛ドラマとして盛り上がるわけがないですね。
某鳴海さんとは大違いの一途さです。
そんなこんなで、作品のタイトルにも納得いかないまま、消化不良でプレイ終了
・・・・・・するところでした。
そして現れた、グランドルート。
それは、いままでに描かれたモノに対しての、アンチテーゼとでもいえるものが
紡がれた物語でした。つまり、恋ではなくそれに近い何かの物語。
そして恋ではなくもっと、主人公達の本質に関わる物語。
騙されました。とどのつまり、作者が描きたかった物語はこちらだったのでしょう。
それまでの物語が、面白くないわけです。
おそらく作者は、意図して、面白くない物語をわざわざグランドルートの前に
もってきたのでしょう。その描きたかったテーマのために。いわば踏み台として。
それはゲーム中の主人公の以下の言葉にも表れていると思います。
「約束したんだ。愛とか恋とか幸せとか夢とか・・・そんなくだらないものの向こうにあるなにかをみると!」
全てのルートを終えた今ならば、言えます。
青春群像劇として、その作品タイトル名を見事に表現した、期待通りの作品でしたと。
以下不満点。
グランドルート前の3ルートは2ルートにまとめてほしかったです。
伏線的にもチョコレートの件と弟の件とで、ちょうど2ルートでよかったはず。
さすがにすこしだれました。