輪廻転生を繰り返すヒロインを一途に想い続ける主人公が魅力的
輪廻転生をテーマにしたエロゲです。もう一つこのゲームのキーワードは、記憶喪失です。非常に楽しんでプレイすることができました。
繰り返しになりますが、このゲーム、テーマは輪廻転生です。ということでヒロインが何度も死ぬことになりますから、死を目前にして一つの生と向き合うような、いわゆる死生観的モノとしてはあまり期待はしないほうがいいかもしれません。
ところで、このデアボリカというタイトルですが、これはこの作品の世界設定の一つで、人間とは違う一つの種族のことです。デアボリカとは人間よりも高い身体能力と治癒能力、不老長生の体を持ち、場合によっては凶という従僕を作る事の出来る種族のことを表し、作中では人間に対して迫害を加える種族で、主人公のアズライトもデアボリカのうちの一人です。が、アズライトは人間にたいして危害を加えることをよしとせず、人間を守るために戦って放浪しているので「同族殺し」のデアボリカとして名前を知られています。
設定の話はこれぐらいにして、本編の話に移りましょう。
このゲームの中で特徴的な展開として第一に挙げられるのは、前半部分、主人公が同じ魂を持つヒロインと出会いと別れを繰り返すということでしょうか。そしてこの出会いかた、別れかたと言うのがまた作っている側の工夫が感じられる構成で、面白かったです。輪廻転生がテーマである以上、これがヒロインだな、というのはわかるのですが、それ以上にこの先どうなるのかということが気になる展開もありますし、いつ二人がコンタクトを取るのかということを見守るような感覚もあり、面白かったです。ちなみにここもまた個性的でよかったのですが、このヒロインというのが人間であることから、生まれ変わりや時間の経過によって主人公とヒロインの容姿や性格が変化することがあります。
後半部分ではヒロインの生まれ変わりはなく、同じヒロインとの出会いと別れというものはないのですが、アズライトたち自身の問題にも目を向けて、アズライトの友人であったデアボリカとの対立やアズライトの記憶の問題、そして人間であるヒロインとデアボリカであるアズライトが恋愛をすることに問題はないのかということを軸に展開していきます。ここらへんの展開は王道といった感じで安定した面白さを持っていたと思います。そしてこれは本編にあまり大きな関わりはないことなのですが、アズライトが生きている長いときの中で、人間側の文明の変化によりだんだんと人間側にデアボリカに対して抵抗する手段が生まれてきたという描写もなかなか興味深かったです。
ストーリー全体を通して。このゲームで魅力的なのは、やはり主人公とヒロインのキャラクター、そして関係性でしょう。主人公はヒロインにたいして一途でやさしく、ヒロインは常に笑顔で、主人公にたいしての好意をよく表現してくれるようなキャラクターです。デアボリカとの対立を深める人間という暗い世界観、よく死ぬ登場人物という要素を持ちながらゲーム全体の雰囲気としてはそこまで暗くないのは、ひとえにこの二人のキャラクターがあってこそであったと思います。
アズライトと関わりのあったデアボリカたちもまた魅力的でした。デアボリカ自体は人間をなんとも思っていないような種族ではありますが、デアボリカや凶たち同士の関係性となると全員が粗暴で攻撃的というわけではなく、豪快なのがいて、面倒見がいいのがいて、真面目なのがいて、愉快なのがいてと見ていて楽しくなったり、切なくなったり、非常によく描写がされていたと思います。このメインのデアボリカたち全員が、純粋にアズライトにたいして敵対しているというわけではないのもよかったですね。
最後にシステムの話。このゲーム、なんといっても昔のゲームなので、最近のゲームと比べてしまうとシステム面はかなり不便です。まず一番はバックログがありません。自分は結構バックログで振り返りながらやりたいタイプなので、これは不満点でした。次はBGMがループしないこと。この点についてはプレイ中に離席するときはシステムのセーブロード画面にいけばBGMが止まるようなので、プレイする場合は覚えておいて損はないかと思います。昔のゲームというのもあって、演出面が弱く感じられたのもちょっと残念でしたね。
まとめとしては、昔のゲームという点で最近のゲームに比べれば弱い点はあるものの、ストーリー性やBGMなど時代が関係ない点では総じて高いクオリティでまとまったゲームだと思います。昔のゲームということでとても安く入手することができますし、絵柄やシステムに抵抗がなく、興味があるのならやって損はないように感じます。