挑戦作。こういうエロゲがもっと増えることを楽しみにしています
個人的には文句なく面白かったですが、文句がある人も多く出るだろうことは容易に予想できる、紛れもない挑戦作であったかなと思います。
なによりも人を選ぶことになるだろう本作の特徴は、化学、物理学系の知識、うんちくが文中のいたるところに散りばめられているところでしょうか。これは世界観説明だけではなく戦闘描写中など、本当にどこにでも出てくるので、辛い人にとっては結構辛いでしょう。これらの説明が逐一挟まれることで、無駄にテンポを悪くしているという意見も散見されるようです。自分はあまりそういったことは感じませんでしたが、戦闘描写中など、個人的には細部まで理解しようとしてもいなかったので、そのように適度に読み飛ばしていったほうがむしろいいのかもしれません。
この作品以外でもわりかしあることですが、わからないことはわからない、小難しいことは小難しいである種作品全体の雰囲気作りとして楽しめることが、大切になってくるのではないかなと思います。
そして肝心のシナリオは硬派ですが、これまた癖が強いなといった感じでしょうか。自分の解釈が間違っているという可能性も十分にありますが、実際は単純なものを本格SFとして仕立て上げた結果複雑になってしまった、そういう印象を受けます。
しかし、序盤ではなにが起こっているのかさっぱりわからなかったものが、中盤、終盤と話が進むにつれだんだんと把握できるようになっていくその構成は見事といっていいでしょう。伏線を追っていく、というのとはまた少し趣が違いますが、合う人ならば、やればやるほどこの作品の面白さにハマっていくような感覚が味わえるかと思います。しかしながら、必然的にオールクリアを要求することになるこの作品と、用語が頻出するテキストや持って回った言い方を好む主人公とはあまり相性がよくないというのがまた人を選ぶ要素になっているので、注意が必要です。
SFと関係ないところでは複雑なところはなにもなく、主人公が復讐のため、人間のため、かつての仲間を殺していくというシンプルなものでした。かつての仲間という点では、過去の回想もしっかり入り、しっかりと全員キャラも立っていて、人を選ぶようなところはないように思います。
かつて仲間であったとはいえ、全員が一枚岩というわけではありません。やたらと主人公に敵意をぶつけてくるキャラクターがいれば、敵になったにも関わらず主人公に好意を示すキャラもいる、主人公と協力して他の仲間を打倒するキャラもいるで、過去の仲間というのが9人もいるのにも関わらず、ここのところの関係性はよくできていたと思います。個人的にはアルフレッドがお気に入りです。まさに大物といった雰囲気で、他者を魅了するカリスマをもちながら尊敬する人物には誰よりも身を捧げている、そんなところが心に響きました。
もうひとつ、エロゲらしからぬ雰囲気をしているのも一つの特徴として上げられるでしょう。なにより、良くも悪くも絵が濃いのが一番の原因であるかと思います。非常に残念ながら、女キャラに色気がないんですね。しなやかな女キャラよりも、ムキムキな男キャラのほうが上手いというわけです。公式HPでは男と女が同数程度で、出番も女キャラのほうが多いですが、あまり色気とかかわいげとか、そういったものには期待しないほうがよろしいでしょう。これはもう人を選ぶとかそういうの以前に、エロゲとして見るならば欠点といってもよいのかもしれません。そういうのもやってみたいかもなと思える人がやりましょう。
というわけで総括です。話の根幹となる部分は単純なのでしょうが、SF仕立てによる味付けが難解で、理解に少しばかり苦労を要する作品でした。しかし、それを乗り越えてプレイすることができれば非常に面白く、やりがいのある作品でもありました。普通じゃないエロゲがやってみたい！というかたには、是非おすすめしたいです。