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hurryUPさんの明日の君と逢うためにの長文感想

ユーザー
hurryUP
ゲーム
明日の君と逢うために
ブランド
Purple software
得点
80
参照数
1804

一言コメント

たった一つだけ願い事がかなうなら、あなたは何を望みますか?ライターの創った世界観とシナリオの構成の勝利な作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

シナリオ:21/30 イメージはD.C.~ダ・カーポ~に近いですかね?
瑠璃子やった時はまた幸福論かと思いましたが、「自分で決めること」にこだわってます。
音楽:10/15 OP曲はいいです、ED曲というかEDムービーは地味ですが、楽曲は特に印象に残りませんが丁寧につくられてます。
原画:10/15 自然の背景画は綺麗です(特に夕暮れの海岸とか)。
輪郭どころか顔までハンコ絵ですがポーズが変わり、動きも緩急があるので思ったより良かったです。
キャラ:10/10 皆ルートに入ると独占欲高くラブラブですね、キャラもいいけどやっぱ掛け合いが光ります。
エロ:9/10 瑠璃子がいいですね主に胸が・・・、エロいらないといえばいらない展開ですが結構エロイです。  
システム:10/10 特に問題ないです、メッセージも細かく調整でき低スペックも対応されてて設定面も親切です。
世界観:10/10 設定上、神様もいますし奇跡ありきの世界観ですが、きちんと使い方は考えられてます。

 攻略順は、瑠璃子→小夜→あさひ→舞→明日香→おまけキャラです。
直、攻略できる順番に縛りがあります、舞と明日香が対比なので舞→明日香(明日香→舞でもいいのかな?)の順がお勧めです。
各シナリオにそれぞれルートの伏線がはられてる(リンクしてる)のでそれを見つけられると楽しめると思います。
私的には瑠璃子とあさひルートはお気に入りです。
8割方の人は納得いきそうなハッピーエンドでまとめられてます。(選択肢はあり)
設定上これをご都合主義というのは違うと思いますので、設定勝ちかなと感じます。
 シナリオは設定の割りには地味です、幸福論とまではいかないそれぞれの幸せの形。
基本的に残された者の辛さや悩み、「独り」でいることそして今の生活を支えてくれる人の温かさを描いてます。
各キャラの掛け合い特にポロッとこぼれる毒舌はかなり楽しい、終盤まで結構続くので掛け合いを楽しむのが吉です。
マルチシナリオを成り立たせようとするとどうしようもない事なんですが、
時間系列が共通でイベントが同じようになるので飽きがきたりするのは否めせん。
 キャラの掛け合いで相殺してるんですがその辺が合わないとダレると思います。

瑠璃子ルート
 ありがちな設定で、どちらをとっても悲しむのは間違いなかった展開。
どういう風に落としどころを持ってくかと思ってましたが、一番目の選択肢がいいです。
奇跡の使い方や当人たちが願った事はいい意味で模範解答でした。
ある呪いが夕霧家にかかっていますが、それがとけたラストの描写の仕方は私的にはかなり好み。

小夜ルート
 神様もおせっかいしたくなるような不器用で孤高な娘。
最初に同じ境遇の主人公に心を開き過去の想いをふっきり、そして仲間の輪にとけこんでいきます。
小夜が他人に関心を持って(嫉妬も含む)、可愛くなっていく様を素直に楽しまないと負け、そして彼女にはエロ必須ですね(笑)

あさひルート
 なんか小夜ルートでいい味だしてるなあと思ってたら、ルートをプレイして好きになれたヒロインそして真の意味での役者。
というか半七海ルートですね、掛け合いはもう抜群に楽しい。
 結果的に小夜の後にやったのも良かった、ルートの核心にいたるので書けませんが孤独を別の形で描いた話。

舞ルート
 明日香ルートの対は小夜だと思ってただけに、舞とは意外だなと思いました。
島とは関係のない舞だったのかなあと感じますが、内容的にはやはり薄いのは否めません。
今自分をみてくれる子と気持ちに気付いて、過去をふりきるというのはどういうことか描いた当たり前の恋の話。

明日香ルート
 舞が「普通」に対して明日香は「特別」、舞と明日香シナリオはセットで評価するのが妥当です。
「過去をとりもどす為に前を向かなければならない」矛盾する命題です。
あすかと明日香・・・大事なのは今、結局は舞でだした回答と同じですね。
メインヒロインに相応しいハッピーエンドですが、最後の結末はやりすぎかなと感じます。
 記憶喪失の設定の明日香が主人公を男と意識していく過程が上手いし、実に可愛い。
洗濯物の瑠璃子の会話の前ふりといい小技がきいてますね。

※ぼやき
 浅いようにみえて深いシナリオは悪くはないのですが、キラ☆キラをプレイ後にやったのが運のつきでしたね、もちろん人に勧めるなら明日君ですけどね。

※以下若干のネタバレ 




 瑠璃子を最初の方に攻略できるヒロインにしたのは意図的だったんですね。
主人公同様、7年の想いがあって各ヒロインのルートに嫌味にならない程度に絡んできます、萌えゲーにあたる作品としては珍しいですね。
しかし7年の想いがかなったことにより進行がはやまるというのは皮肉な話ですが、上手かったかなと感じます。
明日香ルートは結局もう答えは出てるのに、自分は悩むのが理解できなかったので評価さがりました。
あさひは各ヒロインにあるモノローグが少ないなあと思ったら、ある仕掛けがありました。
今までの言動を改めて見直すとなかなか感慨深いものもあります。
七海とりんをからめた描写を含めてあさひが一番好きなルートです、物語のオチが他のルートに比べて抜けて上手い。
「想いが通じあうということは、小さな奇跡みたいなものかもしれない。」
この世界観でこれをいうのかと思いましたが、あえて対比の為使ったのでしょう、好きな言葉です。
 冒頭に述べたようにライターの作った世界観と設定、シナリオ構想の勝利です。

追記
 他の人の感想みてライターの担当が瑠璃子、明日香、小夜とあさひと舞で別れてるんですね。
明日香シナリオに確かに小夜の姉の描写があったのですが、舞の方が明日香の描写が多かったもので。
 舞と明日香が対比と大見得きったのはお恥ずかしい話ですね。
単に舞ルートは明日香を使いたかっただけなんですね・・・、感想は変えずにそのままにします。

※激ネタバレ追記
 リコが何故他ルートで元気なのか意外と理解できてない人が多いみたいですね。
本文をしっかり読んでリコの出産ルートと明日香ルートみればすぐ分かると思ったんですが。
 リコが主人公と結ばれる願いがかなう事で本来の進行より病状が悪化するのはリコルートで描写してます。
りんが元の世界に戻るまたは、神の力がなくなると夕霧家の呪いがとけるのは、出産エンドと明日香ルートに描写がありますね。
 みもふたもない事を言えば、りんが元の世界に帰って(ゲートが閉じる)からリコと主人公が恋愛すれば無問題という事です(笑)
 ご都合主義とかいう問題ではなくそういう設定なんですよね、ありきたりなシナリオと馬鹿にする前にしっかり本文を読んだ方がいいかも?
このゲームで矛盾があるのは、小夜ルートでゲートが閉じたのに小夜が戻ってきているのだけかなあと。