ErogameScape -エロゲー批評空間-

hureiaruto01さんの幼馴染と十年、夏の長文感想

ユーザー
hureiaruto01
ゲーム
幼馴染と十年、夏
ブランド
夜のひつじ
得点
88
参照数
667

一言コメント

恋愛モノとしてすごくいい作品でした。幼馴染モノとしては少々パンチが弱い気がしますが、本当に楽しめました。幼馴染好きがプレイするよりも、軽い現実味のある恋愛モノがしたい人におすすめです。 心の底からプレイしてよかったと言える作品でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

具体的な感想は、他の方がすごく解りやすい長文を書かれておられるのでそちらをご覧ください。
私が書くのは、なぜ恋愛モノがしたい人にオススメするかです。


まず、初めに
私は大の幼馴染スキーです。「一番好きな属性は?」と問われたら、躊躇なく「幼馴染」と申し上げます。
ですが、当然「幼馴染」にも種類・状態があって
・完璧超人
・ダメっ子
・ずっと一緒にいる
・昔は仲良かったけど、現在疎遠
などの様々な種類・状態の幼馴染がいます。

 その中で、今作のヒロイン枝梨はどれに該当するのでしょうか?
正直、私のレベルでは分類することが出来ません。まぁ、分類する必要は全くないのですが…。
むしろなんでも無理に分類しようとした私がダメなのでしょう。
ただ言えることは、私が大好きな尽くし系幼馴染では無かったことだけは言えます。
それでも、枝梨ちゃんが幼馴染であり、幼馴染でなければこの物語が作られなかったことだけは断言できます。
(子供の頃から成長までのことを書いてる時点で幼馴染じゃないと物語が成り立たいので、私の言ってることは意味不明ですが…)

 ともかく、私が望んだ幼馴染ではなかったので、「幼馴染モノとしては少々パンチが弱い気がします」と言っているだけであって、
枝梨ちゃんが幼馴染として問題があるわけでもなく、物語に"幼馴染分"が少ないわけではありません。
むしろ、枝梨ちゃんはとても可愛く・幼馴染(付き合いの長さ)がなければこの素晴らしい作品は作られませんでした。
パッとでのヒロインでは今作のような年数をかけた恋愛を書くことが出来なかったので、間違いなく幼馴染モノです。
幼馴染モノだと言い切るなら、変なこと書くなよって思われるかも知れませんが、あえて書いたのは 
幼馴染モノということを気にされずにただ単純に恋愛モノの興味がある人にこの作品を楽しんでほしいという希望があるからです。

 さて、ここまで幼馴染モノとしてのパンチが弱いと書いた言い訳を無駄に長く書かせていただきましたが、
ここからが私が一番伝えたい感想の「恋愛モノとしてよかった。」の説明です。(といっても簡単ですが…)

 最近の萌えゲ・イチャラブゲーは、はっきりってつまんないです。「昔がよかった」とかの懐古的発言がしたいわけではなく、
恋愛が不自然にしか書けてなかったり、心理描写が謎だったりします。
意味もなく主人公に惚れたり、告白後に即Hをしたり、取ってつけたようなHシーンを入れたり…物語の終わりに連発してHシーンが来たときは、
「エロの回数決まってるから無理やり入れたんだろうなぁ」となって虚しくなってきます。
 そういった作品はそういった作品で、大好きだし、楽しみ方はあるのですが、最近はそればっかりで、作品の質も低いので文句を言いたくなります。
(保身じゃないですが、そういった作品も面白いですし楽しんではいますが…。)

 また、付き合うまでの過程が適当なので、付き合った後にイチャラブしてても、「何を好きになったのか意味不明で、なんでイチャついてる?」
「もしかして裏があるのか?ヒロインの思考回路が見てみたい」と冷めた目で見てしまうこともあります。
 余談ですが、そういうこともあって、納得いく行かないは別として好きになった理由があり、長年好きだと思い続けるということは
その想い・その恋は本物であると判断できなくもないから、幼馴染は好きだったりします。


 今作「幼馴染と十年、夏」は、本当によく恋愛が書かれていました。
よくある恋敵・ライバルがいたり、ヒロインとのスレ違いがあったりするわけではありません。
低価格なのでそこまで書いている余裕もなく、そもそもそういったものを売りにしているわけではないので存在するわけないのですが…。
むしろ、そういったものが恋愛モノに絶対無いとダメなのか?と問われたら、そんなわけがないと言いますよ。
ファンタジーではなく、普通に男と女がお互いを好きになり結ばれる。物語なのでその過程で問題があったりしますが、
それに固定した出来事などありません。

 では、これはどういった恋愛モノなのか…。
1.きちんと付き合うまでの過程をきちん書いている(今作の場合、疎遠であったり、トラウマであったり)
2.結ばれる喜びが伝わってくる(性欲からくる行動ですが、それでも過去の事を乗り越えて結ばれた時の喜びはなかったです。)
3.「成熟期」について軽く(本当に軽く)触れている。恋愛は最初は何をしていても楽しいです。ゲームでは確かにそれだけでいいかも知れません。
イチャラブだけ その一瞬だけしか見ることがないのですから、それでいいと言われたらその通りです。そのことを否定する言葉はありません。
ですが、恋愛をしていてそれは必ず来てしまいます。
主人公も、現在の幸せが永遠でないことに漠然と不安を感じて、少し焦るときがあります。
最終的に主人公はこれからもっと成長する・優しくなり、ずっと二人で一緒にいるために努力することを決意します。
これは、恋愛でいうところの成熟期とは少し違いますが、しかし、未来を見据えた現実的な恋愛であるとは私は感じました。

 お互いを思い合い、ただ見た目上のイチャイチャをするだけではなく、エッチシーンにも意味というか深みがあったのが本当によかったです。
自分語りになりますが、エッチシーンを回想モードではなく作中に文章をきちんと読んだ作品はめったにありません。
一般的な作品だと、極論ただエッチをしているだけで、どの作品をやろうと大差がないからです。
エッチをしているということに基本的に違いはありません。(エロさとかには違いはありますのでそれは回想で楽しみます。)
 しかし今作は、ヒロインとのエッチに(訳あって)深みがありました。エッチシーンの文章も読んでいて本当に美味しかったです。
おそらく、文章そのもののよさよりも、中身に意味があり、エッチをできる喜びもあったので一つ一つのエッチに心が動きました。
恋愛を楽しめたからそこ、エッチシーンもただの性交渉ではなく価値があるものに見えて、文章を読む気になれたのだと思います。



 ただ、これだけ書けるのだからこの作者の幼馴染ではない普通の恋愛作品がやってみたくなりました。
正直なところ、下に書いてますが「幼馴染モノなのか?」と未だに疑問に思っています。
ですので、違和感のない普通の作品をやって癒されてみたいと感じました。
 それでも、作品をプレイして本当によかったです。楽しかったです。またいつか必ずプレイすると思います。






どうでもいいチラ裏の不満など

1.幼馴染と十年、夏 なにが十年なのか全く理解できない。作品の最後に無駄に十年を強調するシーンがあったが意味がわかりませんでした。
他の方の感想に、作者が別の時代も書く予定だったので「十年である」と書かれてたので、納得しましたが
それならそれで、書かなくなったなら変更してほしかったです。

2.高○生(H16)になって、髪の毛を切った意味がわからない。
イメチェン自体に文句は言いません。そうではなくて、主人公はロングヘアー時代に髪を褒めた時があります。
もちろんロングヘアーそのものを褒めたわけではありませんが、それを含めて褒めていました。
しかも、ヒロインは「また髪の毛伸ばしたほうがいい?髪の毛長いほうが好きでしょ?」と主人公が長い髪のほうが好きだと認識しております。
もし主人公が伸ばしたほうがいいと言っていて、それで伸ばすのなら最初から伸ばしたままでよかったのでは…。
絶対にイメチェンをしなければならなかったのなら、中○校の時にすべきだったのでは?と思ってしまいました。
H11で疎遠→髪の毛を切る→H14で仲直り(付き合いだす)→H16付き合いだしたから伸ばした。
という風にしたほうが自然だったと感じました。

H16に、家にいるときは常に髪の毛をまとめ上げてパイナップル上にしていたり、
その他ベッドを占領する・お菓子を広げるなどのズボラさもあったので、
ヒロインが下手に気を使わないようになった・親密さを表しているのかと考えているのですがどうなのでしょうか?
もし意味がなかったら恥ずかしいですが…。それならしないでほしかったです。

3.本当に幼馴染なのか…
幼馴染の定義はいろいろあって、その人その人の幼馴染定義があるので私が考える幼馴染を押し付けても
「お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな」となりそうなので具体的な定義などは遠慮させていただきますが、
H11では2週間の交流の後、3年間疎遠になります。 そして3年後のH14~H16までがこのゲーム時間です。
付き合っている時間からみて、過去に幼馴染といえるだけの交流があったのでしょうか?
名前を「よーちゃん」「えりちゃん」と呼び合う何かがあったのだとは思うのですが、プレイヤーにはわかりません。
もちろん、H11での出来事・そしてH14での仲直りの展開はよかったですし、H16での本当の意味でのトラウマ払拭・成長は
非常に面白かったです。
ただ、物語をどうこうではなく"幼馴染"とだけ考えた場合に多少無理があるんじゃないのかなぁと感じました。

変な話、別に幼馴染でなくてもこの物語は通りそうな気がするんです。
とりあえず、主人公単体で見た時 子供だからこその悩み・成長したあとだからこその葛藤・思春期ならでの悩み がこの作品の売りです。
ですので、子供時代から思春期を書かない限りこの物語には成り得ないのですが、極論を言わせてもらえば
ヒロインの設定(幼馴染)を変えて、高校生時代にあったヒロインと、大人になるまでの話に変更していても困らない気がしました。
いや、この作品は子供から思春期を書いているので、私が今いった設定だと物語が全然全く別の物語になりますし、
そもそものコンセプトを否定することになりますので、無茶苦茶を言っているのは自覚してます。
ただ、それぐらい"幼馴染"って言葉を使うほどの意味があったのかは疑問を感じざる終えません。内容的には幼馴染なのは繰り返すまでもありませんが、
ノスタルジック幼馴染ノベル と言う割には、幼馴染の設定が独り歩きしている気もしないでもなかったです。
個人的には、幼馴染スキーのためのゲームというよりは、子供だった主人公が女の子を通して成長する(成長しようとする)物語っていう印象を受けました。
意味不明ですね。

私の言ってることは荒唐無稽ですが、それでも同じようなことを感じているので他の方の感想で 意味合いが似たようなことを書かれているのではないでしょうか?
まぁ、定義はともかく ヒロインが幼馴染であることだけは間違いありませんが…。
あと面白かったので、完全にイチャモン臭いことで文句を言うのもどうかと思いますので、忘れてください。