ラストシーンのBGMで-3点。ヤクザの底冷えする恐ろしさの描写も◎。特異な環境、極限状態に置かれた人間の心理シミュレーションも◎だと思います。やや特異すぎて、読み手の想像力によっては、すんなり受け入れられないケースもあると思います。主人公の価値観の変化(=成長?)も一つのテーマかもしれないですが、その辺の描写は弱かった様に思います。クラッシックアレンジのBGMは◎。一番印象に残ったのは、異様に台詞の多い脇役、栄一。愛らしいバカを演じたら右に出る者は居ない(と思う)金田師匠に敬礼。
「NGな恋」に続き、バス配線型のヒロイン分岐をプレイしたのは二作目ですが、最後の最後で全ヒロインに分岐する作りより、フルコンプの作業感が薄れて良いと思います。その代わり後半攻略キャラにスポットが当たりすぎるバランスになるので、前半攻略キャラがお気に入りの人は厳しい事になりますかね。
攻略キャラに関しては、やはり水羽だけ浮いてますかね。主人公への恋愛感情にしても唐突という印象が有ります。
最後の取り調べシーンでぐっと来るかどうかでプレイ後の第一印象が決まる様な気もしますが、ハルを守ろうとして知恵を絞り出し、悪役を演じる主人公の姿には少しだけ没入できなかったです。
金だ金だ と言いながら、最初から主人公には甘さがあった様に思いますので、鬼畜が愛に目覚めるという様な成長を感じられなかった事が原因でしょうか。ただ、あまり鬼畜すぎても最初から感情移入できないので、難しい所ではあります。
このライターさんらしい「騙し」というか演出がいくつか有りましたが、ラストのEDテーマ後のエピローグで魔王が再登場というのもその一つだと思います。確かに、火だるま
で死亡ではあっけなさ過ぎる訳ですが、それなりの収束と余韻を求める読者に、エピローグでもう一波乱おこさせるのは、面白い試みだと思いました。
ただ、その一波乱の結果が8年の服役という重たいもので、最愛の人と再会するも、主人公の苦悩と絶叫で締めくくられるテキストに、ラストのBGMも気怠さが支配する様な感じで、何とも救いが無いです。せめて「G線上のアリア」辺りで希望をプッシュして貰えると相当後味が変わったと思います。