PC版をプレイ済みの方でも、新規追加された景ルートだけを目当てに買う価値はあると思います。景ルート単体でも下手なファンディスクを上回るくらい充実した内容になっていますから。もちろん、家族をテーマにした優れた感動物である『家族計画』という作品に初めて触れる方にも、ほぼ問題なくオススメできる移植度です。長文は移植度についてと、景ルートについての感想になります
既存のルートについては、移植にあたって修正が入ってる部分が結構あります。
エロシーン以外にも、家庭用ではそのままだと表現できないような部分について(クスリ関係や性暴力等について)、
テキストや表現の修正が丁寧になされており、うまく一般作に適応させてありますね。
とはいえ、春花ルートなどは修正のせいでシナリオから重みが失われてしまっていたりと、
さすがにPC版の良さが完全には再現されていないルートもあり、
既存のルートはやはりPC版の方が読み応えはあります。仕方のないことですが。
まあ、それでも本来なら表現的に移植が困難な物を、本当に頑張って移植してあるので、
初めて家族計画に触れるという方にもオススメはできる出来です。
数カ所ほど惜しい部分はあるとはいえ、PC版の面白さを味わうのにはそれほど支障はありませんから。
同じライターさんの作品を引き合いに出すと、少なくとも家庭用のCROSS†CHANNELよりは移植度は良いです。
シナリオ外の部分では、各ルートのエピローグ後に新しいエンディングムービーが流れるようになったのは
良い仕様だと思いました。PC版はスタッフロール→エピローグ→タイトル画面に戻る、って感じだったから
エピローグで感動を味わった後、すぐタイトル画面に戻ってしまっていたわけですが、
今回は、エピローグの後に改めてエンディングムービーが流れることにより、
ラストシーンの余韻に心地良く浸れるようになってます。
流れる歌はもちろん、あの素晴らしいエンディングテーマですから、感動も増幅されますしね。
まあ、違うムービーとはいえ2度スタッフロールを見させられるわけなので少ししつこくもありますがw
一度目のスタッフロールはカットするか、何か別の演出に変えるなどしてくれたほうが良かったかもしれませんね。
※これ以降は、PC版家族計画をプレイ済みの方向けのレビューになっています。
本編のネタバレ的な記述も含まれていますのでご注意を。
本編の感想はPC版のレビューで書いたので省略するとして、ここでは家庭用で追加された景ルートについて感想を。
本編に修正が入っていることを補って余りあるくらい、このルートの存在は大きな魅力と言えます。
本編でも特に魅力的なサブキャラだった久美景が攻略できるということ自体が嬉しいわけですが、
何と言っても、このルートの出来自体も非常に良いのです。
景ルートは、他のルートと比較すると独特の展開を見せてくれます。
シナリオ的には、本編バッドエンドからの続きということで、主人公の司が高屋敷家を後にして
景と合流したあのシーンから先が描かれていくわけですね。
バッドエンドの続きとして新しいルートを追加っていうのは、実に珍しいパターンだなと当時思ったものです。
ルートの内容は、景と二人きりで生きて行くというわけではなくて、
劉楓や山名由利など、本編に登場したサブ女性キャラ達が大集合して、
新しい場所で新しい家族たちとの日々が描かれていくので、
もう一つの家族計画、と言ってもいいくらいのノリが楽しめる内容になってますね。
サブ女性キャラ達は、本編ではメインヒロイン達の事情を掘り下げていくための役割を担っていることが
多かったですが、このシナリオでは彼女たち自身の魅力が、本編に比べてどこかほのぼのとした空気の中で
じっくりと描かれていきます。
空気がまったりしていて、年齢層的にも子供と言っていいキャラも複数いて、
景や楓のような大人なヒロイン達も、本編のヒロインたちと比べて精神的に健康なこともあって空気が暖かく、
本編よりも、どこかままごと的な心地良さがあったと思います。
本編でシリアスな描写しかなかったようなキャラがギャグキャラ化していたりして、コメディ的な色合いも強かったですねw
でも、そんな中でも、子供を養っていくことの大変さだとか、
扶養家族を抱えながらフリーターとしてお金を稼ぐことの大変さだとか、
そういったことがしっかり描かれて、社会性のあるシナリオというか、この作品ならではの重みもちゃんとありました。
家族計画らしさをしっかりと味わえ、その上で本編とはまた違った共同体の生活を楽しめる。
このルートには、家族計画という作品のファンディスク的な価値すら感じました。
他人同士が身を寄せ合った集団の日々を描いたシナリオとして、
支え合いというか、傷の舐め合い的な相互補完関係の暖かさを味わえるような感じになっていて、
集団の持つ雰囲気、身を寄せ合うことになる新しい家など、本編とはまた違ったテイストの日々が
楽しめるわけで、これはこの作品のコンセプトが好きならたまらないですね。
本編と比べるとテーマ性は薄めで、その分、純粋に疑似家族の送る日々の雰囲気を楽しく読んでいける感じ。
何だか、不思議と本編と比べて、プレイしていてホッとするようなルートだったなと感じます。
ボリューム的にも、他のヒロインのルートに勝るとも劣らないくらいの長さがあって
しっかりした内容になっていますし、
特に、本編で景や楓に惹かれていた人にはオススメです。もう何というか全力で可愛さが引き出されてるので。
この家庭用版は、初めて家族計画に手を出す方にも良いですが、
PC版をプレイ済みの方にも文句なくオススメできますね。そのくらい、景ルートはプレイする価値があります。
にしても、景は女性として生々しいキャラ付けがされてますね。
子供の相手をする時の彼女は、本当に真摯で一生懸命で、凄いなと思えるのに、
私生活は家事とか一切できなくて、ひたすらだらしないという感じなわけですが…
表面だけ見れば、こういうキャラは他のエロゲーにも結構いそうですが、
景は私生活のダメ人間っぷりが本当に生々しく表現されているから、妙なリアリティがあるんですよねw
気さくなので接していて和むし、友達として付き合いやすそうなタイプですけども、
付き合っていくうちにすごく可愛く思えてくるし、女性としてとても魅力ある人物だと思います。
個人的に家族計画の世界で一番好きなキャラです。だからこのPS2版で攻略できたのはすごく嬉しかった。