ライターさんの知識量に裏打ちされた戦闘描写が、とても質の高い緊迫感を生んでいて、読み応えがあるダークなガンアクションノベルでした。テキストの質が高く、開始直後から全力でプレイヤーを楽しませてくれるエンターテイメント性の高さが特に良いところだと思う。
開始直後から息もつかせない展開ばかりで、まるでジェットコースターのよう。
緊迫感に満ちた銃撃戦など、アクションの描写が上手く、読み手を飽きさせないテキストは素晴らしい。
全体的に暗いビジュアルも、 雰囲気をよく底上げしていて、シナリオと相乗効果を生んでいますね。
後半の学園編あたりは、前半のアメリカ編と比べると、勢いという意味ではパワーダウンしますが、
その分、前半から紡がれてきた人間関係の複雑さを生かしたドラマも展開されていき、
相関関係の面白さを加えることで、銃での命のやり取りに新たな緊張感を持たせて、とことん読ませてくれます。
そうやって最後まで面白さを持続させてくれているのはいいことですね。
ヒロインとのエンディングにしても、単純なハッピーエンドという感じではなく、
やや物寂しさを感じられるような結末の数々は読後感が味わい深くて良いです。
救われない内容のバッドエンドも、それはそれでハッピーエンドとは別のテーマが描かれていて
ひとつの結末としての存在意義を感じる。
特にエレンルートのバッドエンドは、復讐という行為のたどり着く先にある空しさを
二人のヒロインの末路を通して表現していて、空虚さの漂う完成度の高いラストシーンになっていたので
下手なハッピーエンドよりも、よほど印象に残りました。
もちろんそれ以外のどのエンドも、作品全体のハードさが象徴されているような結末で質が高かった。
シナリオの隅々まで一定以上のクオリティが必ずあって、とても満足しました。
銃へのこだわりや、ガンアクション描写の緻密さは
ライターさんのこのジャンルへの理解度と知識の深さを感じさせてくれます。
銃撃戦における戦い方のセオリーや、狙撃の時の心理描写など、なるほどと思わせてくれる部分が多く
テキストに説得力があるので、読み応えと緊迫感の深さに大いにプラスになっていると思いました。
ハードボイルドで、そしてヒロインとの試練に満ちた切ない愛もしっかり描かれた、
完成度の非常に高い物語。
絵にクセがありますし、萌え要素はほぼ皆無ですから、
エロゲとして見るとそのあたりが欠点ではありますが、
単純に「面白い」と思えるような作品を求めている方には文句無くオススメできる傑作です。