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houtengagekiさんのデート・ア・ライブ 或守インストールの長文感想

ユーザー
houtengageki
ゲーム
デート・ア・ライブ 或守インストール
ブランド
コンパイルハート
得点
72
参照数
896

一言コメント

デート・ア・ライブのゲーム版2作目。アニメ2期直後の設定のようで八舞姉妹や美九も登場してました。各ヒロインルートは日常デート描写が大半を占めているので、アニメ2期が日常回の少ない内容だった分を補ってくれているような感じがする。前作と比べるとエロいイベントやCGがかなり増えているのが印象的で、パンチラや水着やコスプレ的なものなどが色々盛り込まれていたのはナイスでした。戦闘シーンが少ないのでヒロインの精霊姿があまり楽しめない、シナリオがやや弱い、といった欠点もありますが、ファン向けゲームとしてはまずまずといったところ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 『凜祢ユートピア』に続くデート・ア・ライブのゲーム版2作目。
アニメ2期直後の物語になっているようで、前作から八舞姉妹と美九がプラスされ、
攻略はできないものの真那も登場しています。
凜祢ユートピアとはストーリーのつながりはありませんので
原作のライトノベルあるいはアニメの2期までを鑑賞しておけば、
本作をプレイするのに支障はないでしょう。
ちなみに、凜祢ユートピアとはシナリオライターが替わっており、そのせいか
シナリオの傾向はわりと違いがあります。

 ゲーム内容は、テキストを読み進めていくタイプの普通のADVです。
街マップでヒロインの誰かを選んでデートイベントを見るなどして好感度を上げていき
各ヒロインを攻略していくことになります。
共通ルートで誰かの好感度を集中的に上げたら個別に入れるというスタンダードなつくり。
攻略できるのは十香、折紙、四糸乃、狂三、琴里、八舞姉妹、美九、
それと本作オリジナルヒロインの或守鞠亜を加えて合計9人になります。
ヒロインの人数は多いですが、その分1ルートは短めになってます。


 設定的には、電脳世界に主人公とヒロインたちが閉じ込められ、
脱出するためには、或守鞠亜という人工精霊の少女の
「愛とはなにか」という問いに答えなければならず、
そのためにヒロインたちとデートをして鞠亜に答えを示していくことになる、というもので、
鞠亜が用意する様々なシチュエーションの中でヒロインたちとデートをすることになります。

 舞台がゲームの中の世界だということを、うまいことデートイベントに活かしていて、
たとえば十香が保健室の先生になったり、アンティークショップの店長になったりと
イベントごとに設定がいろいろと変わるのが特徴的ですね。
まるでイメクラのようでもありますが、おかげで見ていて面白いです。
当然ながら設定が変わっても十香の性格は元の天然っ娘のままだから、
保健室の先生になったところでまともな治療行為などできるわけがなく
素っ頓狂な行動をしてギャグのようなエロイベントになったりするわけですが、
なんかシチュエーション漫才みたいになってて面白いですね。
各ヒロインの可愛さをいろいろなシチュエーションで楽しめるし、
なにより結構エロいのがナイス。
パンチラ、ブラチラは当然のごとくたくさんあるし、サービス満点。
中にはヒロインの服の下に手を入れてまさぐったりといった、
一般作としては限界ギリギリっぽいものもありました。

 CGの出来もなかなか。背景も含め、この点は前作より良くなっていると思います。
今回から参戦している美九などは、胸が大きく豊満でスタイルのいい女の子ですが、
イベントCGではそんな美九の体つきのエロさがよく表現されていて最高でした。
特に競泳水着のCGは実にエロかった。一般作なのにエロさで興奮してしまうほど。
他のヒロインたちも、原作のビジュアルイメージ通りの可愛いCGがたくさん用意されていますし、
存分に萌えられると思います。
アニメ2期の作画が正直言ってイマイチだった分、ゲームの絵がよけい可愛く感じられる……
あと、前回同様CGが少しアニメーションするのも嬉しい。
しかも動きがかなり自然に感じられますので、相変わらずコンパイルハートはこのへんいい仕事してます。

 テキストのほうもまずまずで、ヒロインたちの印象は原作のイメージほぼそのままで
違和感などはありませんでしたし、安心してデートを楽しめます。
美九はすでにデレた後なので、原作での登場直後の激しい男嫌いっぷりを見せてくれることはないので
そこは少しもったいないなと思いましたが。
ただ、戦闘シーンのテキストの弱さと演出の貧弱さはなんとかならなかったものか……
前作もそうでしたけど、このへんの欠点は相変わらずです。
エフェクトをただ垂れ流しているだけの戦闘は見てて盛り上がりません。


 シナリオに関しては、原作ヒロインたちの個別ルートを全部攻略したら
オリジナルヒロインのストーリーが楽しめる最終ルートに突入できるという構成。
個別は、どのルートもだいたい恋人同士になってイチャイチャして終わる感じで
そんなに印象に残るようなストーリーは展開されません。
ルート数が多い分、1ルートは短くなっていますし、あっさりしています。
それでも、特定のヒロインと一対一で結ばれる姿を楽しむことはできるので、
原作では味わえないシチュエーションが楽しめるのは確かです。
萌えることは充分できるし出来のいいルートもあり、
アニメ2期では日常成分が少なかっただけに、それを補充するような気分で楽しむことはできます。
ただ、正直もうちょっと読み応えが欲しかったし、デート・ア・ライブなのだから
戦闘なども少しは入れて欲しかったというのが本音ですが……
原作ヒロインの個別ルートは、萌えはともかくストーリーとして見るとかなり弱い。
『凜祢ユートピア』の原作ヒロイン個別ルートが、かなり充実感を味わわせてくれる
味わい深い内容だったのもあり、あれに比べると物足りなさを覚えたのは間違いありません。

 しかしトゥルー扱いとなる鞠亜ルートは結構いい感じです。
というか他のルートは鞠亜ルートにたどり着くための過程という位置づけになっているわけですが、
とにかく鞠亜ルートではバトルもあってストーリーも盛り上がり、展開もなかなか感動的。
前述した通り、戦闘シーンの描写がいまいちなのが惜しいですが、
しっかりデート・ア・ライブらしさを感じられる内容だったと思います。
そのあたりは前作同様、原作者がゲームシナリオの原案をやっていることが大きそうですね。
何しろ、鞠亜の設定がぽっと出のものではなく、原作のとある要素と関連付けられているので、
最後までやると彼女に思い入れを抱くことができるようになっていたのは良かった。
あるキャラクターの扱いに納得がいかなかったので、読後感は少しすっきりしないものもありましたが、
ともあれ悪くはない質だったとは思います。

 本作オリジナルヒロインの鞠亜は、物静かで感情が薄いタイプの女の子ですが、
主人公や他のヒロインたちの生活を見守り、時には触れ合っていくうちに
だんだんと感情を見せてくれるようになっていく様子がかなり可愛らしいので、
原作ヒロインにも劣らない魅力があり、萌えるには充分だと思います。
彼女に思い入れを抱くことができれば、最終ルートも感動することができるでしょう。
前作の凜祢といい、オリジナルヒロインをしっかりと原作ヒロイン達とは違う魅力のあるキャラに
仕上げることができているあたり、良い仕事をしていると思います。


 今回の作品は、バトルをはじめとしたシリアス要素や、ストーリーの盛り上がりなどが
最終ルートにまとめて詰め込まれているつくりで、
それ以外のルートはほぼ萌えのみで成り立っているというのは
かなり思い切った構成ですが、これはこれで分かりやすくていいですね。
ただ、悪く言えばシナリオ構成に工夫がないわけですが……だから深みには欠ける。
序盤から最後まで、ストーリー展開はかなり分かりやすい内容になっているので
ミステリアスで不気味さのあった前作とは傾向が異なります。



●まとめ
 ファン向けゲームとしては、悪くない内容の作品だと言えるでしょう。
原作ヒロインの個別ルートがあまり面白くなかったのが欠点になりますが、
共通ルートのエロ萌えなデートイベントは面白いし、最終ルートの内容も悪くない。
『凜祢ユートピア』のような深みのあるシナリオを期待すると、今回はそういう良さはないので
ガッカリする可能性はありますが、今回のはまた違った特徴がある作品なので、
別物と割り切って楽しむのがいいかと思います。
今回はストレートな盛り上がりが楽しめる作品です。

 ただ、本音を言えばシナリオライターを変えてほしくはなかった……
メインシナリオを書いてるライターさんは頑張っているとは思いますが、
全体的に見ると、明らかに前作のライター陣のほうが技量が上だったと思いますし。
今回の内容も、前作のライターに書いて欲しかった、せめて原作ヒロインのルートだけでも。

 それにしても、このゲームのヒロインの設定はデート・ア・ライブ本編にも
影響を及ぼしそうな内容でしたが、設定が逆輸入されて本編で使われるようなことが
あるのでしょうか。そうなってくれたら嬉しいなあ。