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houtengagekiさんのT.P.さくら 前編の長文感想

ユーザー
houtengageki
ゲーム
T.P.さくら 前編
ブランド
CIRCUS
得点
50
参照数
221

一言コメント

ダ・カーポシリーズのヒロインの一人さくらを主人公にした、変身ヒロインもののスピンオフ作品。絵はとても可愛いと思いますが、ボリュームが少なすぎて不満が残ります。話のほうも歴史警察ネタなのは結構いい設定だとは思いますが、ちょっと平凡ですね。ツッコミどころも多いし。ちなみに当然かもしれないけど全コンテンツが「後編に続く」になってるのでこれ単体だと消化不良。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 この作品はアニメDVDとゲームで構成されていますが、
それぞれディスクも別ですし独立したコンテンツなので、別個に楽しむ物になってます。
ゲーム本編は純粋にADVであって、アニメが挿入されたりとか、そういうことは無いです。


●ゲームについて
 まずゲームの方から触れますと、さくらを主人公にした変身ヒロイン物のADVです。
D.C.ⅠおよびⅡのキャラと舞台を使っていますが、キャラ設定は本作独自のものになっていて
さくら、ことり、純一あたりがメインキャラですが、彼らは小学3年生になってますし、
それなのに音夢や美春、杉並などは高校生だったりと、人間関係は元作品と完全に異なり、
そもそもⅡのキャラである渉やエリカが純一たちと同年代だったりするし、完全にオリジナルですね。
要するに本編と繋がりのないスピンオフでして、昔の作品で言うと、
『プリティサミー』とか『リリカルなのは』などと同様のコンセプトを狙って制作されんだろうなあ、と、
プレイしていると感じてしまいます。
それにしても音夢が純一の姉になっているのはさすがに真逆すぎて違和感があるなあ…
新鮮な気分ではありますけど。
いちおう純一の和菓子を出す能力はちゃんとあったり、D.C.本編の設定は多少は活きてます。

 ストーリーの方は、歴史改変を防ぐ使命を持ったTP(タイムパラディン)になったさくらが、
歴史的な宝を狙って盗みをはたらく時空怪盗杉並を追ってバトルしたりする話になってますが
設定は結構面白いですけど展開はまあ普通かなって感じ。
変身はしますけどバトル色は薄く、雰囲気は明るめです。歴史上の人物がちょいちょい出てきたりするのが特徴かな。
日常で近しい人物が実は怪盗団のメンバーだったり、そういうお約束は押さえてます。
ただ、絶滅した動物を現代でペットとして飼うことになる展開とかは、
それは歴史警察組織としてどうかと思いましたし、シナリオにツッコミどころは多いです。
そして演出もショボく、アクションシーンでも立ち絵をただ表示して会話文が流れていくのみだから
躍動感がまったく無く、サーカスのスタッフにこういうアクション物は不向きっぽいなあ、と感じてしまう。
日常描写のみで演出が気にならない3話の水着回が、一番素直に楽しめる内容だった…

 でもさくらは素直に可愛いですね、にゃーにゃー言う口癖とか良いですw
小学生なりに純一を異性として意識してる描写も、見ててほほえましいですし。
日常描写は萌えゲーメーカーだけあって真っ当に楽しめます。短くて薄いけど。


 この前編は全4話構成になっていて、各話ともアニメを意識した1話完結のつくりになってます。
各話とも真ん中あたりでアイキャッチ入るし(表示されるのはゲスト絵師のイラスト)、
テキストは会話文のみで地の文がまったくありませんし。
しかし、問題なのはボリュームがなさすぎることです。
何しろ各話とも、普通にプレイしていて10分ぐらいで終わる。
アニメならごく普通の話の規模なんですが、ADVで見せられるとあまりにも短く感じてしまう。
4話だから40分ほどで全部終わってしまいます。
しかも、これからやっと話が盛り上がりそう、というところで話がぶった切られて後半へ続く、
というあからさまな引きっぷりを見せてくれて、前編だけでは消化不良ですし…
イベントCGの数も、アイキャッチ用のゲストCGを除くと14枚と、低価格エロゲ水準の量で、
質が高いからいいようなものの、値段に見合った量ではないですね。
定価7140円の商品で、シナリオもCGもこのボリュームでは物足りなさがどうしても残ります。

 それにしても何故ライバルキャラが本編でさくらと特につながりもないエリカなのかな。
恋のライバルでもありそうなことりの方が、ライバルキャラにするのには似合ってる気がするけど。
後半で何かあるのかもしれませんが。


 あとオマケ的にシューティングゲームが付属していますが、こちらはイベントCGもなく
ボスを3体倒すだけで瞬時に終わるので本当にオマケ程度。ゲームとしても特別面白くもないので
プレイする価値はなさそう。普通にやると難しく感じますがボムが強すぎるということに気づくと速攻で終わります。
このシューティングすら「後編に続く」になっているのには苦笑してしまいますがw



●アニメについて
 アニメDVDの方は、ゲームと設定は同じながら別のエピソードが描かれている、25分ほどの作品になってます。
これも、いいところで「後編に続く」になって終わりますが…
アニメで描かれている分、アクションシーンはゲームの方よりまだ見応えはあります。
ゲームと混ぜればよかったんじゃね? という気分になるけど、でもそれやると絵に違和感が出てしまうか…
ともあれ作画もそんなに悪くないと思いますし、話も無難にまとまっていて、
普通に萌えアクションアニメとして楽しめました。
無難な分、強く印象に残る部分もありませんが、少なくともゲームの方よりはクオリティはいいと思います。



●まとめ
 なんだかんだでさくらには萌えたので、それなりに楽しむことはできましたが、
ゲームの方はもうちょっと質もボリュームも頑張って欲しかった。
ゲーム単体なら2000円ぐらいの価値ですかね。
アニメが付いてるからゲームは短くてもいいだろうとでも言いたいのかなあ、と邪推してしまう。
ていうか、この薄い内容ならわざわざ前後編に分ける必要を感じない。前後編一緒で5000円ぐらいが妥当では?
でも水着回があったことは評価しますけど! 小学生キャラの水着というのはなかなか良いw

 しかし全年齢になると声優が変わるのは仕方ないのかもしれませんが、やっぱ声優は北都南が良かったなあ。
三森すずこボイスも可愛くていいんですけど、さくらというキャラには個人的にD.C.本編での思い入れが
強いので、元のままの声で楽しみたかったというのが本音。
それと全年齢作品ではありますが、パンチラの一つくらいはサービスしてくれても良かったんじゃないかなー

 ともあれ、内容は平凡かつ薄く、これじゃあ過去の似たスピンオフ作品のようなヒットは到底無理だろうし、
あまりオススメも出来ない作品でした。
今ならすごく安くなっているので、絵買いなら損はしないかとは思いますが。
個人的なことですが、この作品は紙風船で新品が480円で売っていて、
この値段ならまあ絵も可愛いし、多少内容が微妙でも損はしないだろうと思って買ったんですが、
実際、思ったよりは楽しめました。
だから点数はそれなりですが、定価の7140円で買ったとしたら怒りを覚えただろうな、と思います。