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houtengagekiさんのけい☆てんの長文感想

ユーザー
houtengageki
ゲーム
けい☆てん
ブランド
k-ten
得点
74
参照数
1199

一言コメント

麻雀初心者向けに作られた入門ゲームみたいな感じ。初歩の初歩から丁寧に分かりやすく教えてくれるので、これから麻雀を覚えたい人に最適だと思います。可愛らしいヒロインたちのやりとりを通じてルールを解説してくれるので、普通にルールブックを読むよりも楽しく学んでいけると思いますし、なかなか良いソフトですね。加えてストーリーの方も、日常系萌えアニメなどのまったり感が好きなら、心地良く楽しめると思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 ゲームモードは麻雀講座(初心者向け)、ストーリーモード、フリー対戦、
麻雀クイズ、プラグインとなっており、このうち麻雀講座とストーリーモードがゲームのメインになってます。

 ハトでもわかる激萌え麻雀とキャッチコピーが打たれているこの作品、
内容もこのコピーそのまんまです。
メインキャラ4人のうち3人が初心者なのですが(熟練者であるもう一人のヒロインは解説役)、
この3人が麻雀を覚え、楽しみながら強くなっていく過程を通して
プレイヤーも麻雀を覚えていくことができるという感じの作品。
そんなわけで、麻雀講座モード自体がストーリーの一部のようなものになっているためか、
麻雀講座を先に進めることで、ストーリーモードのシナリオが少しずつオープンしていく構成になってます。
そういうつくりのため、プレイヤーが麻雀熟練者だろうと何だろうと、
初心者向け麻雀講座を見ないとゲームが先に進まないため、まどろっこしさを覚えてしまうかもしれませんね。

 でも、この麻雀講座の出来がかなり良く、本当に楽しく麻雀を覚えられるような内容に仕上がっててナイスです。
自分は麻雀はルールを覚えて打ち始めてから15年以上経っているので、
今さら初心者向け講座なんて…と思っていたのですが、いざ改めて初歩の初歩から解説されてみると、
基本を再確認することができて結構ためになりました。
忘れていたルールなどが結構あったのに気付かされまして、かなり勉強になりましたし。
キャラ同士がやりとりしながらの解説なので、普通のルールブック読んだりするよりもやってて楽しいし
構成もよく、段階的に分かりやすくルールを教えていってくれるので、プレイヤーが初心者なら入門に最適でしょう。
 それに、河(捨て牌)から読み取れる情報から相手の手を推測するコツなど、実践的なレクチャーも入っていて
初心者だけでなく中級者でもプレイする価値のある内容になっていると思います。

 特に、リアルで麻雀を打つためのルールがしっかりと解説されていたのには感心しました。
コンピューターゲームで麻雀を打つだけなら、とりあえず基本ルールと役を覚えておけば
それでいいわけですが、この作品では席決め、配牌の仕方、牌の捨て方のマナー、
そして誰もが覚えるのに苦労する点数計算のやり方まで、しっかりと解説してくれるので、
リアルの雀卓で打つための知識をちゃんと身につけることができます。
麻雀のルールの中でも点数計算はまどろっこしくて、ここで麻雀に挫折する人は非常に多いと思うのですが、
このゲームではヒロインたちがやりとりしながら、分かりやすく解説してくれるので覚えやすいです。

 目次みたいになっている項目を選んで進めていくシステムも良いと思います。
このおかげで、後から何かを確認したくなったとき、例えば点棒の支払いってどうやるんだっけ
と思ったら目次から「点棒の支払いについて」のシーンをまた見ればいいわけですし、かなり便利。

 難点を挙げるとすれば、麻雀の役について、しっかりした解説が無いこと。
まあ役牌、リーチ、面前ツモ、ピンフなどの基本の役の解説はありますし、
三色同順、一気通貫、染め手などを、ルール解説の合間に紹介してくれたりはしますが、
限定的なものでしたし。
代表的な役をひととおり、上がるための条件等を含めて紹介するようなシーンは欲しかったですね。
 あと、一通りルールを覚えたところで、では実際に打ってみようみたいな感じで対局があるんですが
いきなりクリア条件が「トップを取る」というのは少々厳しいと思います、しかもCPUはそれなりの手応えはあるし。
プレイヤーがルール覚えたばかりの初心者だったら少々キツいのでは。せめてそこは3位以上でクリアでいいと思う。
 あとは欲を言えばミニゲーム的な物をもう少し入れて欲しかったと思う。
途中、雀頭と面子を一つずつ組み立てるミニゲームがありますが、ああいうのが他にも欲しかった。
例えば、例題を出して点数計算を自力でやらせるだとか、手なりで役を作らせるとか。
ただ解説されるよりも、そういう風にした方が解説された内容が頭に入りやすくなると思いますし、
段階ごとにテスト的なミニゲームはあって欲しかったですね。

 そんなわけで、まあ多少欠点はありますが、入門用ゲームとしては結構優れていたと思います。
正直、このゲームにはそういう方向性ではあまり期待していなかったので、かなり感心しました。


 そんな麻雀講座を進めることでオープンしていくストーリーモードの方については、
ちょっと人を選びそうな出来ですね。
基本的に軽音部員のヒロイン4人(+たまに先生)が部室で麻雀しつつ、お茶したりぐだぐだと喋ってたり
そんな日常描写が延々続くだけなので、刺激を求めている方には全く不向きですねw
まあ、そういう学園日常系が好きなら、まったりとした気分で楽しめる感じではあります。
一応、軽音部の過去エピソードとか、キャラクターのちょっとした掘り下げなどもありますし
自分は全部終わる頃にはキャラクターへの思い入れがかなり強くなってて、
終わるのがちょっと寂しいな、と思えるくらいに気に入ることができてました。
キャラ萌えゲーとしては、まあそこまで悪くない出来ではないでしょうか。
刺激を求める方には不向きだとは書きましたが、生徒会長との勝負はかなり気分が燃える
シチュエーションではありましたし、ちょっとした盛り上がりもありました。
おかげで、まとまりは良かったと思います。

 ただ、その勝負についてちょっと残念に思う点がありました。
作中、麻雀勝負は何度かありますが、勝ったらすぐ後日に描写が飛んでしまうのが不満。
勝った直後の、キャラが喜んでいるなどの描写が無いから充実感が足りません。
まがりなりにも勝負・競技を題材にしているのだから、勝ったことの喜びはしっかり描写してくれないと。
キャラが強くなっていく過程は結構良い感じに描写できていたので、尚更もったいない。
努力が結実したシーンを省いてしまっているのですから。
そういうわけでカタルシスが不足気味なのが、このストーリーモードの最大の欠点です。
ツメが甘い、っていう感じですね。

 構成としては、5~10分ほどで終わる感じの、日常を描いたショートストーリーが40本ほど詰め込まれている感じで、
麻雀講座を一定の段階まで進めると、それに対応した分だけ新しいストーリーが読めるようになるわけです。
ボリューム的にはミドルプライスとしてギリギリ及第点ってところでしょうかね。

 
 絵については、さすがサーカス関連のブランドというべきか、原画といい塗りといい
萌えゲーとして教科書的なクオリティといいますか…実に可愛く仕上がっていますね。
この可愛いキャラたちのやりとりによる解説だから、麻雀講座も苦にならないどころか、楽しく聞けるw
立ち絵の出来もいいので日常会話からして見栄えがすごくいいですし、萌えますねー
 ただCGの枚数が30枚もなかったのはちょっと残念かな。
ミドルプライスなのだから、せめて40枚程度は欲しいです。
ちなみにエロス方面のサービスショットとかは、ほぼ無いに等しいので、それも多少残念w
絵が非常に可愛いだけに全年齢作品なのがやっぱり惜しいなあ、
最下位の子は脱衣だとか、そういう要素を少しでもいいから入れてくれたらすごく評価したんだけど。

 麻雀パートの出来については、及第点というところでしょうか。
テンポはそこそこ良いし、キャラが上がったときには可愛いカットインが入るなどの萌え麻雀の基本は押さえてる。
難度は初心者向けということで、やや易しめになっています。
イベント対局で負けたとしても、何度かコンティニューすれば突破できるぐらいのバランスには
抑えてありますから、詰まることはあまりないでしょう。
でもCPUのテンパイが結構速いので、わりと不覚を取りやすく、油断ならないと思えるぐらいの難度はありますが。
流れみたいなものが設定されているのか、たまに特定の対戦相手が
連続で上がりまくったりすることがあったので、そういう時はかなり厄介ですw


 最後に、有料のプラグインについて。
プラグインというのは、この『けい☆てん』に追加プログラムとして組み込むことで、
他作品のキャラが登場するショートストーリーが遊べるというものですが…
初回版に付いていたのは『D.C.Ⅱ』の音姫が登場する物ということで、
内容は『D.C.Ⅱ』の世界に『けい☆てん』のキャラたちが迷い込む話になってます。

 これが付属することでミドルプライスからフルプライスになっていることを考えると、
3000円分ほどの遊びごたえが、このプラグインには望まれると思うのですが、
結論から言うと、正直言ってそこまでの価値は感じませんでした。
ヒロインが音姫一人で、CGが3枚だけしかなく、ストーリーも短く、
対局回数を多くして尺を稼いでいるような状態ですので、不足感を覚えてしまいます。
しかもCGは音姫単独の絵だけで、『けい☆てん』のキャラと一緒に描かれているCGは無い。
それじゃ意味ねーだろw

 『けい☆てん』のキャラと音姫のかけあいは、それなりに楽しくはあるので、
本編をクリアして『けい☆てん』のキャラに思い入れを持ったあとなら楽しめはするんですが
もう少し内容を充実させて欲しかったというのが本音ですね。
今回のだと、1000円ぐらいなら納得できたかなーって程度ですから。

 プラグインは、すでに第二弾として『真・恋姫無双』のキャラの参戦が決まっているようですが
それも今回と同様のレベルの内容ならファンは満足しないと思う。
これ自体は面白い試みではあると思うので、あとは値段分の価値のある内容にして欲しいところですね。