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houtengagekiさんのぜったい遵守☆強制子作り許可証!!の長文感想

ユーザー
houtengageki
ゲーム
ぜったい遵守☆強制子作り許可証!!
ブランド
softhouse-seal GRANDEE
得点
84
参照数
4695

一言コメント

いつものシール作品を単純にボリュームアップしたような作品ではなく、クオリティ自体が高くなっていたので感心しました。このメーカーは、いつも面白い設定で目を引いてくれるものの、中身のクオリティが低価格帯のレベルに落ち着いてしまっていたため、一発ネタのエロゲにしかなっていないのが惜しい、と常々思っていたのですが、こうしてフルプライスでじっくり作りこんでくれたことで、ようやく内容が一発ネタの範疇を超え、良質の近未来エロゲへと昇華させることができており、フルプライスで作ることの意義を感じられる作品に仕上がっていました。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 エロゲとしてよくできている。
エロに軸足が置かれている物語であり、実用性の高さを持ち合わせながら
近未来物としても恋愛物語としても面白く読んでいける、クオリティの高い作品です。

 基本的には抜きゲー。
9人いるヒロインに、普通のセックスから始まってフェラやパイズリ、足コキなどのオーラルセックス
さらにローターやバイブを使ったプレイ、アナルセックスとプレイ内容は多彩。
孕ませ物でもあるため、当然のようにボテ腹Hも充実しています。
公式サイトを見ると中出し以外は法律違反と書いてあるので、普通のセックス以外無いのか?
と身構えてしまいますが、ゲームを始めてわりとすぐオーラルセックスの許可証をくれるので安心ですw

 許可証を提示したら基本的にその場でセックスということになっているため、
クラスメイトがいる教室や電車内、公園、遊園地など衆人環視の中でのセックスが多くなっていたり
シチュエーションの幅広さのおかげで飽きない部分があり、この辺は設定勝ちな感があってナイス。
数多くのHシーンは、ヒロインの個性を生かし、できるだけイメージが被らないように作られていて常に新鮮です。
シーン数にして実に60以上と、抜きゲーとして充実の内容。
 グラフィックの方もクオリティは高く、三人いる原画さんは、それぞれの持ち味を生かして
可愛いキャラデザインをしてくれています。
特に2-Gさんがメインで、ヒロイン9人中5人をデザインしていますので、この人のキャラデザが好きなら
間違いなく満足できるでしょう。塗りの出来もいいですし。

 タイトルにもなっている強制子作り許可証は、女性に提示するだけでHができるという設定ですが、
嫌がる女性に見境なく提示して無理矢理セックスとかいう展開ははっきり言って無いので、
陵辱とかそういう方面を期待しない方がいいです。
だいたい同意の上だし、女性側も男性とセックスすることに興味津々なのでノリノリな感じ。


 こういうエロまみれな作品でありながら、なおかつ前述した通り物語として面白い。
何故面白いと思えるか、感情移入しやすいのかというと、
男児の出生率が低下しすぎて男性の数が極端に少なくなった社会、
という世界観と、そんな社会においての恋愛というものを
真面目に描こうという気概がシナリオから感じられるからだと思います。

 実際、エロ以外の日常描写などの出来もいい。
学園どころか町内に男が主人公ひとりしかいない、という環境がどういうものか、
日常生活からちゃんと描写されてるから興味深いです。
出版される漫画や映画が女性向けのものしかないとかね。
他にも体育の時間にクラスメイトと混じって活動できないとか、
そもそも街を歩いても目立ってしまって大変だということなど、さまざまな描写があり
近未来ものとして成立しているから、新鮮な読感があります。
正直言ってこのゲームの主人公はあまりうらやましくないw

 エロのために作られた、馬鹿設定と言ってもいい世界観ですが、
ここまでしっかりと描写してくれると、エロまみれの展開も自然に感じられて
受け入れやすくなりますし、とてもいいことです。


 ヒロインとの、エロを通じて描かれていくストーリーの方も実に面白い。
ヒロインはみんなエロいし、それぞれ個性的で可愛いですし…
各ルートとも、最終的に結ばれる際の展開がしっかり恋愛してて、スッキリまとまってる。
ラストに幸せいっぱいのCGを表示してくれる演出も、ベタですが非常に後味が良くてナイスです。
個人的にはこの演出だけで+4点って感じw そのくらい良かった。

 前作である『嗚呼、素晴らしき孕ま世界』の主人公は、
綺麗な女性と知り合ったら片っ端から許可証を提示してたような感じでしたが、
今回の主人公はそういうことに抵抗感を持っていて、馬鹿なんだけどわりと紳士的。
 どちらかというと、幼なじみや妹、クラスメイト等、普通に仲の良い女性たちとの
こういう特殊な世界観下における恋愛の形を描いた作品になっているように思う。
許可証を使ってのエロを通じて、しっかりと心を通わせて行く過程が描かれていて、
凛のルートなどは、許可証でのHが葛藤の元になっており、
最終的に幼なじみ物の恋愛物語として感動できる内容に仕上がっていました。

 ところで、これらに比べると異質なルートがひとつだけありまして、
紗雪と静凪のレズカップルを攻略するルート。これは一味違った面白さがあった。
女性社会ならではの人間関係というものが突っ込んで描かれているというか、
世界観に踏み込んだ内容になっていて興味深かったです。
一夫多妻という関係はいかにして成立するか、というテーマが内包されていて印象深いストーリーになっている。
終盤、一夫多妻の夫婦として信頼しあっている三人の関係性は、この世界観だからこそ見られる物でしょうし、新鮮でした。
単純に物語としても面白かったのもいい。最初は主人公とレズカップルとはギブアンドテイクだけの関係だったのが、
主人公が男らしさを見せることで二人に惚れさせる展開なので、気持ちいい充実感のあるシナリオでした。
他のルート同様に出来がいい。

 そんな感じで、設定、日常、エロ、ストーリーがそれぞれ相互に引き立て合っていまして、
とても良い作品に仕上がっているな、と感じた次第です。
エロのための面白さがあり、エロいからこそ物語としても面白くなっている、そんな作品。
買う前は、単純に抜ければそれでいいやと思っていたので、いい意味で予想を裏切られたのが嬉しい。

 主人公の性格が違うだけで、まったく別の印象が味わえそうな世界観だと思うので、
また主人公を変えてもう一作ぐらい楽しんでみたいなと思いました。


 最後に、遊んでいて気になった点も挙げてみます。
まず、キャラシンボルを選択して進めていく構成上、進め方によっては前に見たシーンと
整合性が取れなくなる展開になることがある、ということが欠点と言えるかもしれません。
ただでさえブツ切り感を覚えやすいシステムですし。
とはいえ、キャラが多いこともあり、こういうシステムにしないとテキスト量が多くなりすぎるでしょうし
プレイする側としてもやりやすいのは事実ですし、ある程度割り切って遊ぶのがいいでしょう。

 あとはやはり惜しいのは、エンディングの無い女性キャラがいることですかね。
サブヒロイン4人のうち、静凪を除く3人にはエンディングが無い。
孕ま世界の時は、行きずりのHだけの関係で終わるヒロインが多かったから納得できましたが、
今回はエンディングの無い役所のお姉さんや巫女さんとも、しっかり心を通わせていたと思うので
結ばれる結末も欲しかった、と感じてしまいます。
ふたりとも可愛い女性でしたから尚更。