ErogameScape -エロゲー批評空間-

houtengagekiさんのRain memory -あまやどり-の長文感想

ユーザー
houtengageki
ゲーム
Rain memory -あまやどり-
ブランド
flap
得点
73
参照数
2500

一言コメント

暗く寂しげな雨の一日を何度も繰り返しながら、謎めいたヒロインとの記憶に迫っていく、ダウナーかつ不思議な雰囲気を持った短編作品。考察の余地も残しながら、いい意味でコンパクトにまとまっているループゲーです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 同じ雨の日を何度も繰り返しながら、記憶のピースを集めていくことで
真実に近づいていく、というコンセプトが気になったのと、
ヒロインが好みだったのもあって、
ブランドの過去作とかライターの評判とか何も調べずに購入してみましたが、
なかなかの拾い物でした。

 ゲームの流れは、主人公の真が車で大学へと向かう途中、
雨やどりをしているヒロイン「玲音」に声を掛けて、
車に乗せてやるところから話が始まり、
その後の車内での会話の流れによって、玲音の言葉に導かれるようにして
妄想のようなエロシーンが始まるのですが…
このエロシーンが、時系列や人間関係などの整合性がなく、
真と玲音の関係性がガラリと変化していて、不思議な内容になっています。
 会話の選択肢によって主に学園と病院の二種類のシチュエーションに別れたHシーン。
果たしてこれはただの妄想なのか、主人公が忘れている過去の記憶なのか、それとも可能性世界の出来事なのか…
などと、いろいろ考えさせられることになり、俄然真相が気になってくるというものです。

 玲音に導かれるようにして様々なHを体験していく過程は謎めいていて、
最後にどんな結末が待っているのか楽しみにしながら読んでいくことができるし、
同じ一日を繰り返すうち、だんだんと主人公が自分の意識の異常さに気づいていく様子は、
玲音の底知れない雰囲気との相乗効果もあって、背筋にゾクリとくるものがある。


 一回のプレイは非常に短いので、ループを重ねるといっても3時間もあれば結末に至ることになります。
その短い中で表現されているのは、ほんのり切ない余韻を残す、すれ違いの物語。
ループの裏に隠された真相については、やってる途中でなんとなく想像がつくんですが、
終着点の週で語られる二人の心理描写がしっかりしているので、切ない気分にさせてくれます。
 エロにどういう意味があったのか分かったときにはわりと感動しちゃったし…
ヒロインがどういう気持ちで主人公を導いたのか、クリアしてから考えると胸に来るものがある。

結末を迎えても、あからさまに考察の余地も残っていたりして、エンディング後を想像したりするのも楽しかったり…
そんなループ物ならではの楽しみも提供してくれていますし、短いながらもシナリオはしっかりしています。


 エロに関しては、ヒロインは高度な誘い受けなので、そういうのが好きなら実用的かな。
病院シチュではお医者さんプレイ、学園シチュではチアや競泳水着といったコスで
楽しませてくれます。
 ただ、エロシーンも含めて全体的に雰囲気が陰鬱なので、エロで盛り上がるといった感じでは
ないのと、いまいち絵的に色気が足りないのが難かな。
 とはいえ、エロシーンはストーリー上でも重要な意味を果たしており、
その上でそれなりの実用性も備えているというのは、かなり上手いつくりだと思います。
おかげで短編エロゲとして、いい意味で小さくまとまっていて、エロもストーリーもしっかり楽しめる。


 難点を挙げると、少しテキストに癖があって微妙に読みづらいのと、
そもそも読んでて楽しい話ではない、っていうところかな。
とりとめのない世間話と、それに挟まれるようにして妄想的なHシーンがあるっていう流れですから
特に序盤に関しては、素直に引き込まれるようなエンターテイメント性は無いと思うので、そこが苦しい。
 でも、ループゲーが好きで、ダウナーな雰囲気やヒロインが気になったなら
ループを重ねる内にどんどん楽しくなっていくと思うので、
乗り越えてプレイするだけの価値は充分にあると思うんですけどね。
まあ、低価格作品にしては珍しく体験版もあることですし、題材が気になったなら
まずそれを試してみる価値はあるんじゃないかと思います。


 題材、設定ともに斬新なものではないとは思いますが、寂寥感のある余韻が味わえますし、
なにより、こんな風にシナリオを追求しつつ、しっかりとまとまった短編エロゲというのは珍しい。
個人的にループゲーが好物であったため気に入ったというのもありますが、
それを差し引いてもなかなかの佳作ではないかと思います。