アサプロの新境地とも言える作品 ただのチャレンジで終わらず高いクオリティーでまとめあげた傑作
アサプロの作品はいままでプレイしたものがどれも面白く、予約が開始されたらすぐに予約をして非常に楽しみにしていた。蓋を開けてみたらいままでのシナリオと180度違う内容で非常に驚いたが、それでも非常に心揺さぶられる作品だった。以下共通ルートからクリアした順に個別ルートの感想、サブキャラルートに一言触れ、最後に総評を。
共通ルート 92点
体験版をプレイしていなかったので正直ここまで攻めた内容にするとは思っておらず非常に驚いた。オープニングは見ていたのでシリアスをやるのは分かっていたが、前作の恋愛×ロワイアルを多少シリアスにした程度を想像していたので、ここまで何もかも変えてくるとは思わなかった。終始重い雰囲気で進んでいくのだが、醸し出される物悲しさが非常に私の好みだった。面倒くさい女ムーブをとりながら寂しくて帰らないでほしいと引く止める結愛が愛おしいし、周りとお友達になろうと頑張る煌がかわいらしいし、なんだかんだ文句を言いながらフタマタに協力する瑠衣が微笑ましく、凪青との衝撃の過去が明らかになった宮子も痛々しくも儚かった。いままでのアサプロと180度違っていたが、非常に満足できる共通ルートだった。
結愛攻略編
学祭のシーンに集約される流れだったと思う。ちょっと、いやかなり強引さがあったが結愛にはこのくらいの方が良いのだろうとも思えた。主観的な意見だが、おそらくこの時点で結愛は口で言うほど強固に愛というものを拒絶しているわけでも両親と真愛のことを受け入れられていないわけでもなく、引っ込みがつかなくなっているというところもあったのだと思う。なのでちょっと引いてみれば痛いような演出だったのが逆に良いと個人的には思えた。ただこの学祭のシーンは物語の盛り上がりに比してBGMがチープだったのでそこは個別に用意してほしかった。この結愛攻略編でも煌は不憫で健気でいじらしかったので◯。
結愛ルート 88点
結愛攻略編からのルート。このルートはもう文化祭で問題を解決してしまっているので特に波風立つことなく、終始いちゃついているというルートだった。凪青と結愛の独特なからみは見ていて非常に面白かった。海でのプロポーズのやり直しも非常に印象に残った。もう1つ良かったところとしてはあれだけ愛というものに拘ったのにエピローグのシーンであっさり「愛してる」と凪青に結愛が言ったところである。ある種手の届かないものみたいに重い捉え方をしていた結愛にとっての愛が凪青と一緒にいるうちに身近に感じられるものになったというところが感慨深かった。これが結婚式のエピローグでも「お前未だに俺に愛してるって言わねえじゃねえか」「きちんと幸せにしてくれたらいってあげる」とかいうくだりがあった上で次のCG【老衰して死にかけてるベッドの上の結愛の手を凪青がとっている】になって今際の際に「そうだいい忘れてた。愛してるわ」って言うようなのでも私の好みではあるのだけれども。共通ルートの鬱屈した展開から一転して明るい展開になって面白いルートだった。
瑠衣ルート 88点
瑠衣は他のヒロインと比べて個別ルートにはいる物語上の必然性が薄く、若干入り方は強引になってしまったのは否めない。とはいえ物語上瑠衣のポジションのキャラクターは必須の構成なので、メタ的に商業エロゲとしてメインヒロインにおいたヒロインはルートを作らなくてはならない制約があると考えるとその辺は仕方ないと割り切れた。導入はさておき、ルートではクズ野郎とダメ男製造女のコンビの会話が面白く、非常に楽しめた。このルートで特筆すべきはエッチシーンのシチュエーションだろう。特に首絞めシチュはなかなかエロゲではお目にかかれないのでアサプロの攻めの姿勢に驚愕した。エッチシーンを除けばこのルートはいつものアサプロ感が強くて楽しみやすいルートだったと言える。
煌奮闘編
この分岐の仕方には驚かされた。「宮子ルートに入る分岐がないな」と思っていたが、特定ヒロインとセックスをしたあとにルート分岐があるとは思わなかった。奮闘編における煌はいじらしく非常に胸をうった。結愛ルートで「なぜ結愛が凪青と付き合ったのか?」がそこまで明確に描写されていなかったが、このルートで明かされたのはよかった。というか結愛編よりこっちのほうが明らかに結愛がラスボスをしていた。
煌ルート 90点
あまりにも重い選択肢からの分岐。煌はここまでのどのルートでも不憫で報われて欲しいと思っていたので、このルートは非常に満足できた。その分宮子の心情も胸を打つものだったが。ただほわほわしていたかわいい煌が他のヒロインや凪青の影響を受けて成長した姿が描かれているのもよかった。他のルートでずっと不憫だった煌がこのルートでしっかりと幸せをつかめたことが感慨深かった。
宮子ルート 95点
このルートは個人的にフタマタ恋愛で最もクオリティーの高いルートであったと思う。選択肢直後の煌が見てられないほど不憫で「煌ルートを最後にすればよかった……」と思ったのは思ったが。ラストの実家に帰るくだりまでを前半として述べる。前半で特によかったのは二人の関係が付き合う前とそこまで変わらない距離でイチャイチャしていたのがよかった。それが以前付き合っていた(?)時期の関係性やその後の大学での関係をも肯定しているように感じられた。他のヒロインの介入も他のルートに比べて多かったのでにぎやかで楽しかった。特にアダルトショップのくだりはギャグとして面白かった。そして締めとなる実家向かって宮子の部屋での制服エッチ、そこからの花火シーンは至高のものだった。初体験のつらい過去を幸せな制服エッチをいまの幸せな自分たちで上書きしようとしたこと。そして凪青が「いまの宮子が好きなんだ」と言って制服を全て脱がしてエッチしたこと。もはやエロシーンではなくエモシーンだろというレベルのいいシーンだった。あまりうまくはないな。そこから花火シーンでの「このままがいい」と宮子が叫んで終わる。この二人の関係性を踏まえてルートを締めるのにこれ以上は考えられないという演出だった。文句なしの傑作ルート。
サブキャラ
サブキャラも全体的にキャラデザのクオリティーが高く、エッチシーンはいい感じにかわいかったのでよかった。シナリオ的にとってつけたような感じになってしまうのはこのゲームのシナリオの構成上仕方ないところだろう。なごみルートをきちんと夢オチにしたところに「ガンガン攻めるシナリオを書いたがここは超えてはいけない一線」というのをきちんと理解していると感じた。さすが老舗ブランドといったところだ。
その他
チャプターごとに再生できる機能、ボイスお気に入り登録などUI面でもきちんとしている。欲を言えばバックログから直接ボイスお気に入り登録ができると個人的には嬉しい。
総評
生放送でコンセプトを聴いた時からかなり期待していたが、その期待を大幅に上回る出来の作品だった。まず作品の出来以前にギャグキャラゲーで高い評価を得ていたブランドがこの方針の作品を出せたことに敬意を評したい。加えて作品のクオリティーもそれらを差し引いてもとても高いものだった。おそらく従来のアサプロのファンの中ではこの作品は賛否があるだろうしその気持ちは大変よく理解できる。それでも私はこの作品にいちアサプロファンとして”絶賛”を贈りたい。HOOKSOFT系列、Asa Projectの新境地と言える名作だろう。