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hoshimiさんのグリザイアの果実 -LE FRUIT DE LA GRISAIA-の長文感想

ユーザー
hoshimi
ゲーム
グリザイアの果実 -LE FRUIT DE LA GRISAIA-
ブランド
FrontWing
得点
100
参照数
5060

一言コメント

非常に良かったと思います。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

◆ 全体

『世界に刃向かう、6つの果実』をキャッチコピーに
主人公及びヒロイン5人の一時の安息の日々と、
それを終えた後に『とびきり訳あり』な問題に立ち向かっていくビジュアルノベル。

『世界』の概念は各ヒロイン毎に意味合いが異なり、
本当に世界規模の敵勢力が発生するルート(蒔菜・由美子)、
世界とはヒロインの内面という意味合いが強いルート(天音・幸・みちる)に大別出来る。

しかしいずれも「私は産まれて来るべきであったのか?」という問いに
手段や詳細は違えど必ず帰結するため、ルート毎に大きなテイストの差異はなく、
解決するために主人公が問題に対峙するのは同じである。

本作の特徴として、個別ルートに入る前に
6人しか居ない学園で長いと評判であるコメディ調の共通パートが挟まれる。
事実その量は各ヒロイン個別ルートの2.5倍ほどはあり、
ほぼこのゲーム全体量の半分を共通ルートが締めているが、
これはヒロイン毎に存在する過酷な現実と対比して
学園をそれこそ林檎の実る「楽園」と描くために必要な長さであったと思われる。

余談ながら自分はかなりの「ひめしょ!」好きであったため
共通ルートより藤崎分をたくさん供給出来て股座が湿る思いです。

それでその後、それぞれの個別ヒロインルートが全てヒロインについての問題が
一定の解決を見た時点で終了する。
したがって真相についてダイレクトに語るルートは存在せず
賛否両論を産む要因となっている。



◆ 結末に関すること

……つまりは個々のルートで真実(というより過去)が
部分的に明かされていくのみとなるのだが
この過去の明かし方が「逆に新しいのよさ」と逆に感心してしまった。

物語の核心を突く過去編だが、
ヒロイン毎にその過去を明かす部分、言うなればスポットライトの当て方がとても上手く、
全てのルートを見ることにより「過去何があったか」を明確にイメージすることが出来る。

いわゆる『説明過多』な濃い味付けのゲームが多い中、
トゥルーを用意せずとも物語全容が『5つの物語をもって綺麗に完結する』とは
まさしく京料理の如し丁寧な味付けではなかろうか。
個人としてはグリザイアがこれをもって完結としても何も破綻はなく満足している。

────いや、まあ分かるよ!
そこじゃないよな!そこで賛否両論が巻き起こっているんじゃあねえよな!!



◆ 風見 一姫

今作品においては作中でも問題児、作外でも問題児的なキャラクターが存在する。
グリザイアの果実の話題性を上げたエピソードで、
過去編エピソード『エンジェリック・ハウル』にて登場する、
「風見一姫(CV:青山ゆかり)」というキャラクターである。

このキャラクターが魅力的であるがゆえに、
物語の辻褄というよりもプレイヤーの心情的にビッグウェーブを巻き起こす。

このキャラクターが担う役割は、実のところヒロイン以上には大きくない。
一部キャラクターの過去に大きく関わってくるのみであり、
関わった後に『どうなったか?』をあまり語られない。
というより真相が二者択一のまま残される。

勿論このキャラがどうなろうが物語の主軸は
「学園という生活において、主人公が護るべきものを見つけられるかどうか」、
という所に帰結するので一姫がヒロインになってしまっては
逆にシナリオの構築上で違和感が発生してしまう。

しかし一姫を愛するプレイヤーは次々と発狂し
脳は腐食し蛆が湧きまくった挙句その蛆を掴んでは食い
「これを食うことによって一姫ちゃん分を補給しているんだよ?」と言わんばかりの
重病危篤患者を数多く生み出した罪深きキャラクターである。

物語の構築を重視するか、そこはキャラを重視して欲しかったかというのは
いかにも会社と労働組合の関係のようであるが、
プレイヤーの面々からすれば、
グリザイアの果実の完成度に嘆息を漏らしながらも
『金なら払うから一刻も早く一姫ちゃんFDを!!』とユーザーハガキに荒い筆調で書きなぐり
メーカー側に自身の豚っぷりを遺憾なく見せ付けたい。
お供してくれる勇者諸兄をお待ちしております。


……という感じで全体的な感想を終わり。
個別ルートの感想は時間があるときに書き足すかも