兄妹だけのせかい
兄妹という関係性は、それだけで一つのせかい。
自分自身、妹と年が離れており学校も別で共通の友人がおらず家庭内の問題もあり二人だけの時間が長かったため、その認識が強い。
本作の鈴シナリオは、兄妹ふたりだけの世界が描かれており、心に響いた。
鈴シナリオは100点でもいい位だが、
シナリオ中にメーカー過去作絡みと思われるエピソードがあり、未プレイで興味の無い立場からは浮いた印象しかなく、
最大の魅力のふたりだけの世界の閉鎖感が損なわれた為、大きな減点。
その一点以外は、『兄妹で恋をすること』を丁寧に描いており、文句のつけようも無い。
本編と違い、嘉人の気持ちが全て鈴に向いてるのもいい。個別アフターシナリオの大きなメリット。
電脳空間の設定が本編以上に活きており、
現実で普通の兄妹として振舞う反動を、電脳空間で秘密の恋人として爆発させる。
電脳空間のプライベートモード、正真正銘ふたりだけの世界の中で、
「リンはぁぁぁっ、お兄ちゃんがっ、大好きぃ~~~~っ!!」
「俺もぉっ、リンのことがっ、大好きだぁぁぁぁぁぁっ!!!」
普段は押さえつけ隠している気持ちを叫ぶ、臣苗兄妹。
けれど電脳空間で解放的になった分、現実で兄妹で愛し合う困難さを意識させられる。
兄妹の絆は絶対だけれど、世間の常識の前では脆く、この対比が秀逸。
恋人として振舞えないもどかしさ。兄妹としての関係も大切にしたい想い。
兄妹の範疇での甘えも、恋愛感情起因なのか悩んだり。
そんな葛藤も全て『兄妹で恋をすること』。
秘密の恋、楽園、未来への不安、小さな逃避行、
シーンの一つ一つが次に繋がる意味ある内容で、それらが収束するエピローグには息を呑んだ。
本編で鈴の過去の想いを視た嘉人が、
本当の意味で鈴が抱いていた不安を理解して、
本当の意味でふたりの心が重なる瞬間。
実際にプレイして欲しいので詳細は省くが、ラストから2枚目のCGの差分。
小さな差分だけれど、過去に鈴がどれだけ救われていたのかを思い知り、涙が溢れた。
兄妹から恋人になりたいといった安直な内容ではなく、兄妹だからこその恋愛を、
ふたりだけのせかいで、同時に脆くもあるせかいで、
愛し合う兄妹がどう生きていくのか描かれた、素晴らしい作品でした。
余談。
鈴テーマBGMのSecretPurelyBELLのボーカルverがサントラに収録されており、これを聴いてからプレイすると、
本編でBGMが流れたとき、何気ない日常の中での鈴の秘めた想いを意識させられ、より作品に入り込めます。
ジャケットの久遠と鈴も可愛く、タペストリーセットの購入がオススメです(メーカーの回し者感)
───甘えたいの 甘えさせて 私に触れて
切なくなる ホントの気持ちは 我慢してる だけどギリギリ
甘えさせて 抱きしめて欲しい