“お兄ちゃんシリーズ”は妹ゲーである以前に、お兄ちゃんがお兄ちゃんだからこそのお兄ちゃんシリーズだったのだけれど。
今作の最大の敗因は製作陣がシリーズのウリを理解していないことだろう。
妹が妹であればそれだけで可愛いのは自明であり、完成された妹の魅力を100%以上に引き出すのは主人公であるお兄ちゃんの仕事。
前々作、おにシェアの一樹君は偽妹と実妹を同列に扱う畜生ではあるものの妹ジャンキーではあるし、
前作、おに禁の裕人君に到っては妹のことしか考えていない理想の主人公で、
これまでの主人公(特におに禁)はその類まれなるシスコン戦闘力でもって、妹を可愛がり可愛がって可愛がることより妹の可愛さをインフレスパイラルさせていた。
しかし今作の主人公修悟君は、なんというか常識の範囲内のシスコン(そのくせ、サックリHはする。)
妹たちと年が離れており、社会人のせいか余所余所しさもあり、兄妹というより親しい親戚の子供と接するような距離感にも見える。
『昼は先生、夜は妹達のお兄ちゃん』の設定もギャップから兄妹の関係を強調するような展開を期待していたが、
元々弱い兄妹の空気を更に薄めるだけの、残念な結果になっている。
お兄ちゃんの妹に対する姿勢に関連して、何よりも致命的なのが、今作の世界観では恋人が兄妹の上位関係のように描かれているところ。
前作までは妹とどの様な関係になろうと“兄妹”としての関係に強い拘りがあり、だからこそ妹ゲーとして突出していた。
シリーズの名を冠する以上こういった特色を押さえるのは基本中の基本なのだが、現製作陣は全く拘りがないようで残念でならない。
おに禁のつぐみルートをプレイして出直して欲しい。
またおに禁では姉妹同士が互いに影響を与えているのが随所に感じられ、それが血縁の繋がりを意識させていたのだが、
今作では長女次女と三女四女が仲が良いとされているもののそれによって姉妹間の人格形成に影響を与えた形跡が見えず、ただの仲が良い“設定”で終わっている。
その他の不満点として、
・ルートによる設定の齟齬(つぼみの料理の腕/妹を性的な目で見るのを避けていたはずの修悟君がハーレムルートでは妹でオナニーをしていた、等)
・システムの退化(中出し外出し選択不可/セーブコメントの編集不可)
・声優さんが声のイメージと合っていない(特にかなえ)
・原画家ひさまくまこさんの姉妹ブランドへの移動(Pikazoさんが悪いという訳ではないが、イメージが違う)
・シナリオの尺不足。Hシーン回想も水増し登録されているが、実質妹一人あたり5-6回(おに禁は7回)
節々から開発費をケチったであろう形跡が伺える。
尺不足の部分が顕著で前半のダイジェストのような展開で兄妹の関係性の描写が薄くなり、兄妹の説得力に欠ける要因の一つにもなっている。
とは言え不満点の大半は前作と比べた期待値から来るものであり、妹たちは皆可愛く特徴的で、Hシーンも実用性は高い。4コマ漫画感覚で気軽につまむ分には良いだろう。
かなえルートに関しては「長女として皆のお姉ちゃんとしての自分」と「本当はお兄ちゃんに甘えたい妹としての自分」の間で葛藤するかなえの姿から“妹”を強く感じられ、
声優さんが合わないのとシナリオの描写不足さえ目を瞑れば結構なお気に入り。
結論。
前作と比べなければそこまで悪い作品ではないので、周りの低評価に流されず気になるならプレイしてみましょう。
それで気に入らなければ、おに禁を購入して口直しすればいいと思います。
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