つまり、妹には勝てないのだ。
2次元のみならずリアルでもシスコンであることを自覚している人間だけれど、
『妹のことをどう思っているか』と問われれば、
「ムカつく」と、真っ先に思い浮かぶ。
この「ムカつく」が非常に厄介な感情で、
根底にある兄妹愛と、
日常の摩擦で生まれる不満と、
不満を抱きつつ妹が好きな自分への呆れと、
照れや常識もあり愛情から目を逸らす無意識と、
それらがグチャグチャに混ざりあった感情として、「ムカつく」が浮かぶ。
見も蓋もなく纏めると「今さら素直に認めるのは悔しいけど好き」というだけの話であり、
本作の妹、巴ルートでは、この""どうしようもなさ""が上手く描写されており、兄妹らしさが強く感じられた。
そこはエロゲ、ルートに入ってしまえばすぐに素直にはなってしまう訳だが、
しかしながら長年取り続けたツンな態度がそう簡単に消えるハズもなく、ふとした瞬間に素直になれない部分も顔を出す。
そんな変わる部分と変わらない部分が兄妹の歴史を感じさせ、予定調和の如き兄妹いちゃラブを見せつけてくれる。
そもそも、素直になれない態度を取ることが出来るのは、
血縁という消えない関係性と、互いが互いを愛しているという無意識での確信と甘えがあるからであり、
『言ってもいいのよ?俺の妹はかわいいって』等、
気持ちが通じて以降は、兄は妹を可愛いと思っている前提の態度も見せてくれ、そこからも兄妹の絆を感じさせる。
兄の咲臣君も、どれだけ憎まれ口を叩かれようと、
妹を誰より大切に想い、妹が幸せになれる可能性を最後まで諦めないのが好印象で、
妹が好きだと自覚してからは、隠せているつもりでダダ漏れの、ポンコツシスコンぶりも発揮してくれる。
またこの兄妹、思考展開が似通っていたり、実は似たもの同士な描写が各所にあるのもポイントが高い。
何より本作の一番の魅力は、妹に手玉に取られる、振り回される感覚を味わえるところと思っている。
甘やかすよう巧みに誘導されたり、妹にオナニー事情を自白させられたり、
メンドクサさと小悪魔さ、しょうがないなあと思いつつ、放っておけない妹らしい可愛さに翻弄される感覚が味わえる。
『これからもときどき喧嘩して、それからえっちしようねお兄ちゃん』
世界一可愛い妹からの、そんなどうしようもないお誘いに、乗せられざるを得ないのだ。