ワガママ、我がまま、私のまま。
購入を見送っていた本作ですが、妹ルートを評価する声があり気になっていたところ、
ツ●ッターで、とある主人公の台詞の画面キャプチャを目に。
「妹はな?妹であるというだけで無条件に可愛いんだ」
即、ポチりました。
常々言っているのですが、妹は妹というだけで可愛さはカウンターストップしており、
更なる魅力を引き出すのは、主人公たるお兄ちゃんにかかっている。
妹を妹として妹のまま愛する、そんな主人公なら、間違いなく素晴らしい作品になる。
結論から言うと、期待を大きく上回る兄妹作品。作中の兄妹観が素晴らしい。
憎まれ口を叩くことがあっても、そっけない態度を取っても、お互いがお互いのことを大切にしている。
作品によっては他ヒロインのルートで「彼女だから妹より大切」などと抜かす畜生にも劣る主人公もいるが、
本作の主人公幸樹君は、ルート外でも妹を家族として大切にし周囲からシスコン認定され、
妹の兎亜も、お兄ちゃんが辛いときは愚痴りつつも支えてくれる。
単純な記号としての好きでは無く、家族としての確かな情が、鳴海兄妹からは見え隠れしている。
本編たる兎亜ルートでも、それは変わらない。
恋人関係になる前から、膝枕や膝の上に座って一緒にゲームや、おんぶにお姫様抱っこを、当然のようにしている2人だけれど、
恋人関係になった後に、同様の行為をしても、必要以上の甘さは生まれない。
Hをしても、すぐにいつも通りの軽口を叩きあい、変わらない兄妹の姿。
兄妹を好きなるって多分そういうことで、新しい特別な何かが欲しいわけじゃなく、
当然のようにそこあったものの価値に気付いて、それを他の誰にも渡したくないから、兄妹で恋人という、その先の未来に繋がる関係を求める。
兄妹の距離感の描き方が、全編通して非常に心地よいのが本作の大きな魅力だけれど、
特に印象的な兎亜のモノローグがある。
「俺はお前のお兄ちゃんなんだから」あの言葉だけはきっと、
わたしがわたしである限り、死ぬまでこの胸から消えないだろう。悔しいけど無敵の絆。
この「悔しいけど」の部分、手放しではない感情のあり方が、本作の絶妙な兄妹観を支えている。
また冒頭でも触れたが、主人公の幸樹君が非常に良いお兄ちゃんであることも大きい。
繰り返しになるが、妹のことを家族として兄として大切にしており、世話を焼きつつも無意識では妹に強く依存している。
告白は自分からするところも好印象で、兎亜への告白シーンは最も好きな告白シーンの一つに。
「今までも、これからもずっと一緒の兄妹で──」
「好きっていうのは妹への想いもちゃんと入ってる」
どんな兄妹でも、大なり小なり、恋人になる可能性を持っていると思う。
けれど気持ちを自覚しても、世間の常識なんかに呑まれて実を結ぶことなく消えていく。
それらと鳴海兄妹の違いって、ほんの少し素直になれたかどうかではないかと考える。
憎まれ口を叩きそっけない態度を取っているつもりでも、距離が近すぎて慣れすぎて、無意識に最後の一歩は越えないようにしている。
その一歩を、迷惑をかけてでも、共に過ごした大好きな兄妹を手放したくないワガママな気持ちで踏み越えたのが、鳴海兄妹。
まあ長々と書き連ねましたが、あれです。
鳴海兄妹マジ天使