ErogameScape -エロゲー批評空間-

hoshikenさんの花咲ワークスプリング!の長文感想

ユーザー
hoshiken
ゲーム
花咲ワークスプリング!
ブランド
SAGA PLANETS
得点
50
参照数
9878

一言コメント

産地偽装は許されない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

義妹なら義妹と公式サイトで明記すべきだろう。 
ののかの紹介では妹としか書かれていないが、ソフ倫改定前の2004年以前ならともかく現在は妹とだけ書けば、実妹と思うユーザーの方が多いはず。
これは明確な産地偽装。

先に言っておくが、義妹を否定する訳では無い。2005年に発売した秋色恋華に登場する義妹の葵は、未だに3本の指に入る程愛してる。(古い作品だけど妹好きは是非プレイして欲しい)
今作でのエロゲメーカーとしての妹に対する姿勢が気に入らないのだ。妹を愛するユーザーへの宣戦布告である。
以下、俺の心が砕けるまでの流れを記してみる。


・ののかが公式サイトで発表される。妹で、しかもCVがアグミオン。高まる期待。しかしサブヒロイン、深まる絶望。
・ののかにも√がある事が告知される。暗闇に射す一筋の希望。 
・とはいえサブヒロイン扱いなので不安は拭えない。この時俺がTwitterで呟いたのが「Hシーンは無くてもいいから、妹と結婚したい」である。これが伏線になるとは、その時の俺には知る由も無い。
・体験版配布。義妹である事が判明。ここまで実妹と思い込んでいたのでショックを受ける。CVアグミオンの実妹への期待が大きすぎた。
・製品版発売。ののか√突入。兄妹として過ごした時間が10年と名言される。ののかの日記を交え、過去と現在の確かな兄妹の絆が描かれる。兄妹の絆が大好きな俺は、特に意味も無くモニターの前で泣いていた。至福の時間。
・ここから先は記憶が大分曖昧なのだけど、ののかから告白される。それに対する遊真の返答が「兄をやめて一人の男としてののかと結婚する」
・ののかも遊真を「お兄ちゃん」ではなく「遊真さん」と名前で呼び始める。
・そこから後は2回程Hしてスタッフロールが流れたりしてたけど、本気で覚えていない。

問:義理の兄妹-兄妹は?
答:他人

これが実妹なら、名前呼びも一人の男として~もよかった。血縁という絶対の事実は揺らぐ事は無い。
けれど義妹でこれをやると、もう終わり。妹と結婚したいとは願っていたけど、他人とのソレを望んではいなかった。
この系統のシナリオを書くライターには人の心が無いのだろうか。兄妹しての絆を否定するのは何故。家族としてすごした10年の時間の重みはそんなに軽かったのか。今までの時間を否定せず、兄妹で、恋人で、夫婦。それでいいだろ。

ここまでの俺の怒りが理解出来ない人には例えば、
「目当てで購入したヒロインが事前情報無しで実は男の娘で最終的にただの男になってBLエンドだった」とでも言えば分かって貰えるだろうか。

ののかが嫌いという訳では決してないので誤解しないで欲しい。嫌いなのはライターだかディレクターだか、このストーリーを考えた悪魔だ。


ののか√には欠片の救いも無かったけど、今作で一つだけお気に入りの√がある。
メインヒロインである不知火 祈ちゃんである。

彼女は“実妹”である。
主人公の妹では無く、本作のキーパーソン不知火 飛鳥の妹であるが。

妹なら何でもいいと言ってる訳では無い。変化球ではあるけど、兄妹の話として面白かった。

厳格な家庭に生まれるが、要領良く好きに生きる社交性の高い兄と、兄のしわ寄せで親の教育を一身に受ける真面目な妹。
それでも他に頼る相手が居ない幼い妹は兄の事が大好きだった。
しかし成長するにつれ自分勝手に生きる兄に嫉妬を覚え、両親の海外転勤の際に自分を置いて一人だけ日本に残る兄に「お兄ちゃんもいらない」と告げ、離れ、日本に残った兄は不慮の事故で亡くなり、それが兄妹の最後の時間となる。
そして数年後、帰国した彼女は、亡き兄の友人であり、兄と似た空気を持つ花咲 遊真と出会う。

この流れだけで、ご飯3杯余裕です。
飛鳥の祈への想いの描写があればもっと評価したのだけど、trueで補完すると思いきや全く無かったので拍子抜け。そもそもtrueの存在意義が怪しい。祈√に組み込めば十分な内容。


本当は20点にしようと思ったのだけど、祈√に免じて50点。この分だと、サガプラの次回作は買わないかもしれないなぁ。