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hoshikenさんの星ノ音サンクチュアリの長文感想

ユーザー
hoshiken
ゲーム
星ノ音サンクチュアリ
ブランド
ま~まれぇど
得点
80
参照数
3111

一言コメント

星ノ音サンクチュ璃杏

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

璃杏の璃杏による璃杏のための作品。つまり、妹ゲー。妹とエロス以外は褒めるところが無い。


プレイ前は星に関するお話と思いきや、蓋を開ければ能力バトル物。しかし、恐ろしいほどに盛り上がらない。バトル要素の必要性が疑問。
個別√はHシーンの比重が高いのは良いのだけど、日常描写が少なくヒロインの魅力が半減。
例えば夜美。コミュ障ボッチで毒舌ロリ後輩と美味しい設定なのに、個別ではただの可愛いロリ後輩。共通ではCV上原あおいさんの振り幅ある演技が良い味出してたのに。勿体無い。
シナリオを盛り上げるための伏線も薄く、年表でも読んでいる感覚。プレイ前にネタバレを食らったとして、本編が設定を箇条書きに並べてるだけの展開なのでさしてダメージも無いはず。
能力設定をHシーンに活かさなかったのも不満。透明になる能力があるのに痴漢プレイの一つも無いとはこれいかに。


ここまで不満点ばかりたけど、それらを補って余りある美点がある。冒頭にも述べた通り、妹。璃杏の存在。
CV車の人の超ブラコン妹。この時点で9割方勝利を約束されている。

「妹と添い寝するのは兄としての義務だと思います!」。ラストまでこのテンションで突っ走る、期待以上のブラコン具合。
カップル割引を使うために兄妹で恋人のふりをする場面がある以外は、探りあいの様な駆け引きは少なめ。
「結婚しましょう」「今すぐ抱いて!」「先っちょだけ」等々、ド直球のアプローチの数々。過激な言動の裏に隠されているのは“素直に告白するのは恥ずかしい”という乙女心。ぐう天使である。

妹を描く上で非常に重要になるのは兄なのだけど、主人公の真人も結構なシスコン具合。
璃杏√に入ると受け身に回る場面が多くそこはマイナス点なのだけど、妹が大好きだと公衆の面前で言い放つその姿勢には非常に好感が持てる。
何より幼少時に妹をイジメっ子から守り、事件に遭遇した時には左目を失ってでも妹を守ろうとしたその姿勢。妹を守る兄の姿で今日もご飯がおいしいです。

真人は璃杏の事を、あくまで妹として愛しているのだけど、周囲から見た2人の関係は世間一般のそれを明らかに逸脱している。
そんな兄が、妹の汗で浮き出たスケブラに色気を感じ、不意に遭遇した着替え現場で予想外のしおらしい反応に普段とのギャップでドキドキし、妹を女として見ている事を自覚していく。
そこから先はエロメインで展開していくのが少し残念で、もう少し兄妹から恋人への過程が丁寧ならもっと評価出来ただけに残念。

とはいえ、璃杏の直球ブラコンとエロ展開で、話を不必要に重くせずに最後まで突っ切ったところは○。

兄妹の近親相姦が周囲から祝福されていない点も高評価。エロゲの兄妹物ではその辺を有耶無耶にするか無責任に祝福されるかが大半なのだけど、この作品では軽いノリとは裏腹に周囲の人間に気味悪がられる。
この問題が最後にどうなるかは是非プレイして確かめて欲しいので書かないけれど、兄妹物としてお気に入りのラストの一つ。他のヒロインと違いED後のエピローグが用意されていないのも憎い演出。



「私、今、幸せですよ。わーって大声上げて、駆け回りたくなるほど幸せですよ。この幸せが本物なら、もう絶対に離したりしませんよ」
「俺も同じだよ。好きな子を離したりするもんか」

星空の下、約束を交わした兄妹が、どうか幸せでありますように