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hontoraさんのヒラヒラヒヒルの長文感想

ユーザー
hontora
ゲーム
ヒラヒラヒヒル
ブランド
ANIPLEX.EXE
得点
93
参照数
131

一言コメント

小説を読んだような読後感だった。架空の設定ではあるが、実際現実にも存在するようなお話だった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

文章を読む手が止まらなかった。
本当に面白く、メッセージ性の強い内容だった。
内容は濃いもののボリュームはそんなになかったので、時間がない人にもおすすめしたい。

作品については、
架空の設定ながらも、メタ的には病気とその介護問題への心労を深く描いたような内容だった。
正直、将来的に個人的にも向き合う必要のあるテーマでもあるのかなと感じつつ、
もし今後そうなったとしたら、必ずこの作品のことを思い出すと思う。

肉親である患者がほぼ見殺し状態で管理されていたシーンが衝撃的で、
介護疲れで殺害や心中みたいな話は現実あるけれども、
患者にしても、介護者にしても本当に苦しいものだろうなぁと思う。
そんな中でどう幸せをみつけていくかってところを考えさせてくれるようなお話だった。

とくに、上記のシーンで主人公が看病者に対して放った以下のセリフが印象的。
「愛情は強い力だけど無限じゃない。消耗し続ければ歪んで恐ろしいものになってしまう。」
「風爛症患者の治療において、まず必須なのは適切な医療と労働力だ、愛情はそれらの環境が適切に整備された上で
初めて正常に機能するもんなんだ。愛情は大事なものだけれど、環境が整ってなければ、いとも簡単にくるってしまう。だから狂わないようにするんだ。」

愛情がすべてみたいな作品はよくみてきたけど、確かに介護者や医療従事者の観点としての非常に現実的なメッセージだなと思う。
愛情だけじゃ片づけられないことって現実的にあるだろうし、それが損なわれない工夫が必要なんだなと。
また環境面だけじゃなくて、千種が天間に言ってたような、
病気の症状に関しても、もっと気楽に考えて深刻にならないことが大事なんだなと思った。
なんだか、自分にとって身になるような作品だった。