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hontoraさんのうみねこのなく頃に咲 ~猫箱と夢想の交響曲~の長文感想

ユーザー
hontora
ゲーム
うみねこのなく頃に咲 ~猫箱と夢想の交響曲~
ブランド
エンターグラム
得点
90
参照数
204

一言コメント

物語の構造、メッセージ性がとにかく凄い作品 ただ一つ言わせてくれ、クリアまでが長すぎる。。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

EP1~EP8まで完読し、ようやく終わったかと達成感を感じたのも束の間、怒涛のオマケシナリオ解放の連続で、
「そろそろ終わるよな。。?」って気持ちが何回も生まれては消え、気づいたら丸一日以上経過し、達成したかと感じた高揚感が引き延ばされ続けたため、流石に全部クリアしたときは徒労感と「やっとおわったか」という嫌な解放感が残ってしまった。

愚痴はこのくらいにして作品の評価というと、素晴らしかった。
特にいいなと感じたのがこの作品のメッセージ性で、特に「真実」について考えさせられる内容だった。

「真実はいつもひとつ」とは、お馴染みのアニメ「名探偵コナン」でよく出てくるセリフだが、
この作品では、作中で緑寿が真実について、「真実は人の数だけ存在し、主観によって解釈され、その形は不定形であやふやなもの」と言及している。
箱の中身を観測されなければ、複数の真実が同居することができる。
そこに魔法の存在を信じるものがいれば、魔法が真実として存在することができる。
当作品は、この両方の真実であるファンタジー(幻想)とミステリー(現実)の入り混じった物語である。

見せられているのは魔法でもあるし手品でもある。
色々な解釈としての真実を肯定するようなメッセージ性がこの作品にある。

しかしながら、結局実際の「一なる真実」ってなんなのと気になってしまう。
それが、自分の周りで関係ないことなら別にどうでもいいと割り切れる。
戦人が縁寿の自殺をとめるために、「一なる真実」を見せないように動くのは理解できるが、
たとえそれが残酷であっても、家族全員の生死に関わるような事の真実を知らないままというのは個人的に無理な気がする。

縁寿は結局のところ残酷な「一なる真実」を知ってしまったけど、縁寿の中では家族が生きていると信じるというのは、ただ現実を否定して幻想に縋ったというよりかは、現実の真実と幻想の真実をうまく共存させたように感じた。
「一なる真実」を否定もしないけど、「幻想」も否定しない。
それがエンジェ・ベアトリーチェの境地なのかなあと思った。

ラストの縁寿の福音施設(右代宮家の食堂にそっくりの部屋)に十八を招待する正体するシーンは、戦人が優しい幻想(真実)をみせてくれたことへの感謝の現れだと思うし、そこにあるベアトリーチェの肖像画をみて、戦人が黄金卿でみんなと再会するのは最高のラストだと感じた、

総評
滅茶苦茶長いのでモチベが維持しずらいというのはあった。
だけど面白いし、感動した。

物語の構成への謎が多く、考察サイトに頼ることもあったが、徐々に明かさられるギミックには感心した。
非常に緻密に練られた世界観、ストーリーだった。

また、真実について非常に考えさせられるテーマ・メッセージ性がとてもよかった。
「愛がなければ視えない」はガチだと思う。