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hontoraさんのWHITE ALBUM2 EXTENDED EDITIONの長文感想

ユーザー
hontora
ゲーム
WHITE ALBUM2 EXTENDED EDITION
ブランド
Leaf
得点
94
参照数
296

一言コメント

雪菜という女について考えるゲーム、かずさは陰キャ

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

恋愛における感情のあり方を誇張させたような作品。
だけどそれが嫌にリアルだなと感じた。
物語的にはうまく噛み合っていて、恋愛的にはひどく噛み合わないような、もどかしさのあるシナリオだけど、そこが面白い。

雪菜という女が面白い。
かずさは陰キャ
一番共感できるのはかずさ。

浮気ルート後の感想

どんなに理論武装して、自分に言い聞かせても
結局はその場の感情に流されてしまうことの愚かさみたいな、そういったライターの主張を感じた。
究極的に自分の気持ちしか考えられなくなってしまった男の末路というか、
カズサへの想いをせきとめるのは、自身の罪悪感だけで、雪菜の幸せを微塵も考えられてないところとか。
最終的には、これが春希の幸せのためであると、春希との別れを決断するカズサの行動がそんな春樹との対比になっていて、皮肉っているように思えた。

人の幸せが考えられるかっていう点に関する背景として、
サブテーマでもある親子関係の部分があるのかなと感じる。
春希だけが親から愛されてないというか、向き合えてないと思うから、後続のルートではそういったところも言及されるのかな?

浮気ルートED時、雪菜がCGから消えていたので流石にもう関係も終わりかなと思ってた。
正直春希との関係を続けてたら、雪菜は幸せにならないだろうと考えていたので、別れたほうがよいと思った。

Closing chapterの時に感じたことだけど、あれだけされてまだ春希を好きって思えるって俺だったらありえないと思うし、
まあ、色々と感情揺さぶられまくって好きって気持ちは残るんだろうけどそれを諦める努力というか、好きすぎてそれが出来ないんだとしたら相当弱い女だなと思ってた。

けど本当はそうじゃなくて、雪菜はもともと自分の気持ちは二の次で、相手の気持ちを優先してしまう性格が序盤のころからちゃんと描写されていて、
それが春希が裏切ったことにより、雪菜は自身を変えてしまっていたんだなと。
そもそも好きな人を悪く思うことすら、雪菜にとっては出来ないことなのかなと思った。

Closing chapterの雪菜ルートでは、本来の雪菜を取り戻していった過程がちゃんとあって、
そこから、今回の浮気ルートで、また裏切られて傷ついたのに、歌を嫌いにならず、逃げもしないところが、いままでの嫌われたくない関係を壊したくないだけの雪菜とは対比になっていて、雪菜の成長というか本当に強くなったなと感じた。

でもやっぱ、裏切られてからの自分の気持ちより、春希の幸せを想えるってとんでもない女だなと思う。
俺自身、浮気ルートプレイ中、感情が暴走中の春希だったらこうするだろうなっていうそこそこ最低な選択肢を選びつつも、春希地獄に堕ちろとか、こんなやつは幸せになったらだめとか、バッドエンドにしてくれとか思ってたんだけどね。
雪菜すごすぎ、強すぎ。お前が主人公だ。
もう雪菜が幸せならなんでもいいかな。

雪で覆い隠したはずの汚い感情が、再び露呈してしまったことを描いたルートだった。


雪菜ルート後の感想

浮気ルートで春希の自分のことしか考えられてない考え方とは裏腹に
かずさのために~だとか、みんなが幸せじゃないと私が幸せになれないんだよだとか
そんなことを本気で考えてしまう、雪菜らしい考え方が色濃くでたルートだった。

自身の感情と、他人への愛みたいなのを考えさせられる内容で、そこに雪菜自身物凄い葛藤があって、
春希のことを信じられない状況であっても、かずさについて憎しみがあるはずなのに、かずさのために頑張ろうとするところが衝撃で、雪菜ってすごいなと改めて思えた。

雪菜のおかげでかずさが立ち直った後に、母曜子に感謝を伝えたり、日本でやっていくだとかのシーンは母曜子や、雪菜のことが考えられていてとても感動した。 

個人的に気に入ったシーンは、
春希としては、後ろめたい理由だったにもかかわらず、
雪菜が仕事で大変な時に、春希が大阪まで自分に会いに来てくれてとても嬉しかったといっていたところや、
雪菜の自身の嫉妬の感情とかずさを愛する想いのなかでどっちが本当の気持ちなのかわからなくなってしまったことに対して、雪菜の気持ちはわからないけど、かずさは本当の気持ちわかってると思うよって春希がいうシーン。

かずさルート後の感想

一番良かった。
雪菜ルートよりかは、この作品っぽい真実味のあるルートだったと思う。
作中で表していたけど、まさに悪魔との契約を交わしたかのような展開だった。

雪菜サイドの人間に大きく感情移入していたので、プレイ中は結構辛かった。
普通に春希がやったことは最低だと思うし、愛する人を犠牲にしてまでつかむ幸せってなんだよとは思っていたし、そこに対する春希サイドの苦悩はたっぷり書かれてた。
ただ、一番苦しんでるのは雪菜自身。
だけど、そんな雪菜に春希とかずさは救われたなと思う。

最後の雪菜がギターを弾いて歌うシーン。
過去の歌えなくなった雪菜と対比して、雪菜が雪菜のままで生活できているんだなということがわかる。
多分、雪菜が二人のために歌ったんだろうなと思った。
また春希に裏切られた時は、雪菜特有の弱さみたいなのが出てしまってはいたけど、
やっぱ雪菜の強くて優しいところが一番最後のシーンでみれてよかった。


総評
三角関係がテーマの物語の完成形をみた感じ。
これ超える作品はたぶんないと思う。
ボロボロ泣いた。