ただ羽美ちゃんが幸せそうにしているだけで、泣きたくなるぐらい嬉しい
このゲームの特徴であるラブリースマイル活動は初々しいお題もある一方で「抱擁」とか「踏む」とか「匂いを嗅ぐ」とか、もし善一が超雄主人公だったらそのままエロシーンに突入しそうな感じのイベントが結構あるのだけれど、ではそれ以外ではというと、エロゲのお約束であるラッキースケベ・パンチラ・ポロリみたいなイベントはかなり少ない。制服も夏服なのに体のラインをあまり強調しないデザインだし、主人公もヒロインも付き合い始めるまではほとんどシモいことは口にしない。
もし日常的に女の子の身体を見たり触れたりというイベントが満載だったら、どうしてもラブスマ活動というものの特殊性は半減してしまうし、もし善一がちんこだまんこだみたいなことばかり考えている主人公だったなら、小指を絡めてドキドキするような小さな瞬間もなんだかバカらしく思えてしまうかもしれない。こういう部分を徹底するのがラブスマ活動を引き立たせていると同時に、純愛というものの空気作りにもなっているのだと思う。
今作は「ラブスマ活動の相手」「場所移動」「行動のタイミング選択(時限)」「メールの文章作成」「射精箇所選択」とかあちこちに選択肢が散りばめられているけれど、ゲームの攻略に必要な分岐ではどの選択肢がどのヒロインに対応しているかがはっきりと表示される一方、時限選択肢が出る前には予告があるし、メールなんかは返信内容が変わるだけで大筋には影響しないし、見逃したラブスマ活動や射精差分があってもルートをクリアするとちゃんと回想に登録される。こういう気配りがあるからこそ、時間制限があってもあたふたしないで済むし、ちょっとふざけたメールを送ろうかなという気にもなれるし、差分回収のためという目的でなく、ただやりたいように選択してゲームを終えることができる。
あとラブスマの相手選択で流れるBGM「ラブリースマイル」がお気に入りで、これを聞きながら画面上のSDキャラがにこにこ動いてるのを眺めているだけでもなんだか癒されて良かった。
ゲームの開始時点では、羽美以外のヒロインたちはみんな主人公・善一のことを友達、知り合い、兄妹、そういう風にしか思っていない。そこからラブスマ活動を繰り返す中で少しずつお互いを意識するようになっていく、その過程がしっかり描かれていたのは良かった。そうやって自然に結ばれた二人が(今はまだかりそめではあるけれど)永遠の愛を誓うところまで辿り着く姿は、どのルートをプレイしていてもグッと来るものがあった。
しかし、逆に羽美だけは最初からずっと善一のことを想い続けていて、他のヒロインを選ぶということは、すなわち羽美が恋を諦めなくてはならないということでもある。そんな寂しそうな姿を見せられると、こんな物語なんて無かったらいいのに、他の女の子との可能性なんて生まれないように、みんな友達のまま、兄妹のまま、ただ羽美と結ばれていれば良かったのに……そんなことをふと思ってしまう。
もし未プレイの方がいたら、羽美ルートはぜひ最後にプレイしてほしいと思う。その方が、羽美の恋が報われたときの喜びも強くなると思います。