家族っていいなぁ
まずはシナリオ全体。先日プレイした今作のライターの一人である元長さんの過去作「未来にキスを」はやや地味めな話だったのですが、それと比較すると起こっている問題が目に見える形で現れるぶん分かりやすい盛り上がりがあるのでエンタメとしては良いものになっていると思います。あいかわらず少々難解ではありますが、「よくわかんなかったけど楽しめた」という感想に落ち着く人も多いのではないかと。
次にテーマとなる「家族」について。家族のかたちについて考えるという内容なのですが、その前提となる家族らしい家族というのがよく表現できているなと思いました。個別のキャラが魅力的なのはもちろんですが、みんな揃ったときの、家族という空気感というか、家族らしい日常風景というのがなんだか自然で、居間に全員集ってガヤガヤしている様子をみていると、あー、こんな感じの空間がいつかはあったなぁ……と懐かしい気持ちに。
ついでに、母も姉も妹もエロスシーン付きのヒロインなので言うまでもなく近親相姦の嵐なんですが、それに関して普通のゲームならあって当然なところの葛藤がまったく描かれないんですよね。特に式子ルートでは、式子さんからにじみ出てくるような母性が僕の思い出の中にある母親の笑顔をフラッシュバックさせては、そんな式子とセックスするということに強烈な生理的嫌悪感を抱いたりしながらも、他人事として見るならばそういう気持ち悪さもそれはそれでなかなか美しいかもと思ってしまったり……
あとは「言葉と認識」がテーマの一つになっているだけあって、言葉に非常に気を遣っているゲームだなと。ふと現れる言葉のひとつひとつが強烈なパワーを持っていて、心をもっていかれます。名セリフのバーゲンセールです。
欠点としてあげられるのはやはりボリュームの少なさでしょうか。これ以上この物語に何か付け加えるべきかどうかと言われると難しいですが、楽しい世界だったのでもっと観測していたかったな、というのはあります。