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hinotoriさんのうみねこのなく頃に Episode2 Turn of the golden witchの長文感想

ユーザー
hinotori
ゲーム
うみねこのなく頃に Episode2 Turn of the golden witch
ブランド
07th Expansion
得点
95
参照数
982

一言コメント

前回は王道のミステリーでしたが、今回のは凄すぎます。まさに「まだ誰もやったことのないミステリー」でしょう。ただ、少々やりすぎてしまった感(ラストまでついていくのがやっとでした)はあるので2点だけ減点しましたが、間違いなく傑作です。前人未踏の作品でしょう。※拙いものではありますが、自分の推理も載せてみました。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

物語は、エンターテインメントとして純粋にただ読んで、感じて、それだけで楽しめるものであるべきだとは思います。

しかし、この作品はそれを許しません。

感覚的に作品を楽しもうとしている人たちにとっては、「駄作」であるともいえるでしょう。

特に今回の話は、普通に読むならばもはや完全にファンタジー。
ミステリー作品としての「驚き」や「スリル」とは縁の遠いものになってしまっています。

そう、現実主義の者たちにとって、あまりにもリアリティーに欠くのです。

そういった人たちは間違いなくこの作品に対してアレルギーを起こすでしょうね。
事実、自分も中盤何度か「おいおい、それはさすがに…」と突っ込んでしまいましたし。


しかし、そこで考えることを放棄してもよいのでしょうか?

いや、もちろんいいに決まっています。
最初にも言いましたように、エンターテインメントとは、ただ「感じて」楽しむべきものなのですから。


でも、待ってください。
作者の目的は「読者を魔女に屈服させること」です。
要するにそれは、読者に「推理することを諦めさせる」ことです。

製作日記の中でも言っています。
「99.9%の人が推理を諦めるでしょう。楽しみです」と。


生憎自分は相当な負けず嫌いなものでして。
そんな挑発的な言葉を投げかけられては推理をやめるわけにはいきません。

「所詮は同じ人間の作った物語」。
解けないわけがないのです。
そして、その推理を放棄することは、原作者に「知能的に敗北すること」を意味します。
そんなことは自分のプライドが許しません。


終わった直後は正直放心していたものの、落ち着いて改めて推理してみると、まぁ何と言いますか、あながち「推理は不可能ではない」と思えてくるのです。

現在のところ、そう思える要因をいくつか挙げておきます。
以下、ネタばれです。
自分で推理しようと思っている方は読まないでください。











まず、バトラがまともな状態で魔法の超常現象も、ベアトリーチェもただの一度も目の当たりにしていない点。

超常現象は全てバトラがいない時に起きています。
また、最後にベアトリーチェに面会した時は酩酊状態でもありました。
エピソード1での「酒」の描写は明らかに何か裏がありそうでしたからね。
バトラが飲んでいた酒も、普通の酒とは考え難いです。

唯一何年も島を訪れていないバトラだけが、超常現象から免れていたという事実。
これは絶対に無視できないでしょう。

そして、魔女に屈服しているシーンでは、バトラの立ち絵が使われていません。

これらの事実から浮かび上がり想定できる事実だけでもそれこそ無数にあります。


そして、外界から隔離されているという描写をひどく強調していた点。

これは起こっている出来事が「現実」ではないことを仄めかしているようにも取ることができます。
無論、完全なる非現実とも違うのでしょうが。

夢なのか、幻覚なのか、それとも・・・・・・・
ベアトリーチェに出会った登場人物たちが、肖像画を現実とは異なる絵(出会ったベアトリーチェの服装の物)に見えているのも怪しいですね。

こうやって考えると、彼らが目で見て感じている出来事が、どれだけ信頼できないものであるかが分かります。


そしてマリアが「虐待を受けている」という事実がはっきりした点。

これは恐らく大きいです。
もしかすると、碑文の謎を解く大きなヒントになるかもしれません。


また、最後に18人以外の人物が大量に現れた点。

「ひぐらし」をクリアされている方なら、これが一体どういう意味をなすのか想像することも可能なはずです。
もちろん、単なる幻覚である可能性も否定できませんが・・・・・・

ただ、ひぐらしが最後にあれだけスケールが大きい話になったことを踏まえると、うみねこの推理もそのような可能性を考慮した方がよさそうです。


まぁ、そんな感じで怪しさ満載ですよ。ほんと。

これらの可能性を突き詰めて考えていくことの何と楽しいことか!
こんな道楽、竜騎士さんの作品以外ではありえません!!
自分はドMなので、こういった知的挑戦にはほんと、心が躍ります!!

だって、これだけの謎を残しておいて、少なくともあと1年以上は真相を知ることはできないんですよ!?
まったく、何たる放置プレイ!!


ただし、唯一の難点は、「読者に努力することを強いる」ことですね。
なんせ、難易度が高すぎますから、作者の言う通り大多数の者が推理を諦めてしまうでしょう。

事実、降服宣言している感想も多数あるようですし。


何といっても作家にとって読者は神様なわけですからね。
次回はもう少し難易度を下げて、純粋に感覚的に楽しもうと思っているプレイヤーにも「確実に推理が可能である」ということを見せつける必要がある気もします。

しかしまぁなんにせよ、自分には非常に納得する出来の素晴らしい作品でした!!






追記

短絡的な推理ではありますが、現在のところ自分は

魔女=熊沢

だと思っています。

怪しい理由は
・クマ=ベア
・過去に金蔵の愛人だったとしても年齢的に問題ない。
・フランス語ではエイプリルフールのことを鯖という(これは関係ないか)
・ベアトリーチェと同時に登場する場面もない。
・EP2で深夜0時を迎えた瞬間の演出で、登場人物のほとんどが順番に登場して最後にベアトリーチェの立ち絵が出てきてフェードアウトするが、その中に熊沢はいない!
・聖堂で遺体が発見された後の登場の仕方も怪しすぎる。
・ジェシカに胡散臭い話もしている。六軒島に伝わる魔女に関する胡散臭い噂も、噂好きとされる熊沢が流していたのだとすると他の使用人たちは疑問に思わないはず。
・過去に何度か辞めては復帰している。
・熊沢って本当に歳を取っている?その娘が変装しているのだとしたら?一度使用人を辞めたときに入れ替わった?
バトラ以外の六軒島の住人達には、何らかの方法で幻想を見せることが可能なのだとしたら、特殊メイクか何かで熊沢と思い込ませることも可能なのでは……
唯一幻想を見せられないバトラは6年ぶりの再会なので騙すことも可能でしょう。
・今作でマリアに薔薇園で会ったベアトリーチェはEP1でも同じように会っていた可能性が高い。となると、シャノン、カノンなどEP2でベアトリーチェと同時に登場している人物がそうでない可能性が高まった以上、若い女性を演じられる可能性が一番高い人物は「熊沢」なのでは?
・初めから入れ替わっていると仮定するなら18≦X<19人という式に説明がつく。19人目はいるはずの18人の中の一人を演じているわけですから。まさに1.5人と言えるのでは?
・マスターキーを持っているので、熊沢が犯人ならほとんどの密室トリックが説明可能になる。EP1におけるカノン殺しも説明できる。
・多少行方を晦ましていても、「さぼっている」で片づけられる。
・今回の話から、島内には複数人の部隊(?)が既に存在していたことがわかる。台風が来るより前にそのような者たちを島に匿える立場にいる人間は少ないが、熊沢はそれが可能と思われる。疑われずに行方を晦ませられるから。
・そして、これが一番大きな疑いの要因ですが、熊沢だけが他の登場人物たちに対して「コマの役割」がなさすぎる。存在意義がない。使用人が足りないのなら福音の家から調達すればいいのに、なぜ金蔵はさぼり癖のある老婆を雇う必要があるのか?しかも何度も退職しているのに……?勤続年数が長いベテランだから、という理由では金蔵の性格を考慮すると弱い気がする。少なくとも彼女が存在する相応の理由はあるはずです。

ま、全然ダメな推理でしょうけどね。

ただ、一つ一つの疑いは弱いものの、これだけたくさんの疑いを挙げられる人物は少ないのでは?

まぁ参考までに載せてみました。

二週目やって固めてみます。

次回も大いに期待して、それまで推理を固めるとしましょう。