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hina4160さんの箱庭ロジックの長文感想

ユーザー
hina4160
ゲーム
箱庭ロジック
ブランド
Cabbit
得点
93
参照数
321

一言コメント

同ブランド作品の中では一番面白かった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

Cabbit作品はキミへ贈る、ソラの花以外はミステリー物であるがその中では一番面白かった。翠の海の批評で記載した真相、もしくはそれに準ずる内容が一つの√で概ね分かってしまうということはない。

今作は市で発生している連続行方不明事件の解明を目的として主人公たちが行動するという内容であり、メインヒロインの霧架か瑚子のどちらかをパートナーにして捜査をし、そこからサブヒロインに分岐していくといった流れである。前述の通り同ブランド作品である翠の海では一つの√で真相が概ねわかってしまい、鍵を隠したカゴのトリではメインヒロイン以外の√ではほとんど事件の真相は分からないなどミステリー物としては拍子抜けするような展開であったが、今作では全ての√で段階的に情報開示が行われ、事件の真相や黒幕に関してもゲームの性質上終盤まで判明することはないので全編通して先を気にしながらプレイをすることが出来た。
ゲーム内容としては今作は大きく二つに分けられており前述のパートナー選択で分岐するようになっている。また一つの√を一気に終わらせることが出来ず、要所でキーアイテムを求められ、所持していない場合は箱庭の裏庭というヒントをもとにフローチャートを遡ってもう一方のパートナーの√をプレイする必要が出てくる。このシステムのおかげで終盤まで一気に進めず、サブヒロイン攻略により入手出来るキーアイテムもあるので必然的に全ヒロインを攻略することになり、サブヒロイン攻略と併せて情報開示も行われるので謎が謎を呼ぶような展開にすることが出来ている。(このシステムに起因する問題点もあるのだが・・・後述)

キャラクターに関してはとにもかくにも霧架が最強ヒロインだったということに尽きる。普段はクールなボクっ娘なのだがふとした瞬間に見せるポンコツっぷりテンパリっぷりや主人公に対する一途っぷりが個人的好みに突き刺さった。(立ち絵のドヤ顔は最高だった)
ヒロイン勢は全員わりかしぶっ飛んだ人物ばかりなのだが個人的には全員気に入ることが出来た。(田中・・・もとい神伐怜刺は見せ場もほとんどなかった謎のキャラであったが・・・まぁ男なので)

そして問題点であるが、前述の通り今作はゲーム性質上初見プレイ時は一つの√を一気に終わらせることが出来ないため、複数の√を平行して進めることになる。これは事件の重要な事柄を段階的に開示することにより、プレイヤーの興味を持続させることにも繋がっているのだが、それと同時に頻繁にキーアイテムの有無を問われることになり、物語がブツ切りになってしまうという問題点も孕んでいる。(霧架√をある程度進めるとキーアイテムが必要になり、そのキーアイテムの入手には湖子√をある程度進める必要があり、その後湖子√を進めるにはまた霧架√を進める必要があるなど・・・
実際は、サブヒロインの攻略後に入手出来るキーアイテムもあるので更に平行して進めることになる)
意識して記憶していない限り、霧架√と湖子√の内容がごっちゃになってしまう。

また個人的問題点として湖子√の結末に思う所がある。
詳細な内容は避けるが、ラストまで進めても湖子√での事件解決は出来ず、実質的な種明かしは霧架√のみとなっている点である。確かに黒幕に関しては湖子では接点がないため難しいかもしれないが、湖子の目的であった絵里の行方くらいは判明してもよかったのではないだろうか。メインヒロインの片割れにしては結末があっさりし過ぎていると感じてしまった。

長々と記載してしまったが、総評としては非常に楽しめた作品であった。全編通して楽しめたし前述の問題点はあるものの先の展開を常に気にしながらプレイすることが出来た。またキャラクターの魅力も描写出来ており、特に霧架の可愛さについてはある意味で一番の評価点でもある。未プレイの方には是非とも手に取ってみてもらいたい。