かがリトかわいいですよね。
そんなわけで。自転車創業の「あの、素晴らしい をもう一度/再装版」をクリアした。かがリト*1かわいいですよね。
このゲームから受けた印象をざっと書いていく。未プレイの人は、まず以下のインタビューを読むといいかもしれない。
『あのすば』再装版は「期待しないでください」? 自転車創業にいろいろ聞いた - 電撃オンライン
http://news.dengeki.com/elem/000/000/259/259281/
なんといっても、本作の特徴は「ANOS」、「記憶管理」というゲームシステムだ。僕は初体験だったが、少し触っているうちに順応していった。*2
未体験の人のために説明しておこう。ANOSは「見える分岐」を自由にやり直すことができるシステムだ。記憶管理は「見えない分岐」を生み出す役割があり、感覚としては複雑化したFF2のワードメモリーシステムに近い。この二つのシステムによって、「あのすば」のシナリオは多層的立体的になっている。
上記のインタビューにおいて、かざみみかぜ。さんは「あのすば」を「行間を読むゲーム」だと形容している。確かに、このゲームはプレイヤーが意識的に物語を読解することを要求している。テキストだけではなく、ビジュアルやサウンド面にも読解のヒントがあるため、ANOSだけを補助としていては詰まってしまう。僕も2ヶ所ほど詰まってしまってずいぶんと悩んだけれど、それだけにシナリオを読み解く楽しみを味わうこともできた。新しいシナリオに至る鍵が解錠される時の「カチッ」という効果音が気持ちいい。ちなみに二日かけて9時間ほどでラスト(ゲームが自動終了するところ)まで行けた。テキストエディタでプレイログを付けたのは久しぶりだ。
画面演出も思っていたより遥かに工夫がなされていて、動きがあるため眺めていて飽きなかった。
「あのすば」では、ANOSによってシナリオとゲーム性が融合し、ゲームならではの体験をプレイヤーに提供している。このあたりの話は上記のインタビューに加え、sunagiさん(http://d.hatena.ne.jp/sunagi/20100513/1273780701)によるかざみみかぜ。論「アノス・ワールド・オデュッセイ」*3などで再三強調されているので僕が付け加えることはないように思う。
以下はネタバレありでシナリオの内容に踏み込んだ既述をする。
本作はいわゆるループゲーという要素を持つ。そして多くのループ者がそうであるように、本作の主人公もまたシナリオの終盤においてループからの脱却を志す。
この時間をいつまでも繰り返せたのならば。
心からそう思っていた。
だが人は間違ったらやりなおすべきであって、繰り返すべきではない。
「[…]過去を知らないという事と過去から目をそらすことは別なんだ」
一度失った自身の過去を知ってしまった主人公は、もはやそこから生まれた歪みに目を背けて生きていくことができなかった。
そうして破滅していく主人公に対して、リトが語りかける愛の言葉が切ない。
「あたしは、あなたが好きなの!
世界を救ったから好きなわけじゃない。勇者だから好きな訳でもない。
ライだから好きな訳でさえない。
あたしと旅してくれて、辛い時に支えてくれて、危険な時には助けてくれて、嬉しい時一緒に笑ってくれて、悲しい時に一緒に泣いてくれた、あなたが好きなの!」
短くて長い、なにより痛みを伴う旅だったけれど、そう言ってもらえることで救われたような気がする。プレイしてきてよかった、と思う。リトが最後に見せてくれた笑顔は、プレイヤーたる僕にとってこの上なく貴い。*4
このゲームの空白は笑顔で、笑顔は空白である。いつか、僕が再び本作をプレイすることがあるならば、その時にはきっと望んでいるはずだ。「あの、素晴らしい笑顔をもう一度」、と。
*1:再装版制作にあたって玉岡かがりさんが新たに描いたリト。
*2:製品版でANOSを入手する体験版部分まで進めるのが手間だったので、今にして思えば体験版はいっそやらなくてもよかった。
*3:theoria「恋愛ゲームシナリオライタ論集 30人×30説+」所収
*4:この一つ前の台詞でリトが言う括弧付きの"『あなた』"とはプレイヤーに他ならないだろう。